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【RS:lyrics】サヨナラ、運命。

シンガーソングライターを辞めて久しい私ですが、REASNOTを創刊して以降、ありがたいことに人前で歌わせていただく機会が増えました。

かつてはどうあがいても手の届かなかったステージに立てるのに、約10年前に作った曲とカバー曲しか歌えないのでは、さすがに申し訳ありません。

せっかくなので、毎年1曲くらいは、新曲を用意しようと決めました。


本日は、2021年に制作・発表した『サヨナラ、運命。』をご紹介します。

雨が終わって雲が消えるような、

楽曲を紹介するにあたって、ちょっと(かなり)長い前置きを。


私は、絶望的に恋愛偏差値が低いです。

例として話すなら、小学1年生の春に好きになって、中学1年生の秋まで追いかけていたOくんがいいかな。流石にもう全部時効だよね。笑


Oくんは私のヒーローでした。

クラスに馴染めなくて孤立しがちだった私に「一緒に遊ぼうぜ!」と声をかけて、グラウンドへ連れ出したり、班活動の輪に入れたりしてくれました。

彼は無意識だったでしょう。みんなに同じようなことをしていたもの。

だけど私は、最初に声をかけてもらって、何度か一緒に遊んでもらって、きっと春の時点で彼が好きになっていました。


「きっと」というのは、気がついたのが冬だからです。

バレンタインが近づいて、友達がそわそわしだして、「紅葉ちゃんは誰が好き?誰にチョコあげる?」って聞かれた瞬間、Oくんの顔が浮かびました。

そのとき「ああ、私は彼が好きだ」と気づきました。

それで、よくよく振り返ってみれば、まだ春と呼べるような時期から好きだったな、、と思ったのです。

本当に私は、昔から今も変わらず、自分の気持ちに気づくのが遅いのです。恋愛偏差値低すぎます。笑


最初に告白したのは、人生で初めてバレンタインデーにチョコを渡したときだから、小学1年生の冬ですね。

それから毎年、バレンタインはもちろん、隙あらば好き好き言っていた気がします。正確な告白回数は不明です(子どもってこわい)。。


まあ、わりとませている小学生だったので。。

3年生くらいになると、友達と「誰が好き?私はねぇ、1位Oくん、2位Sくん、3位Fくん」などと、なぜかランキング形式で盛り上がっていました(子どもってこわすぎる)。

許してください。私の小学校では、どの女の子も大体みんなこんなでした。

ただ、私のランキングからOくんの名前が消えたことはありませんでした。


クラス替えで、彼と離れ離れになったときは、号泣してその場から動けなくなり、友人の肩を借りて移動しました。

「紅葉ちゃんはNくんに告白されたらしい」という噂が広まり、クラスの女子全体から村八分にあったときは、「紅葉ちゃんはOくんが好きなのに、Nくんに好かれているという理由でイジめるのはおかしい」と戦ってくれた友達がいたほど、私の片思いは有名でした。

遂には「紅葉ちゃんがこれだけ長い間好き好き言ってるんだから、Oくんはよほど良い男に違いない」と評判になるほどでした。

小学6年生のころ、Oくんは学年全体でも一、二を争うモテ男になっていました。いや、別に私の影響とは思わないけど。。


Oくんは目立ちたがりで、学級委員長やら運動会の応援団長やらに立候補しては当選しまくり、昼休みのバスケではカッコいいゴールを決めたがり、修学旅行では「俺たちの部屋でお笑いライブやるから来てよ」とみんなに集合をかけたのち漫談を披露して爆笑を巻き起こし、テスト返しのときに先生が「今回の平均点は40点だ」と発表した直後に「あっ。一個間違えた。98点だった」と発言して顰蹙を買うようなやつでした。

歌が上手くて、スポーツ万能で、頭がよくて、そんな自分の優秀さを鼻にかけた言動が煙たがられてて、でも不思議と愛嬌があって面白くて、みんなのリーダー的な存在感で、一目置かれてるやつでした。


中学受験を経て、彼は県下で一番の難関私立男子校へ行きました。
私は泣きまくりましたが、素晴らしすぎる彼がそこへ行くだろうことは受験前から分かり切っていて、どうしようもありません。

もっとずっと最初から、どうにもならないことは分かっていたんです。

彼が語る、憧れの職業。歩みたい人生。彼のご家族や、その他の環境から推察されるもろもろ。どう考えても、私がどれだけ彼を好きでも、ずっと一緒にいられないだろうことは明白でした。

それでも我慢できないくらい、大好きだったんですよ。

自分が一桁の年齢の子どもで、何の力もなく、未来なんて何も分からないと分かっていても、「一生添い遂げたい」と、当時の自分なりにガチのマジで考えていたくらいには。


なんとかかんとか彼のいない中学校での毎日を受け入れ、悲しいことに時間は流れて行ってしまうので、最後にお別れのラブレター(なんだそれは)を書き、超アナログな手段で渡したのが、中学1年生の秋でした。

