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折々のチェスのレシピ(2)

今回は格好いいサクリファイスがテーマです。

第1図

この黒の手を見て、白の次の手がすぐに思いついた人はすでに有段者でしょう。テーマを先出ししているのでわかりやすかと思いますが、ここでサクリファイスします。

第2図

サクリファイスと表現しましたが、これは実は厳密にはサクリファイスではありません。

なんだ、やっぱり取られてしまうじゃないかと言われるかもしれません。しかし、最後までぜひお読みください。

次に白は、

当然、クイーンでチェックをかけます。黒のキングの逃げ場所は一箇所しかありません。

ここでナイトをクイーンで取れば駒の損得はなくなります。そして黒が勝つことはもうないでしょう。

ということは、第2図で黒は、最低でも下のように受ける必要があります。

このように受けるのが黒にとってはこの局面における最善ではありますが、

白はビショップをナイトで取って駒得+ほぼ勝ちの局面を作ることに成功しました。

サクリファイスがテーマだと冒頭で宣言しておきながら、黒が最善手を指すと実は駒を捨てることなく、逆に駒得することができます。黒が最善手を指さなかった場合には、受けがなくなります。

これはお互いに言えることですが、今回の例では白は相手の悪手をそれと判断できるかどうかが勝敗に直結します。もし第1図でメイトの機会を逃すとだいぶ粘られてしまう可能性がありました。一方の黒は自分に詰み筋が発生してしまうことを数手前に察知しておく必要がありました。

今回の例のようにまず駒を捨てて自分の優位を作る手筋は検討から外れてしまうことが案外あるのではないかと思います。チェスを指していると、どうしても自分の手を(できれば安全に)作ることに意識が向きがちではありますが、駒を捨てることによって、駒を捨てないよりもずっといい局面を作れる場合も往々にしてあるので、検討してみてください。

チェスを始めて間もない人やなかなかスコアが上がらい人に比較的よく見られるのは、自分の駒を大事にしすぎる傾向です。今回の例は、相手のキングの頭を開けるための捨て駒でしたが、それ以外にも、オープンにしたいファイルがあるので駒を捨てる、より価値のある駒を取ることができるので自分の駒を捨てる、などなど駒を捨てる動機というか理由はいくつかあります。

駒を捨てることによって広がる世界が見えたら、ぜひ試してください。


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