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【SSW18:WORKS】絶望と向き合う日々で見つけた 、「生きること」を問いかける楽曲群

ギターとピアノの弾き語りを中心に、ルーパーやサンプラーも使用し、多彩なライブを魅せるシンガーソングライター、黒木(くろき)ちひろ。彼女の楽曲にこめられたメッセージや、2022年1月から続けているデジタルシングルリリースの内容について聞いた。

人生と真摯に向き合う曲作り

「日々の生活のなかで、ワンフレーズの言葉やメロディが落ちてきたのを書き留めて、曲にまとめていくことが多いですね」と語る黒木。

2021年4月25日発売のアルバム『SHARP DROP』には、左利きをテーマにしてマイノリティの息苦しさを歌った『Left Behind』、反戦歌である『宇宙の島』、コロナ禍で制作した『宝』など、今を生きる命への祈りを込めた楽曲が収録されている。

「アルバムの最後に入れた『星降らぬ夜に』も、昔から、死にたい人に向けて歌っていた曲です。今だから残さなきゃ、と思った曲をまとめました」。

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既に絶版となったものを含め、4枚のアルバムと10枚のシングルをリリースしてきた黒木。その楽曲は、人生について考えた内容が多い。

「自分が音楽をやろうと思ったきっかけに結びついているかもしれません。何故生きていくのか、という問いを突き詰めていくと、こういう歌になるんだろうと思います」。

かといって、自らの想いをそのまま歌詞にぶつけているわけではない。

「普段から、音楽以外でも、多面的な物の見方をするように心がけています。誰も傷つけずに過ごすことは不可能だけど、できるだけ多くの人の痛みにちゃんと寄り添えるように、俯瞰的に考えながら曲を作っています」。

暗闇にいる人へ、伝えたいメッセージがある。

「私の歌を聴いてくれる人を、救いたいという気持ちがあります。かつて自分が、鬼束ちひろさんの歌に引き留めてもらったように、誰かの最後の一歩を止められる存在でありたい。おこがましいとは思いますが、そうなれたら嬉しいですね」。

彼女の楽曲が、届くべき人に届くことを願う。

Zepp目標と、連続デジタルリリース

茅ヶ崎市在住の黒木は、地元のライブハウスはもちろん、飲食店でもライブをしてきた。

「コロナ禍で休止したままですが、『よるびらき』というタイトルで、知り合いのお店に機材を持って行って、歌わせてもらっていました。私のお客さんがお店を知ってくれたり、お店のお客さんも私を知ってくれたり、やりがいのある企画でした」。

人と繋がることに関して、ライブに勝るものはないと語る。

「特に大きな舞台を目指すうえでは、色んなところで歌って、色んな人と出会うことが、一番の近道だと思っています」。

しかし、コロナ禍では、思うようなライブ活動ができない。代わりに、現在は、楽曲制作に注力している。

22年1月22日には『蒲公英』、2月18日には『little sun』、3月11日に『祈りの糸』と、連続してデジタルシングルをリリースした。

「今までとは違うことをやって、みんなの度肝を抜きたかったんです」と語るのは、昨秋から制作を開始した『蒲公英』。初めて生バンドでレコーディングし、MVを撮影した。「歌詞も、私にしては珍しく、女っぽい遊び心のある雰囲気に仕上げました」。

『little sun』は、実家で飼っていた犬を亡くしたことがきっかけで生まれた曲だ。「18年生きた犬で、私にとっては、半生を一緒に過ごした子でした。普段、個人的なことは歌にしないのですが、『どういう曲を書けばいいんだろう』と行き詰まったとき、『こういう曲を作ってもいいかな』と、素直な気持ちで書きました」。

比較的最近制作した上記2曲に対して、『祈りの糸』は11年前、東日本大震災の直後に作った楽曲だ。当時、黒木は、数日後に控えたバースデーライブの準備をしている最中だった。

「ライブに来てくれるはずだった人たちはみんな来られなくなって、誰に見てもらうあてもなくなったけれど、届けられないかもしれないけれど、歌おうと思って作ったのが『祈りの糸』でした」。

時には計画停電のために薄暗い部屋の中で、時にはテレビで繰り返される津波の映像を見ながら、ギターを鳴らした。

「悲しくてしょうがなくて。前向きになれば救われる、みたいなことが言えなくて。自分は神奈川県に住んでいて、影響はあっても直接的な被害はないという状況で、どこまで被災地に寄り添って書けるのだろうか、と考えながら作りました」。

それは震災への祈りを越えて、黒木の音楽活動において大事な場面、人生の節目ごとに歌い続ける楽曲となった。

4月8日には『葉桜』のリリースを予定しており、以降もデジタルシングルのリリースは続く予定だ。

「今年は制作に力を入れて、23年以降は別の形で動いていこうと思っています。まずは、楽曲をたくさん聴いてもらえたらと思います」。

彼女の新譜から目が離せない。

text:Tsubasa Suzuki,Momiji edit:Momiji photo: Shun Itaba

Information

2022年1月から、デジタルシングル連続リリース中!

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今後のライブ予定は、HPからご確認ください。

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