「これまでさんざん好き好き言って追いかけて、きっとたくさん迷惑もかけてごめんなさい。もうそんなことはしません。これからは、普通に元クラスメイトとして、友達として仲良くできたら嬉しいです」的な手紙。

Oくんは良いやつなので、以後は普通の友達として接してくれました。友達と彼の中学校の文化祭に行ったら、案内してくれたし。逆にうちの文化祭に来たときは、私のクラスの出し物を見てくれたし。同窓会のときは、みんなで楽しくカラオケに行きました。


時は流れ、お互い大学生になって、20歳の同窓会で。

お酒を飲んでいるとき、たまたまふたりになる瞬間があったので、「ぶっちゃけ当時わたしのことどう思ってた?」と聞いてみました。

「普通に好きだったよ」と言われました。

「え?!私が好き好き言っても、無反応だったじゃん」と問い詰めたら、「だってさ、小学生だよ。どうしたらいいか分かんなかったんだよ」と言われました。


ね。恋愛偏差値低すぎでしょ。笑


「中学で男子ばっかの環境になって、すげえ後悔したよ。そういうときに手紙をもらったんだっけな」と彼は笑いました。

「うそー。そのとき、今のセリフを言ってくれてたら、間に合ったよ」と私も笑い返しました。

「マジ?!うわー、もったいないことしたな」と彼は頭を抱えたので、「ほんとだよーばかー」と、私は殴るふりをしておきました。


その同窓会のとき、私もOくんも恋人はいませんでした。

少女漫画であれば、ときめきラブストーリーが始まりそうな展開です。

しかし残念ながら、20歳の私は、そのとき大好きなひとに片思いをしていました。Oくんのことは普通に好きだし、友達だし、昔好きだった人として幸せでいてほしいとは思っていたけど、それ以上でも以下でもありませんでした。よって、特に何も始まりませんでした。

私たちはそれからずっと、年末年始に気が向いたらあけおめーるを送ったり、同窓会で顔を合わせたら楽しく喋ったりするくらいの、友達です。


ね。恋愛偏差値低すぎでしょ?笑


多数の友人に「何それもったいなさすぎる」と怒られました。


たしかに、そうかもしれないんだけど。

大好きなひとがいるときは、他のひとにまったく興味がないのです。過去に大好きだったひとでも、同じなのです。たまに告白してきてくれる人がいても「ごめんね」で終わっちゃうのです。

「あの人が大好きだけど見込み無さそうだし、この人と付き合うのも悪くないかな」って冷静に判断して、彼氏を作って、ちゃんとその人を大事にできる子が、うらやましくて仕方ありませんでした。


一途と言えば聞こえはいいかもしれませんが、そのくせ私は男心がまるで分からず、タイミングも悪く、ただひたすらに愛情が重すぎるようなのです。残念な話です。

中学のときも、高校のときも、そうでした。

「この人いいな♪好きです、付き合ってくださーい♪」ってノリで、次々に彼氏のできる子が、うらやましくて仕方ありませんでした。


大好きなOくんに似ているQくんを、代わりに選ぶこともできません。
だってそんな人と一緒にいたら、「今ここにいるのがQくんじゃなくてOくんだったらいいのにな」という思いばかり募って、泣きたくなるから。

……ただ、「似ている」ということは、好みのタイプに近いわけで、似ているということとは関係なく好きになる可能性はあります。

誰でも何かあるじゃないですか?体育会系の男子に惚れやすいとか、犬っぽい人を好きになっちゃうとか、気づいたら元カノ全員ギャルだった、とか。

だからもし私が「Qくんが好き」と言い出したとしたら、それは私にとって、Oくんが完全に過去の人になったときです。Oくん好き好きモードが解除されたあと、Qくんと過ごす時間に喜びを覚えたり、Qくんの素晴らしさに気づいたりして、新しい恋をしているのです。

はたから見たらわかりづらいかもしれない。「Oくんに似てるからQくんを好きになったんだ」と思われるかもしれない。
しかし私に限っては、そんなことはありえないのです。

OくんはOくんで、この世に一人しかいないOくんだからこそ大好きなのです。Qくんもそう。誰だってそう。。


じゃあ、どうやったら、好き好きモードが解除されるのかって?


小学校なら6年間と決まっていて、私が変わらなくても、時間はどんどん流れて、相手も環境も変わっていきました。そのため、私も変わらざるをえないと、どこかで覚悟を決められました。

そうした学生時代の「期間制度」から解放されてからは、嬉しい反面、困ってしまうこともありますね。


間違いないことは、いつも、終わる日は晴れやかです。

「未練はあるけど諦めなきゃ」という方向に、自分をもっていったことはありません。だって無理だもん、そんなの。

好きなものは好き。好きで好きで好き尽くして、でも思い通りにならなくて、泣きつくしたある日、ふっと青空が見える、って感じ。

雨が降りつくして水分なくなって雲が消えるのに近いかもしれない。

その感覚を、歌にしたいと思いました。


歌詞を書いている途中で、「これって恋愛に限らないな」と思いました。

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