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【臨床研究日記 08 】ありがたく 「システマティックレビュー」に目を通す

大学院で学んだ公衆衛生学・疫学の知見を元に、健康的な社会を作りたい理学療法士のジローです。

普段は、回復期リハビリ病院の中間管理職ですが、脳卒中の現場にいます。

少しでも、脳卒中患者さんの回復が促進できないかと、現場感覚と臨床研究から俯瞰的な目を大切にしているつもりです。


このブログでは、最近立ち上げた臨床研究の状況を逐一日記にまとめています。

誰かの「臨床研究って、何から始めるの??」の疑問に対して、少しでも参考になれば良いと思っています。



前回は、脳卒中の論文46万件を、自分の研究に必要な118件まで絞り込むところまで終わりました。


「今日から、その118件読み込んでいくぞ!」

そんな気力・体力は無い「ヘタレ」なので、大丈夫です。

今日は、その118件の中から、「システマティックレビュー」に目を通すことにしました。


■  システマティックレビューって何?


システマティックレビューは、特定の治療法や介入の有効性を評価したり、特定の病気に関する知見を統合したりするために用いられます。

特定のリサーチクエスチョンに対して、既存の研究文献体系的かつ徹底的に収集、評価、統合します。

全体的な結論を導き出すことを目的としています。


■  システマティックレビューをどのように検索する?


前回の記事の続きで言いますと、赤枠のフィルターから抽出できます。


赤枠のフィルターをポチッと押すと

システマティックレビューにチェックを入れます


通常の検索の後でも、左側のフィルターから抽出できます。

脳卒中の装具療法に関するシステマティックレビューの検索
(私の今の研究とは関係がありません)
フィルターでチェックをつけると、検索に反映されます


※ 私は、よくフィルターのチェックの消し忘れをしてしまいます。きちんと消さないと、その後の検索の間、ずっとチェックが反映されたままなので、検索の時には注意してください!


■  まずシステマティックレビューを読むべき理由は?


今回は、今日の日中に目を通した以下の論文を参考に、読み方のTipsをお伝えします。


RQ:脳卒中患者に対するリハビリテーションの量の多さが、Activityをより改善させるか?


包括的な情報収集

システマティックレビューは、特定のテーマに関する既存の研究広範囲にわたって集め、評価し、統合したものです。これにより、そのテーマに関する現在の研究状況を一度に把握することができます。

5150件から基準に従って、15件の論文を採択するまでに絞っています。
再現性が重視されますので、除外した論文は、なぜ除外されたのかについても詳しく記載されています。


時間の節約

自分で複数の研究を探して読み解くには多くの時間と労力がかかりますが、システマティックレビューは既にこれを行っているため、短時間でその分野の知識を得ることができます。

Table 1で、このシステマティックレビューに取り込んだ論文の研究デザイン、研究参加者、介入(治療)、アウトカム指標について小まとめをしてくれています。
すごい労力。まとめて下さった研究者に感謝。


バイアスチェック

システマティックレビューは、すでに個々の研究結果のバイアスを評価してくれているものが多いです。論文を読むというよりは、論文の中のバイアスをチェックすることが多いので、先に実施してくれているのはとてもありがたいです。

ランダムに割り付けられていますか?
ベースラインのグループは似ていますか?
盲検(ブラインド)はどうなっていますか?などの質問に対して
Y=yes
N=no
と記載してくれています


エビデンスの統合

システマティックレビューは、個々の研究が示す結果を統合し、全体としての結論を示しています。これにより、個々の論文で矛盾した結果が見られる場合でも、大枠では一貫した結論を導き出すのに役立ちます。


個々の研究を統合して、このRQに対しての結論を導き出しています。



■  とはいえ、読み方が分からない(特に、あの菱形)


システマティックレビューの結果を示す表や図に登場する「大きな菱形」は、メタアナリシスの結果を視覚的に示すフォレストプロット(Forest plot)の一部です。この菱形は、全体の統合効果量を表しています。

 菱形の中心は、統合された効果量(例えば、リスク比、オッズ比、平均差など)を示しています。これは、複数の研究結果を統計的に統合した後の全体的な効果の推定値です。

追加したリハビリの量が、通常訓練を100%とした時に、
追加分が100%を下回るグループ(Small increase in practice)と
100%を超えるグループ(Large increase in practice)に分けて再解析をしています。


横幅(菱形の横方向の長さ): 菱形の両端は、統合効果量の95%信頼区間(Confidence Interval, CI)を示しています。これは、真の効果量が95%の確率でこの範囲内に収まると考えられる範囲です。

菱形が垂直線(通常、効果がないことを示す「0」の位置)をまたいでいる場合(オッズ比なら「1」の位置をまたいでいる場合):統合された結果が統計的に有意でない(効果があるかどうかを断定できない)ことを示します。

菱形が垂直線の片側に完全に位置している場合:統合された結果が統計的に有意であることを示し、その側が全体的に効果がある、またはないということを意味します。

上の図で言うと、Small increase in practiceは統計的に効果なし(=効果があるかどうか断定できない)

Large increase in practiceは統計的に効果ありと書かれています


■  システマティックレビューに 「ありがとう」


臨床研究を始めるにあたって、何が分かっていて、何が分かっていないのか(KnownとUnknown)を知ることはとても重要です。

その面で、その研究の概観を示してくれているシステマティックレビューを読むと、得られる情報がとても多いのですが、読み方が難しい(そもそも何が書いてある論文なの?のレベルから)ので紹介しました。

私も、システマティックレビューに参加したことがありますが、なかなか骨が折れる作業です。

しかし、その一つ前に、一つ一つの臨床研究(しかもRCT)を計画した研究者と、参加して下さった患者さんがいます。

途方もない先人たちの知恵と実践の経験をいただきながら、私たちの代でも更なる前進できるように、自分にもできることを一つずつ進めていきます!


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