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折々のチェスのレシピ(41)

前回、中盤まで拮抗した展開を維持すると書きましたが、それが実はそんなに簡単ではないという例を今回は取り上げます。

第1図

黒は相手がキャスリングをしたのを見て、b6とポーンを上げました。まだお互いに駒組みの段階ですが、この一手によって白が優勢になりました。黒の狙いとしては、次にビショップをb7として相手のキングを狙える位置に設置することでしょう。

しかし、

白は当然の手筋としてeファイルのポーンを上げてきます。

黒は予定どおりフィアンケットを組んだとします。これを見た白は、f3もしくはQd3としてくるはずです。するとせっかく二手かけてb7に設置したビショップですが、かなり先にならないとなんの働きもしないことになってしまいます。黒は手をかけてわざわざ遊び駒を作ったことになります。そんなことならBd7とひとつ上げておくだけでも遥かにビショップの活動領域が広がります。

また、第1図でポーンをb6に上げるマイナス点が他にもあります。

b4にいたビショップの可動域が狭まったことを見て白がa3とポーンを突いてくる可能性もあります。

フィアンケットはうまく使えば強力な武器になりますが、組むまでに二手かかるという弱点があります。その間に相手は二手使えることを常に意識しておく必要があります。

というわけで、序盤の何気ない一手のように見えても、形勢を大きく損ねてしまい、ある程度の棋力を持った相手と対局するようになると、序盤の一手が命取りになることがあります。中盤以降も互角かそれ以上で戦いたいのであれば、(何度も書いていますが)序盤を緻密に組み立てないといけません。


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