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【R25:WORKS】豊かな感性から生み出される、 精密で印象的な作品の数々

シンガーソングライター、フィンガースタイルギタリストを主軸としながら、コンポーザー、トラックメイカー、小説家など多数のフィールドで活躍する、三浦(みうら)コースケ。彼の仕事の流儀や、執筆した小説に仕掛けた工夫、代表曲と呼べる楽曲たちの内容について聞いた。

仕事の流儀と、小説について

「寝る時間が多い方が、作業効率は上がります」と断言する三浦。「12時間寝て、起きて飯食って、寝ます。半日寝てます」。

しかし、制作に集中すると、まったく寝なくなることがある。

「3rd full ALBUMの『MAM』は先に曲が揃って、歌詞はまだ決まっていない部分があったので、一晩で仕上げました。14曲分くらいかな。夜10時から次の日の昼12時ごろまで作業して、終わってすぐ寝ました」。

アレンジを決めるときも、しばしば同じような事態が起きる。

「僕はCDのアレンジを決めるとき、ライブパフォーマンスも一緒に考えています。エフェクターの使い方と合わせて音を考えるので、気づいたら外が明るくなっていますね」。

初めての小説を書き上げたときは、2週間、ほぼ寝ずに取り組んだ。

「元々、本を読むのは苦手なんです。これまでの人生でまともに読んだのは、吉本ばななさんの『キッチン』だけ。知人に薦めてもらって、世界観に魅了されました。自分が小説を書くってなったとき、手本にしたのも『キッチン』だけです」。

三浦いわく、小説の執筆は、歌詞を書くのとは真逆の作業だ。

「歌にはメロディがあって、全体の長さも決まっていて、その範囲内で言葉をはめていきます。言葉を選んでいく作業なんです。一つの言葉に色んな意味を持たせたり、歌詞と歌詞の行間を読ませる工夫をしたり」。

その作業が染みついていたため、初稿は、文章の量が少なかったという。

「もうね、骸骨ですよ。『キッチン』と比べたら、肉がなくて、骨みたいな小説だなって、自分で思いました。半年かけて、なんとか肉付けして、ふくらませました」。

細かいところまで意識して、作品を繋げている。

「『明日の余告』は、あとがきに書いた通り、『その真実を知った時、物語はすべて真実になる』んです。一回読めばオチがつくんですが、あれは僕の中では初心者向け。実は、別のオチがあります。『明日の余告』を繰り返し読むと、3つのオチがあることに気づいてもらえるはずで、3つ目が僕の中の公式設定です」。

にやりとする三浦。「僕は伏線が大好きな人間なので、自分の作品も、繰り返し読んだら印象が変わるように意識して書きました」。

その仕掛けは、小説内だけにとどまらない。

「1st full ALBUM『All=Myself』は、単語の頭をとると『AM』になります。2nd full ALBUMの『MUSIC ADDICT』は『MA』、3rd full ALBUMは『MAM』。そして小説の最終章には『IAMAI』と、『AMA』を隠しています。各アルバム名にも各章とリンクする意味があります。これ以上は言いませんが、色んな仕掛けをしているので、隅々まで味わってほしいですね」。

豪快に見せながら、緻密な作品を仕上げていくところが、三浦の魅力の一つである。

三浦を代表する楽曲の数々と、そのパフォーマンスについて

三浦の自己紹介欄には、「ライブ中にギターに話しかけたり、抱きしめたり、服を着せながら唄う人を担当」と書かれている。一体、どういう意味なのだろうか。

「ギターに話しかけるっていうのは、サウンドホールに声を響かせること。ループステーションで録音して、ライブに使っているんです。抱きしめるのは、たとえばバラードの曲で、ギターを弾かなくなった瞬間とか。最近のライブではあまり使ってないけど、ギターを抱きしめながら叩くパーカッションの技を使っていたときもあります」。

ワンマンライブでは、演奏前のギターにジャケットを着せていたり、終演時に置いたギターに服をかけたりしている。「ライブに来てもらったら、よくわかりますよ」と笑う。

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彼の破天荒さは、パフォーマンスだけにとどまらない。ドラムやベース、バイオリンなど、多種多様な楽器の音をギター一本で鳴らすスタイルは、注目に値する。

「ライブでもレコーディングでも、一人でフルバンドをやっています。僕の音源は、まさしくライブ盤。フルのエフェクターをそろえれば、いつでもライブで演奏できる内容を収録しています」。

そんな三浦は、数えきれないほど多くの楽曲を生み出してきた。

「今では全然演奏しない曲も含めれば、全部で400、いや500はあるかな。『MAM』のときだけでも、ヨーロッパで60曲、日本へ帰って40曲、あわせて100曲作ったなかから16曲を選んで、レコーディングしました」。

