米澤穂信トークイベント&サイン会(@立命館)

名古屋での読書会メモを見つけた時、このトークイベントのメモも見つけたんですよね。せっかくなので書いていきます。

2017年は幸運な年でなんと米澤穂信先生に二回もお会いすることができたんですよ。

前回の名古屋↓

二回目はポッキーの日に行われた立命館生活協同組合様主催のトークイベント&サイン会。

梅村は立命生なので運命を感じましたね(飛騨高山に生まれてから言え)  

こちらも詳細はもうあまり覚えていないのでさくさく書いていきます。

■イベント開始前

会いに行けるアイドルこと米澤先生が立命館に来るということで(梅村が)大騒ぎになりました。この発表は名古屋での読書会が開催される前だったので梅村の中で米澤先生は神秘のベールに包まれていました。騒ぐのは当然です。

立命館大学内にあるふらっとという本屋さんでは早速こんな感じの棚ができていました(撮影日が11月とかなので「米澤先生と古典部」が置いてますが6月とか7月くらいにはもう棚ができていたよ)

別帯も巻かれていて気合十分です(強い)

こんな素晴らしい展開、文句のつけようがありません。

馬鹿なのかな?

■イベント当日 会場にて

6日連続となる登校。受付の人に当選メール画面を見せて会場に入って行きます。早めに来たと思っていましたが最前列は取れず(ガチ勢が湧いている)

このイベントが行われる一週間ほど前に氷菓の映画が公開されたこともあって古典部シリーズが全面的に推されていますね。

会場をぐるりと見渡すと物販もありました。ふらっとの店員さんがやっているので米澤先生の著作は全部揃っていました(最強)

■トークイベント開始

程なくして定刻。

まずは生協スタッフの方が登壇されてこんなことを言いました。

「今回のトークイベント&サイン会は定員160名のところに568名の応募がありました! 今まで(立命館は)森見登美彦先生であったり、万城目学先生、道尾秀介先生といった方々のトークイベントを行ってきましたが過去最高の倍率です!」

なんか名古屋で聞いたことのあるような挨拶ですね(トークイベントのたびに過去最高を更新し続ける男、米澤穂信)

さて、会場が大いに温まったところで真打、米澤先生が登場です。イベント中は撮影禁止だったので脳内でシャッターを切りまくりました(四か月ぶりの米澤先生もやはり後光が差して見えましたね)

さあ、聞き手を学生スタッフにトークイベント開始! といきたいところですが米澤先生、マイクが気になるご様子です。

「私(米澤先生)マイク近くないですかね? ハウリングしてません?」

「それはこの施設のマイクが良いものではないので(笑)午前中にチェックしましたけどかなりマシな方ですよ(笑)」  

「そうなんですか(笑)ではハウリングを楽しんでもらうということで(笑)」

視覚のCPUのみならず聴覚まで100%使うことになりました(ハウリングのグルーヴを感じた)

■質疑応答

このトークイベントは事前のアンケートで米澤先生に寄せられた質問をその場で答えていくという形式だったので、質疑応答が大半の時間を占めました。聞き手は学生スタッフの方です。

では早速いきましょう。メモに残っている限りで書いていきます(なお、梅村のメモと当時の記憶が頼りなので情報の正確性に欠けます。ご了承ください)

・大学で何を勉強されましたか?
「大学に入る以前から小説家になろうと思っていましたが……ちょっと語弊がありますね。物語とかお話を作る仕事をしたかったんですが、何を専門に勉強していこうかと思った時に、一番に思い浮かんだのは「文化人類学」でした。
当時ユーゴスラビアの紛争が激しくなっていて、それは大変な惨劇でした。もちろん勉強はしましたが、表面を撫でるだけでは分からないことが多くて、大学ではこれを深めようと思いました。それなのに進学したのは「西洋史学」ではなく「東洋史学」(笑) 勘違いでもしていたんですかね(笑)
また、大学の勉強って暗記して「はい終わり」では話になりませんよね。「六の宮の姫君」が面白いと感じれるようになったのは大学で史料批判の面白さを学んだことが大きいと思います」

