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【R27:WORKS】 ビジュアル系のブランド作りと、 自身の思いを昇華した楽曲群

配信を中心に活動しているビジュアル系シンガーソングライター・いくまろ は、「より多くの人にビジュアル系を知ってもらいたい」という思いを胸に、楽曲制作はもちろん、雑貨のデザインや小説の執筆など、幅広い分野に挑戦している。その作品の内実を聞いた。

ビジュアル系×〇〇

「ビジュアル系の間口を広げたい」と語る、いくまろ。オンラインショップには、Tシャツやリュック、トートバッグ、サコッシュ、缶バッジ、アクリルキーホルダーなど、彼自身がデザインを手掛けた商品が並んでいる。

「コンセプトは『ビジュアル系×シンプル雑貨』です」。

配信リリースした音源のジャケットや缶バッジなどに使用した写真は、自らロケ地を探し、撮影した。本人のアーティスト写真にも、こだわっている。

「写真も、アートの一つだと考えています。ビジュアル系らしさを出しつつ、より多くの人に『素敵だな』と思ってもらえる写真を目指しています」。

10月27日には、9月から4週連続でリリースした楽曲群とリンクする短編小説『Seasonal Quartet』を、Amazonにて販売開始した。

「昔は、文章を書くことが苦手でした。子どものころは読書感想文、ロックバンド時代は作詞に苦戦しました。でも2年くらい前に、自分の実体験や、世の中に対して思うことを織り交ぜたら、筆が進みやすいことに気づきました。それから文章を書くのが好きになって、『ビジュアル系×文学』という形での出版に繋がりました」。誰でも手に取りやすく、インテリアとしても飾りやすい、新書サイズの装丁だ。

シンガーソングライターとしての活動に留まらず、様々な分野に挑戦する理由を訊ねると、「僕は『いくまろ」というブランドを作りたいんです」。

ビジュアル系に、もしかしたら音楽にさえ興味のない人が、いくまろのTシャツを見て「カッコいい」と思い、購入する。しばらく着ているうちに「どういうブランドなんだろう?」「制作者ってどんな人?」と気になり、調べて、彼の音楽に辿り着く。それこそ理想の流れだと考える。

「誰かが、ビジュアル系を知るきっかけになれたら嬉しいです」。

彼の努力が、どんな形で実を結ぶのか見守りたい。

4週連続リリースについて

音源はほとんど一人で制作している、いくまろ。「聴く人を選ばない音作りをしたいので、洋楽風のミックスやマスタリングを目指しています」。

2022年9月21日からは、4週連続で配信リリースを行った。

「一曲ずつ、別々の楽曲として聴いていただけますが、実は繋がっている思いがあります。1話完結だけど、シリーズ全体としてのストーリーもあるドラマみたいなものです」。

第一弾の『空蝉』は、シンガーソングライターのMam_i_氏をサポートピアニストに迎えた、エモーショナルなロックバラードだ。

「子どものころって、特に何もしなくても、主人公になれたと思うんです。たとえば『夏休みが始まった』ってだけで、大冒険の幕開けを感じました。でも歳を重ねるにつれて、そういう感覚は薄れていきますよね」。

いつから、人は傷つくことが怖くなっていくのだろう。大人になっていくのだろう。自問自答しつつ、リスナーにも考えさせる楽曲だ。

第二弾の『ゼロの温度』には、サポートギタリストとして加納裕氏が参加。新たなサウンドを追求し、爽やかで聴きやすい、ポップな恋愛ソングに仕上げた。

「たまたま見たドラマにインスピレーションを受けて制作しました。『大好きな人が目指している夢や未来に、一緒に連れていってほしい』というベタな 内容です。同時に、『普通』の在り方を問う内容にもなってます」。

自分にとっての普通は、誰かにとっては普通ではない。だからこそ、相手と出会えたことに感謝して、補い合って生きていきたい。そんな温かいメッセージに癒される。

続く『アダルトチルドレン』は、ポエトリーリーディングを取り入れた意欲作だ。自らの心に潜む闇と冬の寒さを重ね、詞に託した。

「いつも周りの顔色をうかがって、過度に傷つくことを恐れてしまう。怒られることが怖くて、言いたいことが言えなくなる。人を疑ってかかるのに、すぐ信じちゃって、騙されやすい。バランスの良い人なら上手くやれることが、どうしても難しいんです」。

自らの性質に長年苦しんできたが、克服する術を見出した。

「自分が自分の親になるというか、過去を受け入れてあげる。認めてあげると、改善される傾向にあるそうです」。

そんな思いから繋がる第四弾が、『御伽噺』だ。卒業の季節をテーマとして、大人からの抑圧や、自縄自縛からの卒業を祝う内容になっている。

「どれだけ苦難があっても大丈夫。君が君の物語の主人公である証だ。何度でも乗り越えて、夢に向かって生きていこう。そんな思いを込めました」。

いくまろは、自身の人生を教科書として、「心の闇と向き合うことを辞めてしまったら、自分が本当に望む場所にはたどり着けない」と語る。

本格的な活動をスタートしたばかりの彼が、これからどのように展開していくのか、楽しみだ。

text:Momiji photo:KENTA SUGIMOTO

Information

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2022年9月21日から4週連続リリースした『空蝉』『ゼロの温度』『アダルトチルドレン』『御伽噺』、各種サブスクリプションサービス等で配信中!

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