縹の地平:掛け合い集

SS未満の書き物、掛け合い集の記事。
プロフ作った奴らを実際に喋らせて、ちゃんと設定通りに動いてくれるか確認するテストプレイのようなものです。なので山なしオチなし。意味はあると信じてる。
随時追加していきます。

蒼樹うめ先生が『作ったばっかりのキャラクターは落書きでいろんなキャラと掛け合いさせて性格を深掘りしてる』って発言してたのを見てから、いいなーと思って始めました。
実際に「お前そんな挙動するの!?」ってなることが多いので、おすすめです。

登場キャラの詳細なプロフはこちら

1.名前(白藤, 鏑木)


 「よろしく。かぶらぎ、……」
 白藤の目線が名札を往復する。しばしの読み込み時間に気づいた鏑木何某が、慣れた口調で言葉を引き継いだ。
 「分かりにくいよね、読み方。下の方は……」
 「待って、大丈夫、読めるから。わたしも慣れてるし、きっと大丈夫です」
 チャレンジさせて、とまでは言わない。失礼に当たる。
 だが、強がるには些か過ぎた難問だ。
 『波示』
 問題文には、そう書いてある。
 大抵の場合、試験における難問には対策法が用意されている。その第一歩は問題のカテゴライズから始まり、名前の読みについてもある程度はこれが当てはまると白藤は考える。概ね以下の通りだ。
 ひとつ、漢字そのものの知名度が低い。選択肢そのものが提示されていない場合。
 ひとつ、漢字の組み合わせに珍しさが発生している。膨大な選択肢から答えを選び出せない場合。
 前者は見た目のインパクトを備えているものの、難度は思いの外に低い。というのも、難読漢字は得てして読みが少なく、読めない漢字など検索へかけてしまえば良いからだ。解決への手間が面倒なだけで、解決不可能な問題ではない。音訓の組み合わせ4から8種類までの間で好きなものを選べば良い。
 他方、後者は未解決問題となる可能性を含んでいる。辞書を引けば答えが記されている前者と違い、正解への道はひとえに解き手の解釈に委ねられるためだ。組み合わせから最もらしさを考えるのは機械の得意とする所ではないし、得意な人も限られている。
 さらに言えば、今回は、その組み合わせのどれもが珍しい響きだ。
 ハ、ナミ。そしてジ。
 ハジは人の名前になり得ないし、そんな呼び方をしてしまえば、言った私が恥晒しとなる。キラキラメソッドに従えば、パルスか、はたまたオシロスコープか。
 沈黙として許される時間は刻々と過ぎてゆく。しかし決定打は浮かばない。
 ええいままよと腹を括り、決め打ちを狙って、消去法で残ったそれらしい読みを口にした。
 「なみじ?」
 “み”にアクセントを置き、続く”じ”も尻上がりに。
 自信のなさからくる疑問系だ。なんとなく、人名に聞こえる。いささか強引な手にも感じるが。
 投げかけたボールが返ってくることはなく、短い静寂が流れた。耐えかねて目線を上げ、相手の顔を伺い見る。
 聞き届けたカブラギは破顔していた。
 察して、白藤の口角も吊り上がった。器用に、片側だけ。
 「ハジメ。鏑木、波示。よろしくね、リンドウさん」

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