・一番読み返した本は何ですか?
「宇宙戦争ですね」

・今までどれくらい本を読まれましたか?
「実は意識的に読み始めたのは大学生になってからなんですよ。子供の時も本を読むのは好きでしたが、空想するのが好きで……」
「頭の中で物語を作っていくんですね」
「そうですね。ただ高校生の時はあまり本を読まなかったですね。部活に入ったせいで時間がなくて……帰宅するのも遅かったです。目指せ全国! でやっていたので」
「部活は何をやられていたんですか?」
「弓道です。これでも上手かったんですよ!」
「目指せ全国! ですもんね」
「ええ。4分の3は当たりました。嘘のようなんですが、40回やれば30回当たりました」
「まるで機械ですね」
「ただ最後の県大会で4回に1回しか当たらなくて……そのせいでチームも負けてしまって……しばらくは弓道のことを考えたくなくなりましたね。弓もそれ以来触ってません」

・休みの日とか、仕事中の息抜きに何をされていますか?
「洋館を巡ったりしています。大阪とか京都だと旧市役所や古い銀行といった公的な建物が多いんですが、東京だと財閥などの個人所有の洋館が多いですね。「洋館巡りはミステリーの基礎教養だ!」と言われますがあまり役には立ちませんでした(笑)」

・小説を書く上で生活のサイクルはありますか?
「朝は8時に起きて18時に仕事が終わる……なんて優雅な生活をしてみたいものです(笑) 実際そんなことはありません(笑) 引きこもっているので(笑)」
「Twitterに「徹夜ネバーエンド」と書いてましたもんね(笑)」  

「そうなんですよ。14時に新幹線の予約をしていたんですが、どうしても仕事が片付かなくて……なんとか13時に終わらせることができました」

・一日に書く枚数はどれくらいですか?
「一概には言えないですが、「インシテミル」の解決編は120ページほど書けました。ただこのベストスコアを元にスケジュールを組むと大変なことになってしまう(笑)」
「大学生のレポートあるあるですね(笑)」
「ええ。この前は一日に8ページ書けたからといって3日で24ページは書けない(笑)」

・さよなら妖精の『哲学的意味はありますか?』とか折木の『やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に』など数々の名言をお持ちですが、このような名言はどこから生まれるんですか?
「マーヤの方は当時ディベートをやっていたのでそれが元ですね。英語圏で使われる言葉をそのまま移してきました。折木の方はちょっと分からないですね」

・氷菓の登場人物の名字は実在しますか?
「実は私、名字の方にも興味があって……伊原はいはらと書くので実在しますよね」
「いばら、と読むのはやはり棘があるからですか?」
「そうなりますね。折木も実在の名字で確か栃木の方に数軒あったかと思います。実在しないのは千反田。東京に五反田という地名がありますがその周りには一反田、二反田……と八反田までありました。豪農で土地をたくさん持っているという意味で千反田としました」

・アニメだったり映画といったメディア展開にはどれくらい関わりますか?
「私は小説を書くことが仕事で、漫画家の人は漫画を描くのが仕事です。原作というより題材やテーマをお渡しする感じですね。題材としてありますのでどうぞご自由にお使いくださいというような心持でいます」

・本を書いている時どんなことを考えていますか?
「本を書いている途中はそれだけのことしか考えられません。ずっと上を向いて完成を目指しています。本が出てからは、「広く世の中に読まれて欲しい」という思いで宣伝活動に励むので、本の出る前後で別ですね」

・執筆中に音楽は聴きますか?
「聴かないですね。あ、ただここに来る前は三徹だし、小説は佳境に入るし、午前5時だしで、パシフィックリムを最大音量まで上げてヘッドフォンで聴きました(笑)」

・「氷菓」もそうですが海外の地名が出てきますよね。外国や国内でも遠くへ旅行されたりするんですか?
「行きたいですね〜(笑) 非常に良い提案ですね〜(笑) 最後に行ったのは確か……皆既日食が見られるということで日本の南に行こうとしましたが、日本だと見られるところが沖縄の海しかなかった(笑) 酔いそうだなーと思って、結局上海まで行きました。コロナが見たかったので。皆既日食の数時間前までは晴れていてよかったんですけど、段々雲行きが怪しくなってきて、時間になるとドシャ降りで最悪でした……」

・金沢大学(先生の出身校)の近くにオススメの本屋さんはありますか?
「エイ、エム、エイ、ゼット、オー、エヌですね」
「え?」
「Amazonですね」

・名古屋で聞き忘れた装填に関する質問なんですが少しダサい方がいいということはどういうことですか?
「……私名古屋でそんなこと言いましたっけ?(補足すると少しダサい方がいいと言ったのは営業の人) どんな文脈だったんだろう……では装填の基本的な話から始めます。装填に作者は関わりません。それで個人的に思うのは作品の内容を暗示するような内容の装填は良くないと思っています。例えば殺人事件が起きてその死体を直接的に表紙に書いたような装填です。小説と全く関係ないものはいけないけれども、核心的過ぎてもいけない。その間を狙った装填がいいと思っています」