楽曲制作の際は、意識的に、様々な手法を用いている。

「歌詞が先でも、メロディが先でも、コードからでも。『これを使いたい』ってモチーフや、衝撃的なワンフレーズがあれば、それだけで作れます。歌詞・メロディ・アレンジ・テーマなどの要素のうち、3つ以上が同時にでてきたときは、『降りてくる』と呼んでいます」。

代表曲を訊ねると、彼はしばし考え込んだ。

「分かりやすいのは、『Kawaii HARAKIRI Yabai ne NIPPON』でしょうね」。

2022年の6月には日本のiTunesチャートで33位に入ったこの曲は、海外でツアーしたことをきっかけに作られた。

「向こうの人は、僕が日本人だと分かると、知っている日本語で話しかけてくれるんです。そこから『Kawaii』『HARAKIRI』がでてきて。

『Yabai ne』は、バルセロナで仲良くなった韓国の友人が、『コースケやばいねすごいね』と話しかけまくってくれて、『次に海外で流行る日本語かも』と思って、使いました」。

海外から見たステレオタイプな日本を踏まえ、三浦なりの解釈で現代社会を風刺した歌詞とMVは、公開直後から賛否両論を巻き起こしている。

また、三浦自身を語るうえで、外せない楽曲が『忘れていく唄』だ。

「2016年の12月ごろに書いた曲です。ギターを持って、コードを鳴らしていたら、自然に言葉が出てきて、気がついたら完成していました。それからずっと歌い続けています」。

彼自身のリアルを歌っている部分が強く、とても大切にしている歌だ。

「僕の父は、原因不明の難病で、ずっと入院していました。ほぼ植物状態で、17年になってやっと、数万人に一人の病気だとわかりました。初期症状は認知症に近くて、すぐに身体も動かなくなってしまうんです。そんな父に対しての歌です」。

最初の海外ツアーで最も大きな反応があったのも、この歌だった。

「なんででしょうね。歌詞の意味とか、まったく分からないだろうと思うんですが。僕の想いが歌に乗って、伝わったならいいなと思いますね」。

『忘れていく唄』が評価されたのは、海外だけではない。

「横浜の路上で歌っていたら、足を止めて、めっちゃ泣いてくれた人がいたんです。告知も何もしていなかったから、本当に偶然聞いてくれたんだと思います。『理屈じゃなく、思いが届いたんだな』と感じました」。

その出来事から生まれた曲が『理由を超えて』だ。

「冒頭の歌詞は『波音揺れる その青の向こうまで 僕らの音は超えて行け』。横浜でのことだけじゃなく、言葉を超えて、理由も超えて、海の向こうまで音楽を届けたいという思いも込めました」。

敢えてダンスミュージック風に仕上げたこの楽曲は、狙い通り、二回目の海外ツアーで大きな反響を得た。

代表曲として差支えない楽曲が、多数ある三浦。そんな彼の最新アルバム『I am Japanese』のなかで、今、最も推したい曲が『If you get cancer』だ。

「この曲を書いたきっかけは、僕が上京していた2011年ごろにユニットを組んでいたメンバーが亡くなったことです。病気が見つかった時点でステージ4の末期がんになっていて、まさに、余命3ヶ月でした」。

三浦が彼の病気を知ったのは、亡くなる約1ヶ月前、20年3月のことだった。

「コロナが始まりかけていた時期で、大変でしたが、なんとか会うことができました。一緒にご飯を食べて、話をして、元気そうに見えたんです。『また来月、会いに来ます』と伝えて、帰ってきました」。

山形へ帰って間もなく、4月2日の夜に制作したのが『If you get cancer』だ。

「まさに、降りてきた曲です。『If you get cancer』というフレーズが閃いたとき、『cancel』というワードが同時に出てきました。それから『この世界に踊らされてるみたいだけど、そのなかで僕らは答えを見つけるんじゃないか』と思ったら、『dancer』と『answer』が現れました」。

彼の訃報が届いたのは、約2週間後のことだった。

「ご家族によると、4月2日の夜に、亡くなられたとのことでした。まったく知らなかったけれど、すごいタイミングですよね。個人的には、彼が置いていってくれた曲だと思いたい。そう思って、歌っています」。

人生で出会う物事の一つ一つへ真摯に向き合い、受け止める彼だからこそ、多様かつ印象的な作品の数々を生み出すことができるのだろうと思った。

text:momiji

Information

小説『明日、昨日、そして、今日。』(23曲入りCD付)、ライブ会場にて好評販売中!各種サブスクリプションサービスにて、NEW ALBUM『I am Japanese』配信中!

2022.10.22(Sat) Open 18:00 Start 19:00
三浦コースケ初福島ワンマンライブ

[会場] IZAKAYAくま福(福島県河沼郡会津坂下町五香六百苅1103)
[出演] 三浦コースケ / OA.たけだゆーすけ
[料金] ¥2,500(+1D)

2023.01.22(Sun) 三浦コースケ初大阪ワンマンライブ
[会場] 東梅田AZYTATE(大阪府大阪市北区堂山町11-2)
Comming soon...

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