#41 みなと

今回は2016年4月27日に発売されたスピッツの41stシングル『みなと』を見ていきたいと思います。


この曲でミュージックステーションに出たときに、草野さんが出だしを間違えたのはけっこう有名ですよね。
僕も後になって何かで見たのですが、なんか放送事故感なかったですね。
むしろ微笑ましい感じがしました。笑

また、この曲は東日本大震災とも絡めて考えられている曲としても有名ですので、そういったところも押さえながら見ていきましょう。


スピッツの魅力の1つに「情景描写のうまさ」がある、というのは、もしこれまでの記事をすべて読んでくれている方がいらっしゃれば十分おわかりのことと思います。

この曲も例に漏れず、最初のワンフレーズだけで一気にその世界観へとワープできるのです。

船に乗るわけじゃなく だけど僕は港にいる

…どうでしょうか。
ここですでにみんな同じ風景が頭に浮かんでいることでしょう。


港というのは船の発着のための場所ですから、そこで「船に乗らないのにいる」というのは変ですよね。

というところで、この”僕”が港にいるのは”君”を見送るためなのだということがわかってきます。


2番を見てみると、”僕”はまだ港にいます。

遠くに旅立った君の 証拠も徐々にぼやけ始めて
目を閉じてゼロから百まで やり直す

というフレーズからもわかる通り、待っているのは数日の話じゃなく、もう長いこと待ち続けているということもわかると思います。

黄昏や朝焼けに”君”との思い出を重ねながら、いつまでもいつまでも待ち続ける…



ここまでくるともうなんとなくおわかりかと思いますが、どれだけ待っても”君”は帰ってきません。

それもそのはず、”君”は三途の川へと船を出して渡っていってしまったのですから。

要するに「死別」です。



で、”僕”は見送りに来ているわけですから、もちろん”君”が亡くなってしまったという事実はしっかりと理解しているはずです。

なのに港を離れられない。


その理由として、1つは「”君”のことが忘れられない」、あるいは「”君”のことを忘れたくない」からだと思われます。

いつか帰ってくるんじゃないか…という思いが心のどこかにあって、”君”がいつ帰ってきてもいいように待ち続けている、と。


もう1つ、「なぜか離れられない」というのもあるでしょう。

これは切ないですが、”君”が帰ってこないのはわかっているのに離れられない…という、理屈では説明のつかない気持ちが”僕”の心を支配しているような、そんな感じですかね。


この「なぜか離れられない」という心情に似たものを持っているのが、冒頭でもお話しした通り震災で大切な人を亡くされた方だと思うんですよね。

「戻ってこない」という現実を理解してはいつつも、気がつくとまた思い出の場所に来てしまっている…

そんなつらい思いをされている方を、僕もテレビなどで何度も見たことがあります。


震災によってかなりのショックを受けてしまったマサムネさんだからこそ描ける、「残された側」の気持ちを表現した歌…それがこの曲だと思います。


MVはYouTubeで見れますし、サブスクでも聴けるのでぜひ。


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