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折々のチェスのレシピ(21)

黒の急戦が完璧に決まってしまいました。

第1図

この後、白は必ず駒損します。白だけを見れば序盤の駒組みとして決して悪くはないように見えます。ではなぜこんなことになってしまったのでしょうか。二つ原因があります。

まず、この局面の直近のミスです。

この段階で白はキャスリングをしていればなんの問題もありませんでした。むしろ黒が攻め急いでおり自ら形勢を損なっています。

もうひとつの白のミスは、もっと序盤の序盤です。

d4の地点のポーン交換を白はクイーンで対応し、黒がナイトをc6とした局面です。当然のことながら、白はクイーンを逃さないといけません。

白がクイーンを逃して、その次の手を黒が指した局面です。ソフトやAIの形勢判断としては互角です。互角で何が悪いのか?と言われそうですが、先手で有利なはずの白はもうこの時点でその有利を吐き出してしまっています。

結局のところ白は、相手の手(黒の駒組みの構想)を見ずに、自分の手だけを作っていることに注目してください。そうなると黒はやり放題になり、第1図のような普通は現れないような局面が出現することになります。

相手の一手一手には(おそらく)意味があります。前回ご紹介したように、相手の意図を通すか通さないか、あるいは、どこまで先回りして自分の手を作っていくか、受けを優先するか攻めを継続するかなど、相手の手によってこちらの手も変化します。予想していない手が飛んでくると一から考えなければなりませんが、それがチェスの面白さでもあり、厄介なところでもあり、避けられないことでもあります。

将棋には「棋は対話なり」と言う言葉がありますが、チェスもまったく同じで、相手の手の意味がわかるようになると、楽しさが倍増します。


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