折々のチェスのレシピ(182)
黒は駒得しているため、攻めていきたい局面に見えます。本当でしょうか?
結論からいえば、黒のこの手は大がつく悪手です。白のキングを間接的に狙う意図があるのだとは推察されますが、間に駒が3つあり直ちに白に対して脅威を与えるわけでもなく、継続手も不明です。それよりも、
次に白からこうされると黒は受けが難しくなります。キャスリングはできません(してもいいですがさらに不利になるだけです)。では他の受けとして単純に、
g6とポーンを上げてしまうと、
Rad1とされ、黒は間接的にクイーン取りになってしまいます。白のd3のビショップがどこかにどけばd4のナイトはピンされます。ここまで形を作られてしまうと駒損をしている白のほうが優勢になります。
ということで、第1図で黒はBc5ではなく、
後々問題となるナイトを一旦引いて力をためておくべきでした。さらにいえば、黒は駒得の代償として手が遅れています。
ある程度のスコアのプレイヤーになると、今回の白のように、相手の棋力が低いと判断すると、わざと駒損して上で紹介したような手筋をやってくることがあったりします。なぜなら、第1図(の前)でナイトを引くことができるプレイヤーは(おそらく)少ないからです。
今回の黒のように、序盤で無理をして駒得したとしても、それ以降的確に指し回さないと一手で形勢が逆転してしまうことは往々にしてあります。
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