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ひらひらと、失っていくもの
映画や小説の中で、新しく記憶していくことができなくなった人が、おびただしい数のメモを残していく描写があったりする。一晩寝たら、もしくは数分後には消えてしまう記憶を、彼らはメモをすることで繋ぎとめようとする。
積み重ねていく記憶で思い出は作られる。記憶のかわりにメモが積み重なり、はかなくも美しいストーリーを演出する。が、忘れっぽい自分(しらんがn)には別世界の出来事だ。メモを取り続けることがもう偉業なのだ。
忘れっぽい人間は「メモを取った」ことすら忘れる。そしていつしか「メモを取る」ことを忘れる。忘れてしまうのだからなにかに書いて残しておく。あたりまえのことを心掛けておく、心掛け続ける、ということができない。
誰かいつか美しくはかないストーリーにして映画化でもしてくれないだろうか。
ある女が折に触れてメモを取っていくが、そのメモが忘れられていく様を。メモはどんどん風化して色あせていく。付箋なら粘着力も薄れて「くっつく」という能力を分かりやすく失っていくのでうってつけだ。パラパラとはがれ落ちていく付箋たち。大事なことを書いたはずなのに風で飛んでいく付箋たち。メモを取る紙を同じものにすることも忘れますから大小さまざま、色とりどりで綺麗ですよ。なんかイケそうな気がしませんか、映画化。
何が言いたいのかというと、ここに書こうと思っていたネタを忘れてしまったのだ。メモを取るということも忘れたので、きれいさっぱり跡形も残っていない。
何かを覚えておく、という能力は欠けているが、それでもなんとなくなんとかする、という能力はある程度は鍛えられるらしい。「なんとかなる」能力ではないから冷や汗や擦り傷やいろいろな弊害の元になるので正直、オススメはしない。
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