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折々のチェスのレシピ(17)

まずは下の局面をご覧ください。

駒の損得はなく、ソフトやAIの評価値は完全に互角です。ではこの局面をどう(実際に対局しているとして)評価したらいいでしょうか。もし黒を持っていたらほぼ完全に手詰まり感しかありません。

白は黒の駒の動きの先を押さえてしまっています。次の黒が手を作るとしたら、Qh7などとするぐらいしかありませんが、局面を打開するような手にはなりません。白は今Be1としたところですが、これは必要であればgファイルのポーンの前進を牽制する手なので、黒は白のその受けを崩すことがかなり難しいです。

黒のクイーンは上部に展開する筋がなく、ビショップは初形の位置のままです。後手の黒が終盤まで互角という点を評価することはできます。しかし、この対局を初手から見ていたら、どうも白はメイト勝ちを必ずしも狙ってはいないように感じられました。相手(黒)の指す手を制限しながら、自分はいつでも有利な局面を作れるという自信のようなものが滲み出ています。

実際、鳴りを潜めているかのようなa1のルークは、タイミングを見てa8とすれば黒はさらにやることがなくなってしまいます。白はここから先、手待ちの手を指していれば基本的にはいいわけで、黒はおそらくどこかでミスをするでしょう。なぜならすでに手詰まりなので、これから先にいい手がないからです(白がミスをしない限り)。

この対局の序盤のある局面が以下です。

「チェスのレシピ」以下を読んでくださっている人はこの手が緩手であることはすでにご存知のはずです。ある程度の棋力があるプレイヤー(白)ならここで黒の実力を知ってしまいます。想像するしかありませんが、この対局で白はじっくりと相手を困らせるような指し回しをする方針のようでした。黒は長い考慮時間をしばしば強いられ、最後には時間切れで負けていました。白はまだ半分ほど時間を残していたので、感覚的には200点ほどスコアに差がありそうです。

ということでまたいつもの教訓に戻りますが、序盤の知識は非常に大切です。


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