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折々のチェスのレシピ(30)

この局面で両者は何を考えるべきでしょうか。

第1図

駒の損得はなく、駒組みもまあ似たようなものです。このまま戦いを進めていってもどちらかが相手をメイトできる可能性はかなり低いです。もし勝ちを求めるのであれば、エンドゲームに賭けるしかなさそうです。

ということで、このまま無益に戦いを進めるのではなく、いかにエンドゲームで自分が優位に立てるか、今から準備をしたほうが勝つ可能性が高まります。

黒はエンドゲームに備えて、相手の駒を削りにいきました。これが大局観に基づいた正しい手になります。少々出遅れた白としてはなるべく駒を温存するか相手の駒も同様に取っていきたいところですが、一歩先んじた黒はすでに駒交換を恐れておらず、どんどん捌いてくるでしょう。

しばらく進んだ局面です。やはりエンドゲームに早く備えた黒がリードしています。

本当は第1図よりも早くこうしてエンドゲームに備えるべき対局ですが、わかりやすいように第1図から始めました。序盤又は中盤でナイトやビショップを捌き合う展開のゲームの場合、エンドゲームになる公算が大きくなります。そこでは、いち早くエンドゲームに備える必要があり、無駄に駒を動かしたりせず、相手の戦力を低下させておくことが重要です。もちろん、エンドゲームに適した駒組みも同時に進めていきます。

エンドゲームに適した駒組みとは?という疑問に対してはまたいずれ回を改めて。

ソフトやAIで手筋を研究する人も多いであろう昨今ですが、ソフトやAIはこうした大局観までは教えてくれません。五手指しあった後におおよそどんな局面になっているか、十手指しあった後におおよそどんな局面になっているか、漠然とでもイメージできるようになれば、それをベースにした次の一手は未来を先取りしていることになり、そうでない指し手と比較して強度が高いはずです。


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