#38 さらさら

今回は2013年5月15日に発売されたスピッツの38thシングル『さらさら』を見ていきたいと思います。


やっぱり三輪さんのアルペジオで始まる曲はいいですね。
哀愁があって、一気にその曲の世界観に引き込まれていくような気がします。

ところで前作からかなりの間が空いていますが、これには理由があります。


この間に東日本大震災がありましたね。

これが草野さんにはかなりのショックだったようで、急性ショック障害という病気にまでなってしまいました。
簡単に言うと心の病気ですね。

9.11同時多発テロのときも、ここまではいかないまでも深く落ち込んでしまったのを見ると、物事に対する感受性や他人を想う気持ちが人一倍強いのかもしれないですね。

で、それを克服してリリースしたのが『さらさら』というわけです。



そしてこの曲にも、震災の影響があるのかどうかはわかりませんが、「亡くなった恋人を想う気持ち」が描かれているな、という印象を持ちます。

しかも、なんとか切り替えようとは思いつつも、やはり”君”を失った悲しさや”君”との思い出が頭の中に残っていて苦しい…という、なかなかに切ない曲です。


眠りにつくまで そばにいてほしいだけさ
見てない時は自由でいい

やはりこのサビのフレーズが象徴的ですよね。

自分の意識がある間はそばにいてほしいし、寝ているときはそばにいなくてもいいから”君”のことを夢で見たい…
だから結局、いつも一緒にいたいということなんでしょうね。

想像なら夢も妄想も一緒だろ、と言いたくなるところですが、それはおそらく自分の中で”君”の実像が描けているからなのだと思います。

”僕”の中ではまだ”君”が実体を伴って生きているのでしょう。



あとはCメロの歌詞がものすごく綺麗だと思いませんか?


悲しみに耐えきれなくなった”僕”は、身体を固体から液体へと変えることにした。もちろん想像ですよ。

そうして悲しみと真正面からぶつかるのを回避するだけでなく、魚の”君”と一緒に悲しみから抜け出すことに成功した。


もちろんツッコミどころがないわけではないです。

自分を水に変えるのはともかく、いつ”君”が魚になった?
そしてなぜ魚?


この曲ってなんとなく、”僕”の妄想があたかも当たり前のことのように描かれている気がするんですよね。

ただ、それは”僕”がその世界に入りこんでいるというか、「”君”は死んでしまったけれども想像の中で生きている」じゃなくて「”君”は生きている」と本気で信じているからじゃないかと思うんですよね。

これは傍から見ている方からするとかなり切ないです。



最後にメロディの話をすると、この曲はAメロ、Bメロとサビで盛り上がりが違いますよね。

現実を歌っているAメロ、Bメロでは割と抑え目の演奏+アルペジオ。

対して「”僕”の中だけでの現実」を歌っているサビは比較的賑やかです。

この対比に注目しながら聴いてみるとまた違った感じ方ができるかもしれませんね。


MVはYouTubeで見れますし、サブスクでも聴けるのでぜひ。


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