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折々のチェスのレシピ(18)

初めに今回のテーマを言ってしまうと要らぬ先入観を与えてしまうので、何もない状態で下の局面をご覧ください。

第1図

白、黒、どちらから見てもいいのですが、この後に実際に指された手との関係から白から見る局面にしてあります。次は黒の手番なので、まずは黒の次の手を検討してください。おそらく多くの人が悩むと思います。ほとんど何を指しても黒が少しずつポイントを稼ぐ局面ですが、手が広い局面ほど案外悩むものです。

白はポーンを多く失っていることがかなり痛く、エンドゲームに持ち込まれると勝つ可能性はかなり低くなります。それを意識しているのか、白は黒が次に何を動かしてもいいが、何を動かしても特に目覚ましい進展はないような駒組みにしています。老獪といえば老獪です。

そんな白の術中にはまってしまったようです。

黒は無理に局面を打開しにいきました。しかしこれは敗着級の悪手です。白としては飛んで火に入るなんとかで、クイーンを交換できてしまいます。クイーンを白から交換しに行き、その後駒を捌きあった局面が以下です。

いくらポーンの物量で優っているとはいえ、これで黒が勝つのは至難です。黒は第1図の局面でRd8などとしてd5の地点にプレッシャーを掛けるとか、さまざまな手が考えられます。プレッシャーを与えながら我慢をしていれば必ずいい局面を作れたはずです。

ある程度のスコアのプレイヤーになると、形勢の不利を自覚した時点で負けない指し回しをしてきたりします(今回の白のように)。おそらく黒はそうした指し回しに幻惑されて、形勢不利と見ていたのかもしれません。そうでなければクイーンを当てていくことなどしなかったでしょう。冷静に形勢判断することの大切さを教えてくれています。


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