折々のチェスのレシピ(360)少しだけ高度な知識をあなたに
せっかくですので、前回の局面から対局がどう動くか見てみます(初手からです)。
上の展開では、
ここで終わっていました。白のポーンが右辺に進出しており、黒が劣勢のようにも見えますが、これで互角かやや黒がいいぐらいです。この局面になるとお互いに指す手がなくなります。無理に打開しようとすると形勢を損ねるからです。よって、
黒は上のように手待ちをします。しかしながら、
白にも指せる手がないのでやはり手待ちをします。
この後どうなるかというと、ドローにしかなりません。ある程度の棋力がある同士の対局でドローが多い理由の一端がここにあります。局面が膠着した段階でお互いに無理をしなくなるからです。実質的には後手番の黒が勝ちを拾った対局となります。
では、白はこうした膠着状態を避けるにはどうしたらよかったのか?が問題になります。上下視点を変えて見てみます。
アニメーションgifの進行ではここで白はキャスリングをしていますが、この早い段階でもう少しポイントを稼いでおかないと、相手が強い場合にはどこかで膠着状態に陥る可能性が高くなります。
そこで指せる手がNc3です。取られてしまうではないかと思われるかもしれませんが、これは毒饅頭です。もし取ってくれれば、
これで勝負あったなので、取ってくれて構いません。普通は取ることができないので、Nc6などと手を作ってきますが、
そこでポーンを捌いてしまいます。こちらの展開のほうが若干ながら膠着状態を避けやすい駒組みになります。
白はドローに持ち込まれては面白くありません。そのため、このようにかなり早い段階でいかに膠着状態を避けるかという視点で駒組みをする必要が出てきます。
上の局面からはさまざまな進行が考えられますが、例えば、
また膠着している局面に見えるかもしれませんが、ここで白からはd5とポーンを突く手があります。序盤でdファイルのポーンをうまく捌いておいた効果がここでやっと現れます。
この例のようにならない進行も十分に考えられますが、こうした攻めの小さな種を蒔いておかないと、勝つことはなかなか難しいです。
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