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資源循環と経済性の両立:循環型社会・アパレル分野における新しい政策潮流



はじめに

最近、循環型社会や衣服のリユースについて社会的な関心が大変高まっています。また、これまでの総研の記事の通り、欧米ではリコマースという新しい産業も立ち上がってきています。今回は、日本における循環型社会・衣服のリユース等に関する政策的な議論を紹介し、アパレル業界におけるリユース・リコマース関係政策の今後の展望もお示しできればと思います。

最近の循環型社会実現に関する政府の動向

3Rを含む循環型社会の実現に関する政府の全体計画は「循環型社会形成推進基本計画」(循環基本計画)と言い、5年間に渡る政府の施策の方向性を定めています。

2018年に作られた第4次循環基本計画では、ライフサイクル全体での徹底的な資源循環や適正処理の更なる推進と環境再生等がメインのテーマとなっています。

特にファッション分野については、2022年に行われた第4次循環基本計画の見直しで、社会全体でこれまでの「大量発注・大量生産・大量消費・大量廃棄」から脱却し、「適量発注・適量生産・適量購入・循環利用」に転換し、また、リユース・メンテナンス・シェアリング等の循環経済関連の新たなビジネスモデルを推進するとしています。「サステナブルファッション」の実現に向けて、関係省庁が一丸となって取り組むための体制を整備するともしています。

循環基本計画が更新される来年(2024年)は、政府一丸となってこのような新しい循環経済関連の新たなビジネスモデルを一層推進していくことになると思われます。
ちなみに、今年日本で開催されたG7広島サミットにおいても、岸田総理から循環経済・資源効率性に関する取組を強化していきたいという旨の発言があり、またG7各国首脳の間でもそのような取組への促進がへの合意されました。海外から日本への期待値がぐんぐん高まっているのを感じますね!


https://www.g7japan-photo.go.jp/images/62

資源循環と経済性の両立に向けて

上記の循環基本計画やこれまでのリコマース総研の記事でも触れている、環境と経済を両立させるリコマースやサステナブルファッションの議論も国レベルで盛り上がりを見せてきています。

サステナブルファッション推進の議論の盛り上がり

  • サステナブルファッションについては、消費者庁・経済産業省・環境省の間で「サステナブルファッションの推進に向けた関係省庁連携会議」が2021年に組織され、そこでCO2排出量の見える化の検討や生活者が手軽に衣類を出せる回収の仕組みづくり等を含めてこれら3省庁で具体的に取り組んでいくことを決定しています。

  • また、政治・企業分野からの活動・提言も活発になされています。例えば、自由民主党政務調査会消費者問題調査会では2021年7月2022年4月にサステナブルファッションを含めた提言が発出され、古着などの二次流通市場、レンタルサービスなどのシェアリングエコノミー等の新たな市場の創造・拡大への期待も述べられています。

  • また、アパレル関係企業等が参加する民間団体「ジャパンサステナブルファッションアライアンス」も 2021年に設立され、2022年3月には上記関係省庁に対して適切なリユース・リペアへの支援等の政策提言を行っています。

成長志向型の資源自立経済戦略(2023/3/31)

  • この中で、経済産業省においては、循環経済を軸にして、経済成長と持続可能性を両立させるような新しい経済枠組み構築のための議論・検討が行われています。

  • 2020年5月に経済産業省は、日本企業の中長期的な産業競争力強化の観点から循環経済政策の目指すべき基本的な方向性を提示した「循環経済ビジョン2020」を取りまとめました。この中で、循環性の高いビジネスについて、環境活動としての3Rの延長ではなく「環境と成長の好循環」につなげる新たなビジネスチャンスと捉えるべきと指摘して、その方向で日本の産業を発展させていくとしています。

  • 「循環経済ビジョン2020」を踏まえ、2023年3月に経済産業省は、資源循環経済政策の再構築等を通じた国内の資源循環システムの自律化・強靱化等を目的とした「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました。

  • 「成長志向型の資源自立経済戦略」のリコマースの観点からのポイントは以下の通りになります。

    • 政府戦略で初めて「リコマース」(経済産業省の定義では「シェアリング、サブスクリプション、リペア、二次流通仲介等」)が紹介され、今後政府が支援していく産業とも位置付けられたこと。

    • 産学官の連携を促進するために「サーキュラーエコノミーパートナーシップ」の立ち上げていくこと。

  • なお、産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 第2次中間整理(2023/6/27)においても、この「成長志向型の資源自立経済戦略」の取組が今後の日本において重点的に取り組んでいく経済施策の一つと位置付けられました。

おわりに

循環経済やリコマースについて、環境分野のみならず、産業競争力促進の観点でも政府内での重要性が近年は非常に高まっていることがお分かりいただけたかと思います。今後はそういった関心が、産官学連携によって一層前向きかつ具体的な取組に昇華されていくことが強く期待されます。

実際、「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」の初回(2022/10/5)及び最終回の会合(2023/3/27)において、西村経済産業大臣及び十倉経団連会長もご出席され、産官のトップにおける循環型社会実現への意気込みが示されていることも、非常に心強く感じるところです。

リコマース総研は、今後も国内外の動向・政府の議論を引き続きウォッチしていき、日本のリコマース産業発展のために産官学そして一般の皆様に質の高いインプットをしていきたいと思います!

▼研究員

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