東京都DV交付金「ぶどうの木」の不正の兆候を看過する都の事業管理の杜撰さ
2023年11月16日
(2024年3月14日 要約画像追加)
ここ数日、東京都のDV交付金を受領していた「ぶどうの木」という任意団体の話をTL上でちらほらと見るようになったので、何となく見てみたところ、財務書類に不正の兆候にも見える異常がありました。
もちろん何らかの間違いが原因である可能性もありますし、当該団体は解散しているそうですから、私はそれ自体の追及をするつもりはありません。
しかしこの事例は都の事業管理の適正性を疑問視せざるを得ない問題ではあろうと思いますので記録として残しておきます。
要約画像作ったんで置いておきます。
1、当該団体の会計の異常について
当該団体はR2年から3か年連続で東京都のDV交付金を受領していたようです。(リンクはR5年度分)
明らかな数値の異常が見られたのはR2年度分の事業及びその事業年度の決算です。
① DV交付金の所要経費と交付額
当該団体はR2年度事業としてR3年3月末まで事業を行いました。
一部少額の自己資金と6,391千円が事業所要額であったようです。
また、当該事業は領収書等の支払い証憑の提出義務があります。
② 当該年度の決算書類
まず損益計算書(活動計算書)です。当然ながら助成金額6,391千円以上の経費を支払っており、特に問題はありません。
続いて貸借対照表です。こちらはやや疑問です。当該団体の当年度の事業はほぼDV交付金事業一本で、報告書によると事業経費は既に支払済みであり、未払いは残らないはずです。
むしろ先行支払していた資金の交付金追加支給相当額2,491千円が未収金に上がるのが普通だと思うのですが……。
それ以前にそもそも都DV事業以外も含めた全体の支出が8.2百万円しかないのに、その内の3.9百万円が未払いだったら総支払額は4.3百万円にしかなりません。
あなた6.4百万円の支出をしたって言って領収書までそろえて補助金を受領しましたよね?なんか変なことしてませんか?
とはいえ、帳簿上の仕訳だけの問題かもしれませんし、これだけでは判断がつきません。
③ 次年度の決算書類
まず損益計算書(活動計算書)です。
収入が前年よりも増えていますね。後述の通りDV交付金事業からの収入は7,880千円のはずですから、別の助成金も4百万円ほど受領したようです。
本稿とは関係ないですが、助成金収入だけなのにいわゆる一般企業の利益にあたる正味財産増加が発生している理由は少し不思議です。
公的助成ではありえないですが、民間助成には資金使途フリーの寄付のような助成があるんでしょうか?
続いて貸借対照表。前期分と並べて見てみましょう。
明らかに異常があります。本来は一致するはずの、前期から当期に繰り越す「正味財産額」と当期に前期から繰り越した「正味財産額」が3,852千円合いません。
預金額が前期末残高+当期の利益とほぼ相当する金額になっています。未払金を支払っていればそんな金額は残らないはずです。
「未払金」という項目は「経費として計上しているけれどもまだ払っていないお金」を意味します。前期の「未払金」3,898千円は支払われなかったと推定するのが妥当なようです。
④ 不一致の原因と疑われる不正
繰り返しますが「未払金」は「経費として計上しているけれどもまだ払っていないお金」を意味しますから、それが実際に支払われなかったのだとしたら、未払い金相当額の経費自体が存在しなかったと考えるのが一番整合性が高そうです。
その場合は実際の支出経費がDV交付金の交付額を下回りますから、領収書等の提出資料を偽造し、DV交付金を過剰に受領したのではないかとの疑惑すら出てきます。
2、東京都の問題点
① 前提
上記の通り、一致すべき決算数値が一致しておらず、その原因として助成金の詐取が疑われるのは事実ですが、その疑いが事実であるかは分かりません。
現実問題として財務が杜撰な公益事業者は多いですから、何らかの会計上の不備が原因で、助成金の詐取等は存在しないという可能性もあるでしょう。特に当該団体は任意団体ですから、法人格を持った他団体よりもさらに財務が疎漏な可能性はあります。
もちろん任意団体であることは言い訳にならず、助成金を申請する以上は最低限の整合性がある財務書類を提出しないといけないのは当然です。
一方で、東京都の方も整合性を欠いた書類を受け取ったのであれば、事業者にその理由を問い、必要に応じて資料を出し直させる等の対応をすべきなのも当然です。
② 都はどの時点で不正の兆候を認識できたか
私自身、専門家として自治体等の補助金の審査等にも携わる立場ではありますが、完ぺきに資料等を偽装されると、事前に不正を防ぐことは極めて困難です。
(もちろん理論上はあらゆる書類の原本確認や取引立ち会いを行えば可能でしょうが、実務上の対応は限界があります。)よって、当該団体によるR2年度の助成事業の経費支出が結果的に偽りであったとしても、それ自体について東京都に重い過失があるとまでは言えないと思います。
しかし、東京都はR3年6月30日付でR3年度事業分の交付申請書を受領した時点で、R2年度の決算書を認識しています。そこに本来はあるはずのない未払金が存在していることに気づけたはずです。
もしも上記の不正があったのだとしたら、この時点で追求すればR3年度の助成金の支出は止められた可能性があります。
また、R4年4月20日付でR4年度事業の交付申請書を受領した時点でR3年度の決算書を認識しています。
R2年度決算とR3年度決算を比較することで異常は一層明らかになりますから、もしも上記の不正があったのだとしたら、R3年度時点では難しかったにしても、R4年度の助成金の支出は止められたはずです。
もしも上記の不正があったのだとしたら、不正を止められなかったことはとにかくとして、その後も不正を認識できずに不正を行った事業者へ助成をし続けたことの東京都の責任は極めて重いと言えるでしょう。
③ 結論
繰り返しますが当該団体が不正等を行っていたとは限りません。しかし財務書類に不審な点があるのは事実です。
東京都はきちんとその不審点を認識した上で当該団体が助成先として妥当かを見極め、当該団体を落とすか、採択するのであれば最低限の体裁を整えた書類を再提出させるべきでした。
採択した上に「整合性を欠いた、一見すると不正をしたようにも見える」書類を公文書として保存し、閲覧に供することは無用な公益事業不信を産み出すことになりかねません。
昨今の若年被害女性等支援事業への対応もそうですが、東京都の事業管理にはやはり問題がありそうです。
暇空さんと東京都の裁判は現在進行中ですが、こういった杜撰な事業管理の実態というのも、東京都の「財務会計上の行為又は怠る事実」を証明する傍証になり得るかもしれません。
以上
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