#43 猫ちぐら

今回は2020年6月26日に発売されたスピッツの43rdシングル『猫ちぐら』を見ていきたいと思います。


特に何の前触れもなく、6月14日放送分のラジオ『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』の中で急に流れた新曲です。
冒頭で毎週1曲その週のテーマに沿ったスピッツの曲が流れるのですが、その日は「1999年のロックで漫遊」ということで『流れ星』あたりかな?と思っていたので、完全に不意を突かれました。

コロナ対策ということですべてのパートをリモートで録音して作ったらしいですが、ボーカルはともかく楽器類はどうやって録ったんですかね?
特にベースはアンプに接続しないとほとんど聴こえないですし…笑


「猫ちぐら」というものに関しては僕は初めて耳にしたのですが、どうやら藁を編み込んで造った猫の家みたいなものらしいですね。
画像検索してみると暖かそうな小屋の中に猫がちょこんと座っている画像が出てきました。



それを頭に入れたうえで歌詞を見てみると、やはり暖かな雰囲気を持った情景が思い浮かぶのではないでしょうか。

最初のところなんか特に「裸の大将」みたいなのほほんとした感じがありますが、後に”描き加える”などというフレーズもあるので、むしろ意識している部分もあるのかな、なんて思ったりします。


しかしそこはスピッツ、100%平和なわけはなく。笑

この明るい雰囲気の背後に”君”との別れが隠れているんですね。

斜め方向の道がまさか
待ち構えていようとは

このフレーズにまさに凝縮されていますが、”猫ちぐら”の中で過ごすようなつつましくも暖かい暮らしを想像していた2人にとって、突然の別れは想定外だったことでしょう。


寝る前にまとめて泣いてる

というフレーズとか、やはり一言でうまく表現してくるなぁと思わされますね。

日の当たるところでは隠している苦しい思いを抑えきれなくなる瞬間があるという彼の複雑な心境がスッと入ってきます。



それでもそういう苦しさを乗り越えて、実現しなかったパラレルワールドを想像しながらなんとか生きていくのだ、という力強さを感じさせてくれる曲になっています。

”描き加える”というフレーズには、変えられない運命に抗うように自分の意志で少しでも彩りを加えてやろう、というせめてもの明るさも含まれているのではないでしょうか。



やはりこういう時期に作られた曲ということもあって、少なからず今を生きる人たちに向けたメッセージ性みたいなものも感じられますね。

別れとまでは言わなくとも、事が思い通りにいかなかったという人はたくさんいるでしょうが、そういった人たちがくじけずに再び前を向いて歩き出すための応援ソングみたいな感じかな、というふうに僕はとらえています。


こちら、サブスクで聴けるのでぜひ。


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