医療経営者に捧ぐ必読書100選が 5分でわかるnote [Vol.005]
[Vol.005] マネジメント 基本と原則 エッセンシャル版
P.F.ドラッカー著 上田惇生編訳
なぜ、今ドラッカーなのか?
「マネジメント」は、誰もが知る名著。
ただ、読んでいくうち
文章の抽象度が高くて挫折した経験、
ないですか?
ちゃんと理解してるか?っていうキモ。
簡潔明瞭で、削ぎ落とすところがない
完璧な構成ですね。
ただし、「は?」という文脈が多い…。
と感じるのは、私だけでしょうか。
小手先より、原理原則。
経営のいろはでいえば、
「い」の本だから、もう一度読んでみたい本。
とかく現代人は、最新の手法に目を奪われる。
ですが、
どの業態、どの社会、どの組織においても、
基本の原理原則は変わらない。
変わらないにもかかわらず、
その原理原則を知らず、
知ろうとせず、過ちを繰り返し続ける。
それは過去の偉大な先人たちに対する
冒涜(ぼうとく)です。
すでに「イマイチ」だと分かっていることを、
「やっぱイマイチだったなぁ」って
確かめる行為は避けたいですね。
日本の医療は国民皆保険であり、
公定価格ですので
企業とは違うプロモーションが必要です。
ですが、
企業のマネジメントにも、
医療機関のマネジメントにも
共通する課題があります。
それは、「人」をどう管理するのか。
今回は、
医療経営者にとって読み解いておきたい
ドラッカーの名著を、
医療経営者向けに特化して読み込んでいきます。
で、さっそく「マネジメント」って何?
業界には、必ずと言っていいほど
「専門性の弊害」が起こります。
医療界も、診療の専門性が育つことで
専門性の極みを得たいと思う性にかられました。
専門性はどうしても、
「アート」の側面が出やすいものです。
アートがアートたる所以は、
それが表現として許される社会の中にあるから。
医療にとって「患者」を、
アートの表現の材料にしてはいけない。
もっとも核に据えなければいけないのは、
地域の方に、住民にとって、暮らしの中で
医療は何に貢献できるか?です。
ドラッカーの言わんとする
「成果は組織の外部に存在する」は、
まさに、社会にとって何に貢献できるか?で、
組織の価値は決まるんだと、いうことです。
そして、
組織が有機的に動くためには、
マネジメントを必要としている。
だから、「マネジメント」なのですね。
マネジメントは、
仕事であり、挑戦である。
魔法の杖ではない。
ドラッカーは、マネジメントの役割を
こう定義しています。
①成果を上げる
自らの組織に特有の使命を果たす。
組織に特有の使命、すなわち
目的を果たすために存在する。
②人を生かす
仕事を通じて働く人たちを生かす。
生計の資(かて)、社会的地位、z
コミュニティとの絆を手にする個人を生かす。
③社会に貢献する
社会に及ぼす影響を処理するとともに
社会問題について貢献する。
とにもかくにも、成果を上げること。
それは人をいかすことで、
社会にとって有益な価値を創造することだ、
ということですね。
利潤動機、利潤の極大化なんて、
ナンセンスですよ、社長。
ドラッカーは、企業の持つ機能は、
「マーケティング」と「イノベーション」である
としています。
・マーケティング=顧客からスタートする。
顧客の現実、顧客の欲求、顧客の価値から
スタートする。
マーケティングの出発点は
「相手が何を望むか」
「相手にとっての価値は何か」
「目的は何か」
「成果は何か」
であるとしています。
目的と成果は何か。
しかも、相手にとっての成果は何か、が
大切なんですね。
・イノベーション
=新しい満足と価値を生み出す。
イノベーションとは、
単に科学技術や技巧を指しているのではなく
組織の外にもたらす変化である、と
しています。
テクニックではなく、
ベネフィット(価値)が
ここでも焦点になっていますね。
ワレワレは、誰のタメの、何モノなのか。
<われわれの事業は、何か>
顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動
からスタートすること。
ドラッカーを読み解くにつけ、この
「顧客優位」の概念に尽きますね…。
顧客は誰か?
顧客はどこにいるか?
顧客は何を買うか?
いつ問うか?
「常に!」
とドラッカーは言います。
<われわれの事業は、何になるか>
環境変化は認められるか、
その予測を、事業についての
われわれの定義の中に、いかに組み込むか。
①人口動態 未来に対して唯一予測可能である
②経済構造 市場構造の変化
③今日の財やサービスで
満たされていない欲求は何か
<われわれの事業は、何であるべきか>
社会、経済、市場の変化を意識して、
イノベーションし続ける。
<われわれの事業のうち何を捨てるか>
いかにして資源や努力を投ずることを
中止するか?を決める。
中止の基準がある、撤退条件が決まっている。
これができてないと、
経営資源の投下が非効率になります。
この定義、ものすごく重要だと思うんですね。
これ考えないスタートアップは、
ポシャります、ってことです。
事業の目標設定の中心は
”マーケティング”+”イノベーション"
ドラッカーによれば、
目標設定は、
特にふたつの重要な意思決定を
前提としています。
それが、集中の目標と、市場地位の目標。
<集中の目標>
アルキメデスのいう「立つ場所」が、
つまるところ集中すべきところです。
これが、基本中の基本というべき
重大な意思決定であるとしています。
事業にとって「立つ場所」とは、
今はUSPやポジショニングといった現代語に
語り変えられていますね。
<市場地位の目標>
ドラッカーは市場シェアについて、
とても興味深いことを語っています。
トップシェアを取ることは、何より重大な使命。
でも、シェアを独占することに甘んじていたり、
市場の声に気がつかないフリをしたりしてたら...
