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折々のチェスのレシピ(379)少しだけ高度な知識をあなたに

序盤をある程度きちんと作れるようになった時、次にぶつかるのが中盤の入り口における戦術です。

比較的わかりやすいようにお互いがキャスリングを済ませマイナーピースを全部動かし終わった局面を検討してみます。

手が広い局面ではあります。しかし白はこれ以上守りを堅める必要はありませんし、手待ちのような選択は将来的に手損になってしまう可能性を孕んでいます。黒はポーンの活用が遅れており、eファイルのポーンを失っていることでルークがそれを補完する形になっています。黒がポーンで陣形を前進させてくる前に仕掛けたいところです。ということでここは積極的に駒を展開させていくべき局面です。

Nd4が非常に味のいい一手です。黒はこのナイトを取ることができません。取ってしまうと、

白はセンターポーンを再生しさらに強固な形になるためです。もしナイトを交換してくれたら、白は

このようにさらに前線を拡大することができます。

よって、賢明なプレイヤーは絶対に取ってきませんが、何か別の手を指したとしても、

e6のビショップを先ほどのナイトで捌いてしまいます。すると黒の守りがかなり弱体化することがわかります。

つまり、Nd4とされた時点で黒はビショップを引くしか選択肢がないわけなのですが、引いたとしても、

白はやはり前線を押し上げることが可能です。ポーンの活用が遅れている黒にとってはこうしてポーンで自陣に迫られることがかなりの圧迫となり、なおかつ指せる手が大幅に制約されてしまいます。黒を持ったとして次の手を考えてみてください。なにをどう指しても白が困るような手がありません。

ポーンの展開が遅れている相手に対してはポーンで前線を押し上げる駒組みをしていくことによって相手は困るということを知っていれば、第1図において白が指すべき手は自ずから決まってきます。手が広い(指せる手が多い)局面であっても、少し先の方針が見えていればそんなに多くの選択肢はなく、むしろ一択しかない場合もしばしばあります(今回がその例です)。Nd4に代えて、Ng5、Bd7、f4という進行も考えられますが、跳ばしたナイトにポーンを当てられると戻さなくてはならず手損になってしまいます。


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