見出し画像

WEB Re-ClaM 第50回:クラシックミステリ原書刊行状況(2022/8)

記念すべき50回目なのですが、特に締まらない感じで遅刻しました。短編の翻訳でも載せたいかなあと思いつつ……

S. S. Van Dine / The Benson Murder Case (1926, American Mystery Classics)

S・S・ヴァン・ダインの第一作『ベンスン殺人事件』の原書が登場。テキスト自体は簡単に入手できる(全作がまともな出版社の電子書籍で入手可能)のですが、本書は北欧ミステリの新鋭、ラグナル・ヨナソンの序文つきというのがちょっと興味深いところですね。

★Christianna Brand / Death of Jezebel (1948, British Library Crime Classics)

クリスチアナ・ブランドの代表作の一つ『ジェゼベルの死』が復刊されました。Mysterious Pressが出した電子書籍は存在していました(ただし日本からは購入不可で、amazonなどのページでも取り扱い不可となっていた……のですが、『ジェゼベル』を除く(?)作品は最近また取り扱いを始めました)が、やはり紙版での復刊はありがたい。ご存じの通り『ジェゼベル』の原書は非常に高騰しており、ペーパーバックも存在せず、とあんまりな扱いをうけていましたので……
また、本書にはテキスト的な意味でも興味深いところがあります。本書の底本は英ボドリー・ヘッド社刊の初版(1949)ですが、『ジェゼベルの死』の翻訳の底本は米ドッド・ミード社刊(1948)のものです。この時期のブランドはアメリカでの出版の方がイギリスでの出版よりも先行していたんですね。そして、内容にも若干の異同があるとか……「ジェミニー・クリケット事件」のように、内容に大きくかかわる部分に変更があるとは思えませんが、そのうち検証してみたいところです。

また、8月にはマーティン・エドワーズの評論の新刊 The Life of Crime の紙版も刊行されました。こちらの本の内容については、既に何度も書いている通りですが、先日ようやく通読が終了しましたので、そのうちに感想など書いてみようかと思っています。注釈・参考図書紹介、索引合わせて100ページを含む700ページ超えの大著ですが、大変面白い本で日本の読者にも大いにお勧めしたいところです。

それではまた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?