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【RS09】新潟の『癒し』の歌姫・実希

新潟を拠点に、東京へも進出しつつあるシンガーソングライター・実希。2016年には『NHKのど自慢』チャンピオンを獲得した歌唱力は折り紙付きだ。昭和歌謡から最新ヒットチャートのJ-POP、自身のオリジナル楽曲まで幅広く歌いこなす彼女の来歴と、歌への想いに迫った。

迷いの果てに『歌』の道を選んで

人気ドラマ『下町ロケット』のロケ地としても有名な新潟県燕市に生まれた実希は、幼いころから歌うことが好きだったという。

「近所に古いカラオケ喫茶があって、よく通っていたんです。経営者の方がおばあちゃんで、集まっているお客さんも年配の方が多くて、みんなで歌えるお店なんですよ」。

そうした幼少期の環境が、「昭和歌謡が一番好き」と語る彼女の音楽性を育んだのかもしれない。

しかし、実希が最初に思い描いた夢は、女優になることだった。

「小学生のとき、『マリと子犬の物語』という映画を見て、感銘を受けたのがきっかけでした」。

思い立ったら行動に移す彼女は、中学2年生ごろから劇団の研究生になった。だが演技を学ぶうち、だんだんと違和感を覚えるようになったという。

「私のやりたいことと違うなと思って。合わないというか……」。

中学校の部活でも、同じような経験をした。入学当初は家庭科部に所属したが、活動内容に疑問を持ち、2年生の後期に合唱部へ転部した。

「合唱部では、いきものがかりさんの『風が吹いている』などを歌いました。とても楽しかったです。やっぱり歌はいいなと思って、高校では音楽を勉強しようと決めました」。

開志学園高校ではボーカルを専攻し、自由な校風のもとで学びを深めた。さらに高校2年生からはボイストレーニングスクールにも通い、歌唱力に磨きをかけていった。

歌への愛は確たるものだったが、卒業を控えるころ、実希のなかには迷いが生まれていた。

「芸能の道の険しさ、歌手という職業の大変さがわかって、なかなか将来も見えづらくて。大した実力のない自分が、このまま歌っていていいのかな、と不安になっていました」。

それでも想いは断ち切れず、SHOW! 国際音楽エンタテイメント専門学校ボーカル科へ進学した。

そんな実希の転機となったのが、毎週日曜に放送されている人気テレビ番組『NHKのど自慢』だった。

『NHKのど自慢』チャンピオン獲得

「昔から、おばあちゃんと一緒に『のど自慢』を見ていて、『すごいなぁ』と思っていました。近所のカラオケ喫茶のみなさんにも『あんた、のど自慢出てみれば』と言われていました」と思い出を語る実希。

高校生のころに通っていたボイストレーニングスクールの先輩から「『のど自慢』が新潟に来るから一緒に出てみない?」と誘われたことが、応募の直接のきっかけになったという。

ハガキ審査では、ボイストレーニングスクールの大会で金賞を取ったことをアピール。二次審査となるスタジオでの予選会には、個性的な歌手たちが250人集まっていたが、落ち着いて普段のパフォーマンスを披露した。

「予選を勝ち上がったときは、どきどきしました。夢心地というか、心臓が止まりそうで。『あ、テレビに出られるんだ』と」。

そうして迎えた2016年5月29日、新潟県加茂市で行われたNHKのど自慢本選において、実希の歌唱順は最後だった。

「楽屋は空気が重くて緊張しました。みなさんが発声練習していたりして。でも、カメラの前では、意外と緊張しなかったです」。

実希が歌ったのは、絢香の『今夜も星に抱かれて』。08年8月に公開された映画『スカイ・クロラ』の主題歌だ。

堂々たる歌いぶりを披露した実希は、見事、チャンピオンを獲得した。

「のど自慢でチャンピオンになったことは大きな自信になりました。『この道でいいんだな』と思えたし、色んなライブ会場や学校で評価してもらえて、嬉しかったです」。

実希にとって、歌手として生きていく覚悟を決める出来事となった。

専門学校を経て本格的な音楽活動へ

中学生のころから作詞に取り組んでいた実希は、専門学校で作曲を学び、1年生の後半に初のオリジナル曲となる『Run for my dream』を完成させた。

「夢に向かって頑張る自分に向けて書いた応援歌です。でも、それだけじゃありません。私の歌を聴いてくれる方々も、それぞれ仕事や夢や希望に向けて努力しています。日々がんばっているみなさんの背中を推したり、勇気を与えられたりできたらいいなと思って作りました」。

