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折々のチェスのレシピ(330)キャスリング考

ここまで「キャスリング考」を読んできた人には、おおよその勘所が体得できたと思うのですが、それはつまり、できるだけキャスリングを遅らせて自分の手を作るという点が重要だということでした。とは言っても、なかなか難しいのが本当のところです。

基本的にはいくつもの局面パターンを経験し憶えていくしかないでしょう。キャスリングは、絶対にしてはいけない時と絶対にしなければいけない時以外は、その後の自分の先々の指し回しの思惑や目的によって、したほうがいい場合としないほうがいい場合とに分かれます。ひとつ言えるのは、キャスリングに費やす手を攻撃等の手に回したほうが、よくなることが多いということです。それはあくまでも、キャスリングをしなくても自陣やキングが安全だという前提がありますが、ある程度のリスクは引き受けないといい形を作れないのも事実です。

では、以下の局面はどうでしょうか。

白がルークをキングに直射する位置に動かしてきました。これによって黒のビショップ(e7)がピンされたことになります。ここでキャスリングしたくなる人は多いだろうと思われます。しかし、黒に差し迫った危険があるかというと、ありません。そうであれば、ここでなにか一手指しておきたいところです。

白には浮き駒があります。

白は狙われたナイトをどこかに逃すしかありませんが、h5以外はナイトを追い返したことになり、黒がポイントを稼いだことになります。ということで、

h5にナイトが逃げた場合だけを考えればいいことになります。

ここでキャスリングをすれば黒はおおよそ安全な形を作ることに成功しています。危ない形に見えるかもしれませんが、この形は案外耐性があります。加えて、白は手が遅れている駒の展開に苦慮するだろうことが見て取れます。


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