・舞台にしたい土地はありますか?
「運河のように川がお城を囲っている九州の柳川は面白いですね。それと河川の氾濫との戦いだった岐阜市も」

・高山でのオススメのスポットはありますか?
「加藤清正の孫のお墓(法華寺)があるんですけど、お墓のために高山に来るのはしんどいですね」

・どの登場人物に一番思い入れはありますか?
「特にはないですね……どんな人物も、「あるようになってくれ」と思っているので。あ、でも折木はかれこれ17年くらい一緒にいるので思い入れはありますね」

・「インシテミル」でクローズドサークルを課題にしたように、今後やらないといけない課題はありますか?
「どうでしょう……アリバイ崩しはやらないと思いますね。大変なので(笑)ただ、物語が1日という時間の中で始まり完結する、というのは書いてみたいと思ってます。だってカッコイイじゃないですか(笑)」

■質問内容をメモしていなかった回答たち

「氷菓は「熱狂に押しつぶされた人」というのを書きたかったので、折木のようなキャラクターが生まれました。探偵役は自ら謎に踏み込んでくれた方が作者としてはありがたいんですけどね(笑)」

「やったこと、見たことしか書けなかったらミステリー作家は大変なことになってしまいますね……」

「世界堂書店は本来はもっと多くの作品を取り上げていて、全体の流れについてもよくなるように組み合わせていましたが、編集さんに、
「この作家の権利取れませんでした。この作家のエージェントは権利関係厳しいんですよ」と言われた(笑) 初版だけの売り切りならこの作家の作品も取り上げることができたんですけどね」

「架空都市を舞台にすれば都合よくモノを配置できるわけですからありがたいですよね。ただ、実在の街を使うとその土地のオカルティックなイメージを使うことができますよね。「満願」の「関守」なんかはすごく難産で遅々として進みませんでしたが、そんな時に伊豆に行った際イメージが一致して、なんとか完成させることができました」

「追想五断章は当初鎌倉を舞台にしていたんですが、うってつけ過ぎました。「これはマズイ」ということで松本に舞台を移しました」

「高山を去る際に自分はこの土地をあまりよく見ていなかったと後悔したので、それからは住んでいる土地の地形や成り立ちを調べるようにしています」

■サイン会

トークイベントが終わればサイン会です。サイン会がある影響で参加人数を絞っていたみたいなのでこっちが本体になります(本当に当選しててよかった)

前回は「いまさら翼といわれても」に頂きましたが、今回も迷いに迷った結果、「王とサーカス」に頂戴。

梅村は「さよなら妖精」にノックアウトされて以来よく本を読むようになったのでそちらと悩みましたが、個人的に米澤先生の最高傑作は「王とサーカス」だと思っていましたし、同じベルーフシリーズだしでこちらに軍配が上がりました。

対面は二度目でしたが緊張で何を話したのかは忘れてしまいました(仏を目の前にして冷静になれるのか)

でも、しっかり握手をさせて頂いたのは覚えています。冷え性が治りそう。

■イベント終了後

米澤先生にお会いした週明けの月曜日はもはや月曜日ではないので全能感に溢れていたところ友人に声をかけられました。

「梅村って米澤穂信好きだったよね。トークイベントは行った?」

普段から推しのことは鳴いておくべきですね。この友人は辻村深月先生とか村上春樹先生とか読むので米澤穂信沼に落とせる逸材です。この機会に引きずり込んでいきたいところ。

「俺、ふらっとの店員として参加したけどサインもらえたしちょっと話すことできたわ」

ふらっとの店員…………?

会場をぐるりと見渡すと物販もありました。ふらっとの店員さんがやっているので米澤先生の著作は全部揃っていました(最強)

「米澤穂信めっちゃ優しかったわ~」

・定員160名のところに568名の応募

いいんですよ。
これを機に彼は氷菓を買い米澤穂信に心酔し自分から沼に入って行くので。

・過去最高の倍率

梅村がボトルネックを、「(文体が)読みやすい」と勧めたところで講義は始まりました。

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