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陰湿で孤独で美しい世界


幼少期からクラシックバレエを習っていた。3歳から14年。友達と遊ぶ時間を犠牲にして、ほかに趣味を持つ事もなく、全部バレエに費やしてきた。

もうやる事はないが、バレエを見ることは今でもずっと好きだった。

先日たまたまつけたNHKで、ロシアのワガノワバレエ学校の特集をしていた。

ワガノワはバレリーナの超名門校で、入るのも超難関。
入学できたとしても、生徒の半分は退学になるほど厳しい。
世界中からバレリーナの卵達が集まるのだけど

その中でとある女の子が進級試験に落ちて退学一歩手前になった。

その子の試験に落ちた理由が、「太っているから」という事だったけど、
どう見てもガリガリだったし周りの子と比べても全く太っているようには見えなかった。

その子自身も納得できなかったのか、泣きながら先生に問い詰めると、

「試験官はあなたの太りやすい家系を不安視している」

と答えた。

ロシアの名門バレエ学校では、遺伝を危惧してその本人の祖母の体型まで審査基準に入るのだ。

とにかく痩せろ、1ヶ月後にある再テストまでにもっと痩せろ、じゃないと退学だ、と
手足ガリガリのその子に向かって延々と繰り返していた。

その子は泣きながら聞いていたけど、これもしバレリーナになってもならなくてもその後の人生に影響しそうなほど自己肯定感ズタボロになるなと思った。
結局その子は1ヶ月後、落ちてワガノワを去った。

そもそもロシアではバレリーナは国家公務員。日本とは全然認識が違うので厳しさも桁違いである。

ロシアやフランスではバレエを踊るべき人が踊っているが、日本ではバレエを踊りたい人が踊っている、と皮肉を言われるくらいだ。


今度はまた別の男子生徒。

190cmの身長に長い四肢、美しい顔にブロンドの、Theロシアって感じの17歳青年。

恵まれた見た目でも、情熱ややる気とかそういうものが欠けていて技術も足りず、性格もかなりだらだらした奴だったのだが

ワガノワの校長(厳しい)にその態度を咎められ、
最後の卒業公演という大きな舞台に出させてもらえなかった。
そして「怠け者め」と吐き捨てられていた。

それでかなり不貞腐れてて、バレエはもうどうでもいい、みたいに言ってたけど、
その後超有名なバレエ団に入団できた。
現時点では実力不足だけど、将来性を見込まれたらしい。

イケメンってスゲェな、人生チートだな!って思ってたのだが、

ワガノワの校長は彼について

「彼はバレリーナにはなれない。見た目は恵まれていても、それだけでは絶対バレリーナにはなれない。努力ができない者は圧倒的に向いてない。彼を合格させたバレエ団は遅かれ早かれ彼を見限るでしょう」

って言ってて、

特に響いたのがその校長が彼に言った言葉。

「キミの見た目を褒め称え、おだてる者は全て敵だと思え」

なるほどと思った。校長の愛を感じた。
あと関係ないけど校長すごいオネェっぽかった。

多分彼はバレリーナじゃなくてもモデルとかで生きていける。

結局バレエって見た目がまず先に来る世界なのだ。
体型や背もそうだけど、顔も。

吉田都さんのように日本人体型で特別スタイルが良いわけではなくてもプリマになっている人は、それを遥かに上回る技術、表現力、気品、すべて兼ね備えた本当に特別な、選ばれし者なのだ。

前述の太っていると言われ退学になった彼女も、ガリガリだったけど、顔は他の子達と明らかに違っていた。
どこの生まれかは書いてなかったけど、どちらかというとアジア寄りで、顔も大きく(多分他の子たちが小さすぎる)鼻先が丸く顎が引っ込んでいるので横顔も映えなかった。(多分他の子たちが美しすぎる)

そしてその年の卒業生の中で最も優秀な女生徒と男子生徒が1人ずつ選ばれるのだが、

女生徒はもうオードリーヘップバーンの再来かな?って感じだったし
男子生徒もまるで黒髪のジュードロウだった。

「生まれ持った容姿も才能」

という事をオブラートに包まず、ハッキリ突きつけてくるこのスタイル、当事者だったら耐えられないけど、
見てる分にはプロフェッショナルを感じて嫌いじゃない。

もう美しいのよ。全員が天使なのよ。
ただでさえ美しいロシアの女の子達の中でも、ずば抜けて美しい少女達が集結してて本当にありがとうございます。加工アプリとか知らないだろ。

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この天使たちがドロッドロの主役争いをしてるって考えたらたまらなく興奮するね。

美しくてひたすらストイック。華やかな舞台とは裏腹に日々の練習は地味で孤独。それでいてバレエというのはスポーツの比じゃないくらい、足の引っ張り合いが蔓延してて特権階級意識の強い世界。
バレエのそういう陰湿なところ、どうしようもなく大好き。


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