市場から取り残される。
むしろ競合が揃っていて
供給者が複数の状況の方が、
市場全体が成長する。
…このヒントが活かせると、
革命的な商品サービスが生まれるに違いありません。
戦略計画!聞こえはいいけど、
どうすりゃいいの?
どれも、ドラッカーらしい現実的な表現ですね。
旅行に例えるなら、
地図を作成したあとは、
旅行計画を立てましょう。
でも、雨が降ったらどうしよう?ではなくて、
雨が降ったときにはこうする、を
いまから決めておきましょう、
ということです。
意思決定という言葉、大好物です(^^)
マネジメントは、その責務からして
必ず意思決定を行う。
違いは、責任を持って行うか、無責任に行うか。
経営者は、常に意思決定に迫られますが、
責任が持てる意思決定でなければ、
戦略は動かないんですね。
分かった。
分かったから、マネジメントって、どうやるのさ?
ドラッカーは、マネジャーの役割を
こう定義しています。
①生産体の創造
部分の総和よりも大きなものを生むこと
個々の活動のみならず、
全体の成果を見なければならない
②そのあらゆる決定と行動について
ただちに必要とされているものと
遠い将来に必要とされるものを
調和させていく
ドラッカーにとって、マネジャー共通の仕事は、
①目標を設定する
②組織する
③動機付けとコミュニケーションを図る
④評価測定する
⑤人材を開発する
であるとしています。
個人を見ながら、組織の全体最適を見る。
このプロセスでも、目標設定、組織づくりから
入っていますね。
マネジャー育成。
悩む経営者の方は少なくないのでは?
真摯さなくして組織なし!
いったいどうやったらマネジャーが育つのか…。
自分が管理しなくても、
管理が行き届くのか…。
組織が育つときの最も悩ましい課題ですね。
ドラッカーは、
組織の精神をこう表現しています。
①組織の焦点は、成果である。
②組織の焦点は、問題ではなく
機会に合わせなければならない
③配置、昇給、昇進、階級、解雇など
人事に関わる意思決定は、
組織の信条と価値観に沿って
行わなければならない。
これらの決定こそ真の管理手段となる。
④これら人事に関わる決定は、
真摯さこそ唯一絶対の条件であり、
既に身につけていなければならない
資質であることを
明らかにするものでなければならない。
興味深いのが、
できる人を選ぶのか、
やる気のある人を選ぶのか。
というポイントについて。
ドラッカーにとって、
根本的に大事なコンピテンシーは
「真摯であること」
と言っています。
前向きに、丁寧に、誠実に仕事に向き合えるか。
ここは、先天的な素質として求めたい。
ドラッカーは言います。
「真摯さなくして組織なし」。
やはり、人間も、「根」が大事。
根が腐っていれば、花も育たないですね。
人が最大の資産?
ドラッカーは、
人が最大の資産だ!
という性善説だけを語りたい訳ではないんです。
"人ってさ、正直、扱いにくいよね"。
事実、経営の立場で客観視すれば、
そういう存在だと言っています。
でも、
人が適切なマネジメントの上で
組織的に動くなら、
資産化できる。
とにかく実行あるのみ。
ドラッカーはその具体策について、こうまとめます。
①仕事と職場に対して、
成果と責任を組み込むこと。
②共に働く人たちを
生かすべきものとして捉えること。
③強みが結びつくように人を配置すること。
目標管理は、
短期的視点と長期的視点を持つこと。
有形の目標+無形の目標
(組織化と育成、
部下の仕事ぶりと態度、
社会に対する責任)
が必要と説きます。
働きがいを与える3つの条件とは?
その昔、ダグラス・マクレガーが
X理論、Y理論と名付けた理論があります。
X理論= 人は、怠惰で仕事は嫌い。
Y理論= 人は、仕事を通じて
自己実現と責任を欲する。
ドラッカーは、
Xはもちろん違うし、実は、Yも違うよね、
と説きます。
ドラッカーは、端的に表現すると、
"人って弱いから、組織化が必要だよね。
しかもしくみの中で
人が育てるようにしていくために、
育てる人もしくみで育てないとね。
人のやる気に依存して成果をあげようなんて
非効率、不確実だよね。"
ドラッカーのシステマティックな思考は、
人の管理もロジカルです。
IBMの事例では、「責任を組織化する」ことで、
生産性を大幅に向上させたとしています。
「適切に、任せる」ことは、
人を柔軟で研鑽的な
”仕事人"に向かわせる秘訣なのだと思います。
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...いかがだったでしょうか?
ドラッカーのマネジメントは、
自身の立場によって響くポイントが変わるので、
何度も読み返したい一冊。
あなたならどう活かしますか?
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