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読んだもの観たもの_202407

仕事やら私生活がソーハードすぎて、久々のレビューです。夏季休業中に摂取したものと、最近ハマったものをまとめておきます。ネタバレを含みます。




勇気爆発バーンブレイバーン

ブルーレイ全2巻を購入したので、3回目の視聴をしました。
また、特典のアフターストーリーも読みました。アフスト、界隈ではめちゃ物議を醸しているようなんですが、自分は楽しく読みました。百合のオタクだからかもしれない。
アフスト感想は以下からどうぞ。ネタバレを含みます。


自分が過去に見たことのあるロボットアニメは『ゼーガペイン』と『ガンダムSEED DESTINY』の2作のみだ。

『ゼーガペイン』はメイン登場人物が容赦なく死んでいくし、『ガンダムSEED DESTINY』は基本的には登場人物同士が憎み合っていた。
そのため、登場人物同士(ブレイバーンとイサミはさておき)の仲が比較的よく、他者(デスドライヴズは除く)への強い憎しみもない、そんなロボットアニメを見るのは初めてだった。

『ブレイバーン』を見ながら、これがロボットアニメの熱い漢の友情か~~と思って観ていたが、腐女子の方のファンも多かったとあとから聞き、一緒に見た母上が「2話くらいからおや…?と思った」と言われ、自分のBLへの理解度の無さに泣いた。
イサミが可哀想な目にあうのはすべて「イサミかわいそう」「イサ虐」要素のひとつとして受け取ってしまっていた…。BL読んで出直してきます…。

だがブレイバーンには男性ファンも多く存在するわけで、常連ニキからはプラモデルやフィギュアの新情報を教えてもらえるし、同時視聴枠経由でブレイバーンを見始めた常連ニキも多くいる。
男女問わず人気のあるロボットアニメなので、「裸体の男がしぬほど出てくるアニメだよな…?」とホモソーシャルの気配を感じて足踏みしている未視聴勢はもったいないのでぜひ見てほしい。ただし人は選ぶ作品だと思う。

12話にも関わらずあれだけの要素を詰め込んで、毎回大どんでん返し、豪華な敵の声優陣、本当にすごい作品だ…と思う。
とくに8~10話の毎話の「えっっそうなんすか!?!?!」の展開にはとてもハラハラする。若い頃は鬱展開アニメが好きだった自分は、とくにこのあたりの話がとても刺さった。


※以下詳細なネタバレあり、二次創作に言及しています


かも仮面先生の描くキャラは最高にかわいい

10話のルルの秘密に関するシーン、今もどこかで「イサミもスミスもブレイバーンもルルもいない世界線」がずっと続いていることに、鬱展開好きはとてもときめいてしまう。

壊れていくロボットや人間のかっこよさは子どもの頃に見た『ゼーガペイン』で学んだ。

『ゼーガペイン』は「すべてのものはデータにすぎず、ダメージを食らいすぎた人間は跡形もなく何も残さず消えてしまう」というやるせない美しさだった。主要な登場人物も容赦なく死んだ。放送されていた2006年当時、まだ死ネタ作品はそこまで多くない時代だったから、ガキの自分はかなり衝撃を受けた。

皆のトラウマ「カフェオレが…飲みたいな…」

一方で『ブレイバーン』は色が失われ機械のコードが剥き出しになり、二度と動かないロボット、傍らには右半身を完全に潰されたように見えるパイロットであるイサミの亡骸が残っている。
つまりイサミを埋葬した別の人間や、ブレイバーンを解体した別の人間の存在が確かにあるわけだし、それを弔った人間もいるというのが、何か別のおどろおどろしさというか、もっと血生臭さを感じる。

右半身どこ…

この壊滅的な10話の世界線の続編『未来戦士ルル』はホビージャパンで連載中だ!ちなみに2024/7/9時点、Webから無料で2話まで読めるぞ!
負傷者多数、最終決戦たったひとりの戦死者イサミ・アオ。世界は大荒れだし暴動とか起きてるし、まじで地獄だ!!!


「世界線」ということばを何度か使ったが、『ブレイバーン』はタイムリープものの作品となっている。もうひとつ公式から提示されている世界線は、ファンのあいだで「複座軸」とよく呼ばれているものだ。

この世界線では「スーパーロボットであるブレイバーンが地球の危機を救うためにやってくることはなく、人間が今持てるそのままの技術力で、はるかに強い敵陣と戦わなければならない」という別の地獄をである。

ブレイバーンが描かれていない初期から発表されている以下のポスターは、この「複座軸」として描かれたポスターであることが、トークショーか何かの大張監督の発言で示されている。
ただしストーリーの中にほのめかす程度の表現はあれど、詳細が描かれているわけではない。

