骨折がウケる世界について考える

嘘の世界のお話をします。ここから先、全てフィクションの彫像であるため論文の題材を探している学者等はおかえりください。

「骨折をするとウケる世界」のお話です。

「骨折がウケる」とは一体どういうことか。文字通りの意味である。事故による怪我などで骨を折ってしまった人間を見る、聞く、知るとちょっと面白く感じてしまうのである。「骨折」に関する認識が「ジョーク」「冗談」「洒落」と同じ、そんな社会を想像してみよう。(便宜上、以下それを骨ウケ世界と表現する)

もう少し骨ウケ世界の設定を細かくしていく。第一に、「骨折に関する認識」のみが変化しているのであって、それ以外は我々の住む世界からさほど変わらないとする。「さほど変わらない」というのは、例えば骨ウケ世界ではオモシロ骨折まとめバラエティがテレビで放送されているが、スマートフォンが普及していて車も走っている。骨折の認識改変によってもたらされたシステムや文化、思想が独自に発達しているものの、それ以外はまんま私たちの世界と変わらないのだ。多分TwitterもIKEAも岸田文雄もいる。

次に、たとえ骨折がウケるとはいえ痛みは伴うものとする。基本は我々の住む世界と同じだからだ。加えて骨折のみが面白いのであって、普通に出血や四肢欠損とかは我々とは変わらずグロいものとされる。だから交通事故でぐちゃぐちゃになった死体を見ても普通に気持ち悪いだけである(ただしグロに耐性がある観測者がその死体の骨折を見たらちょっと受けるかもしれない)。


設定は以上。ここからが本題、我々の世界との違いにフィーチャーし骨ウケ世界で一体どんなことが起きるかを予想していく。


・骨折した瞬間、本人は痛みで苦しいが「自分が骨折した」という事実が面白く複雑な気持ちになる
・骨折の手術が済み痛みが引いた後は普通に面白い
・骨折した瞬間を見た他人は、当人を心配しはするものの骨折が面白いので内心では笑っている
・社会人は実際に骨折した人を笑うのは失礼なのでタブーとされる
・骨折した様子が目立たないように黒いギプスが主流になる
・社会人の間では、過去にどんな骨折をしたか、した人がいたかという話で盛り上がる
・若いうちに一度は骨折しとけばよかったなと思うひとがかなりいる
・骨折したが施術を受けなかったため全部の指が歪んでいる面白いおじさんがいる
・骨折した人を街中で見かけると、ちょっと楽しい気分になる
・骨折した状態で街を歩くと視線を集めるので恥ずかしい
・スポーツの試合中に選手が接触で骨折してしまった場合、その選手を不真面目だと白い目で見られることがある
・葬式に骨折した状態で参列するのは不謹慎とされる
・面接や裁判、その他まじめなイベントで骨折状態で参加するのはマナー違反である
・最近はそのような考え方は改めるべきだという風潮がある
・国が不慮の事故で骨折してしまった人に不平等な扱いをしないように要請している
・骨折をタブーとする宗教がある
・骨折神社がある
・学生の間では骨折が恰好の笑いの種である
・学生の間で骨折ごっこが流行り、それを教師陣が禁止する
・「自分はいかにしてこんな面白い骨折をしたか」を誇張して吹聴するやつがいる
・骨折ネタが面白い先生がいる
・わざと骨折する、させることは当然校則で違反とされる
・それでもわざと骨折するお調子者がいる
・まじで不慮の事故で骨折した生徒がいた場合、「英雄」ともてはやす側と受け狙いと決めつけ冷めた目で見る側に分かれる
・中二病患者は骨折を幼稚ととらえ冷笑する
・たいてい骨折した生徒本人は「わざと骨折したわけじゃないのに」と嫌な気持ちになる
・一度骨折すると骨折キャラとしてずっといじられる
・身内を骨折により亡くした生徒がいて気まずくなる瞬間がある
・保健体育で骨に関する授業があり、内容が充実している
・子供の骨折が多いので、小児科における骨折外来が誕生する
・子供がわざと骨折するのを防ぐため、骨折をネタとしたメディアを一切遮断する親がいる
・幼児の骨折防止グッズが一大市場として確立する
・骨折をネタとした骨折芸人が誕生する
・骨折をいかにして魅せるかを追求した芸術家がいる
・骨折の面白さを競う世界レベルの骨折コンテストが開かれている
・全国のオモシロ骨折特集をするバラエティがある
・骨折ジョークグッズがドン・キホーテに売ってる
・子供向けの漫画で骨折が面白おかしく描かれる
・四コマのオチが骨折
・骨折の擬音が多様
・ネットスラングとして「草」と同じように「骨」が使われる
・骨折に関する語彙が増える
・「骨折り損のくたびれ儲け」の意味と由来が変わる
・「骨が折れる」という慣用句の意味と由来が変わる
・「愚の骨頂」の意味と由来が変わる
・医療ドラマにおいて、シリアスな状況を保つために「器用にも骨折だけはしていない重症の急患」がたびたび搬入される
・現実に即した戦闘漫画やアニメが廃れる
・殴殺は骨折させるおそれがあるので、刺殺や銃殺、毒殺がメイン
・殴り合いのけんかが起きづらくなる
・骨を折るいじめが横行し、骨を折られたいじめられっこは「受け狙いのために骨折した」と決めつけられる
・骨折により死亡した親族の葬式は普通に悲しい
・「最期に一本骨を折ってみんなを笑顔にしたい」と言う末期患者がいる
・歴史上「骨折り奴隷」という役職が世界各地で存在していた
・侍は骨を折ることをなによりの恥としていた
・骨折したことにより失脚した政治家がいる


以上。
骨ウケ世界ではこのようなことが起きてるんですね。ためになります。
みなさんは骨を大切にしましょう。


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