彼女が説明する通り、ポジティブなワードが詰め込まれた、可愛らしくも爽やかなアップテンポナンバーだ。『NLEED 新潟法律大学校』のTVCMにも起用されており、代表曲といっても過言ではない。

「ファンの方にも『元気になる』と言っていただけて嬉しいです」。

19年3月には『Run for my dream』を収録した1stミニアルバムを制作。長岡音楽食堂ZEROにてレコ発ワンマンライブを行った。

現在までに作ったオリジナル曲は全部で7曲。21年に向けて、2ndアルバムの発売を計画しているという。

編者が特筆したい彼女の特徴は、オリジナル曲の世界観もさることながら、カバーする楽曲のバラエティの豊かさと、原曲の良さを生かしながらも個性が光る歌唱力の高さだ。

「昭和歌謡が一番好きですが、大好きだった絢香さんや憧れの小林未郁さんの楽曲をカバーしたり、幅広く歌っています。ライブごとにお客さんの年齢層も雰囲気も違うので、柔軟にセットリストを組んでいきたいです」。

その言葉通り、知る人ぞ知るシンガーソングライターの名曲から、イルカの『なごり雪』や中森明菜の『セカンド・ラブ』など昭和の大ヒット曲まで器用に歌いこなす。

アカペラでも聴き惚れてしまうほどの歌唱力は、うらやましいの一言に尽きる。編者の称賛に対し、本人は「まだまだです」と謙遜していた。

新潟から全国へ、癒しの歌を届けていきたい

作曲の際はピアノを弾いている実希だが、ライブでは歌唱に集中している。演奏は、専門学校時代の先輩やライブハウスで対バンした音楽仲間などにサポートを頼んでいるという。「いつかピアノの弾き語りをしてみたいです」と意気込んでいた。

2年ほど前からは、新潟だけでなく、東京でもライブをするようになった。

「専門学校2年生のころ、東京と新潟の両方でライブを企画しているイベンターの方と知り合って、呼んでもらうようになりました」。

現在は2、3ヶ月に一度上京し、ライブハウスへの出演はもちろん、路上ライブも積極的に行っている。

「もうちょっと新潟で地盤を固めたいです。そこから、東京や大阪など、県外に出ていけたらいいなと思っています」と語る。

今後の目標を訊いてみた。

「もっと大きな会場で歌えるようになりたいです。なかでも、NHKホールは憧れですね。のど自慢のチャンピオン大会に行けなかったことが悔しかったので…。いつかリベンジしたい、絶対に叶えたい目標です。

それと、2020年は挑戦の年にします。オーディションなどに積極的に応募して、チャンスをものにしていきたいです」。

シンガーソングライターとして成長し、聴いてる人の心を揺さぶり、何かを与えられる存在になりたいと語る実希。

「お客さんからよく言われるのは『癒し』です。私としても、心のお薬というか、心も体も治療できるような歌を歌えればと思っています」。

「最近ちょっと疲れているなぁ」という方は、ぜひ、実希の歌を聴きに行ってはいかがだろうか。

text:Momiji photo:Junichi Honma

INFORMATION

2020.03.01(Sun) open 13:30 / start 14:00
実希のワンマン & birthday live

[会場] LJスタジオ(新潟県加茂市旭町1-11 2F)
[料金] ¥1,500(1drink付)
[出演]実希 with Masaki / OA…kou、永井雅史

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