過酷な複座軸世界線

「複座軸」では、8話で登場する「ライジング・オルトス」という二人乗りの機体にイサミとスミスが乗り、ほぼこの単騎でデスドライヴズと戦うことを余儀なくされる。

本編ではライジング・オルトスは一瞬しか出てこない。なぜなら登場した瞬間にスミスとともに爆発四散し、クーヌスとともにブレイバーンの礎となるからだ。
そのため詳細は不明だが、座席前面にパイロット、その背面には「五感が優れたパイロット」が搭乗する必要があり、本編では前面をスミス、背面をルルが担当している。

背面に搭乗したパイロットの「脳波」を使うというちょっといかがわしい機体で、この仕組みを使ったロボットは作中にはライジング・オルトス以外に登場していない。脳波を使うロボットに乗ることによる副作用等も不明のため、ネットで見かける複座軸のファンアートはだいたい鬱展開だ。

イサミが脳波を使いすぎて鼻やら口から血を吐いているのがデフォだったり、それでもデスドライヴズと戦い、苦戦して肉体の一部を欠損しているものが多い。周囲の犠牲も多く、大怪我を負ってもなお唯一ギリ戦える俺たちが戦わなくてどうするんだ、と責務を全うしようと戦場に出るほか選択肢がない。
この複座軸は是非死ぬほど鬱展開な公式作品を見たい。OVAとか出ないもんいかな…。ぜってえ最高なのにな…。


最終回で全人類の命乞いをする男

だいぶ脱線して他世界線について話してしまったが、本編はそんな数多の鬱展開世界線を脱した、最もハッピーなエンディングを迎えているので安心してください。
犠牲が少ないわけではないが、「大団円」ということばがこれほど似合うエンディングはないなと思った。
(だからアフストめちゃハッピーエンドじゃん~~と思ったけど、前述の通りファンの間ではだいぶ物議を醸しているようなので、自分は少数派なのかもしれない…)


個人的にはイサミ役の鈴木さんという声優さんの演技が本当にすごくて感動しっぱなしでした。

まずは9話、スミスの死によって精神バキバキになってしまったイサミが、もう一度勇気を奮い起こして戦うときのシーン。
「そうだ!やってやる!この命ある限り…!」の、目ガン開きで多分変なアドレナリンだのドーパミンが出てハイになって、若干の「自分の命含めてもうどうにでもなれ」感が混じった演技が本当に最高だった。
自分は初見のときこの声を聞きながら「頑張れイサミ…!」という受け取り方とともに「おい…大丈夫か…いや大丈夫じゃねえなこいつ…もう死んでもいい精神になってやがる…」という2つ目の受け取り方があった。
この短い台詞の中で、いくつものぐちゃぐちゃな感情をすべて込める声を出しているのが本当にすごい。

そして外せない12話、ブレイバーンとスペルビアロスト後のイサミの狂気に満ちた笑いと諦念のシーン。これまじで初めて聞いたときぞわぞわした。
スミスの死後、謎のロボットとともにがむしゃらに戦い続けて、笑いのひとつもなかったイサミが唯一ボーンファイアのときだけ若干にこにこしたりして(まあ頭チルなので健全な精神とは言い難いが)、その後臨んだ最終決戦の地でもうどうにもならないと理解してしまって、緊張の糸というか精神の糸がバチンと切れてダメになってしまったかんじ。
これまでの人生であまりアニメを見てこなかったので声優さんにも詳しくなかったが、いやほんとすげえなこのひと、と思った。
トークショーでスタッフの皆さんからも愛されて、次の仕事のために離席する鈴木さんに「もっといてほしい」と監督含め皆が名残惜しそうにしているのもわかる…となった。
どういう人生を過ごしたら、あんな演技ができるんだろうな。まじですげえ…。

だいぶたくさん書いてしまったので一旦ここまでに。なにぶん情報量が多いアニメのために、同時視聴枠でもあまり話せなかったので、だいぶすっきりしました。

責任だったり立場だったり、そういったものに押しつぶされて、日々しんどい思いをしている人々への「人間賛歌(監督談)」な作品でした。ほんまええもん見せてもらいましたわ…




川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』

以下に、読んだ中で印象に残ったことばを記しておく。

・ニュース記事の見出しで「勉強をしない大学生」ということばを目にしたとき、「大学生全般が勉強しない」と受け取るか(非限定的修飾)、「勉強しないのは、大学生の一部である」と受け取るか(限定的修飾)
・「自分の頭の中で最初に浮かんだものを「たった一つの正しい解釈」と思い込む傾向があります」

・「世の中には、考え方が違いすぎるあまり、まったく対話ができない人たちがいることは確か」
・「その一方で、ものの考え方はそう変わらないのに、言葉の解釈の違いだけで対立してしまうケースも少なくありません」
・「言葉を「多面的に見る」ことが必要」「その際に役立つのは、曖昧さがどういうときに起こるかについての知識」

・「忖度」ということばにネガティブな印象が付け加えられたのは2010年の政治的な問題があってからのこと、「忖度」ということばを忖度すると気の毒
・「自分と他人の「頭の中の辞書」がまったく同じではないということを意識しておきたい」

・「日本人は~」「男は~」「女は~」等のクソデカ主語のことを「過剰一般化」という、ただしこれは発する側も受け取る側もどちらであっても陥りやすいもの
・「「実際になされた行為や、起こった出来事の方に注目して話をする」のは有効」

・「提喩(シネクドキ)」とは「特定の種類のものを表す言葉が、それを含むより広い範囲のものを表すような現象」、「今日の天気は雨だ」の「天気」は大気の状態を指し、「明日天気になあれ」の「天気」は晴天を指す
・「換喩(メトニミー)」とは「何かを表すときに、それに関係の深い物事の名前を使うこと」、政界を示す「永田町」、場所としての「永田町」

・「この世のすべての物事を違う言葉で区別することは不可能ですし、むしろ、細かい違いを無視して同じ言葉で表現することによって、円滑なコミュニケーションが可能になっています」
・「不明確性は、そういった便利さと表裏一体」
・「私たちがふだん何気なく発する言葉には、異なる曖昧さの要因がいくつも重なり、暗に膨大な解釈を生み出しています」

・「話し手と聞き手の協力関係をどう築くか」

「世の中には、考え方が違いすぎるあまり、まったく対話ができない人たちがいることは確か」だし、やべえやつらがこの本を読むとは思えない。そもそもやべえやつらは「話し手と聞き手の協力関係をどう築くか」とか考えていない。

クレーマー顧客は最初皆そういう状態だ。クレーマー顧客は、我々業者が発するすべてのことばに悪意があると思っていて、「悪意ナイヨー」と伝えるところからのスタートになる。それが順調に進んでようやく、何かを一緒に決められるようになる。




osogo『マリッジ・ゲーム』

女性なら一度は通過するだろう必修教科はすべて未履修です。少女漫画も読まず、アイドルにもハマらず、BLも読まずに生きてきた。プラレールで遊び、サッカーをし、ラジコンカーを走らせていた。

『ブレイバーン』で「BLの波動」的なものにまったく気付けず、母親に指摘されるという恥ずかしい目にあったので、最近BLを読むようになった。
BL目線で『ブレイバーン』を観ているかたがオススメしていた作品だったので読んでみたが、結構派手なアクションもので面白かったので紹介する。
記念すべき人生初のBL作品レビューです。

すごい端的に紹介すると、「××しないと出られない島(強姦も可)」「ただし凶悪殺人犯多め」「最後の2名にならないと全員死亡」のデスゲーム系BL。

主人公は2名で、1名は黒髪の男。警察官でたいへん優秀。毎話いろいろと大変な目にあっている受難の男。殺意がまるでないので、こんなデスゲームの最中にも「襲われなければ殺さない」という方針を持っている。
もう1名は金髪の男で、凶悪殺人犯。人間の殺意を感知する能力を持っていて、殺意が発せられている場所も特定できるが、この島に幽閉される直前、黒髪の警察官に捕まえられている。殺意がなさすぎて気付かなかったため。

参照:https://x.com/osogohan/status/1600503953829072898

島には30名の人間がいるが、金髪の男のような凶悪殺人犯も結構うじゃうじゃいるので、かなりさくさく人間が死んでいくし、殺し方も結構えげつない。
黒髪は金髪の特殊能力を、金髪は黒髪の生存スキルを、それぞれあてにするためにバディを組むことになるが、別に仲が良いわけではないビジネスライクな感じ(後半は金髪が黒髪に若干懸想しているかもしれない)。

「××しないと出られない島」なので、黒髪と金髪も一応やることはやっておくか~~と××するシーンがあるが、キスシーンとほのめかす程度の描写のみなので、BL未履修ネキには大変ありがたかった。
少女漫画未履修のせいで恋愛感情に対して全然理解が及ばない人間なので、××にかまけて大事なこと伝えてねぇな馬鹿野郎…!とか選択ミスってんだろクソが…!!と苛立つことはなかった。私は『冬のソナタ』のトレーラーだけでキレる人間です。

アクションシーンがかなりよいのと、絵がとても美しいのと、島に囲われたさまざまな人間のねばついた殺意だったりの感情描写がとてもよかった。
ビルとロニーの話と、サイモンとハリーの話が結構好きだった。命がやばいとき、人間はここまで何かを振り絞れるんだなと、デスゲーム主催者の目線で楽しく読んだ。




トム・クランシーの『レインボーシックス』も読んでる途中なんですが、まだ読了していないので、次回の記事で書こうと思います。ジョン・クラークかっこよすぎるぜ!!



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