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REITつらい

REITつらい。とてもつらい。

2023年第1四半期の東証REIT指数騰落率は▲5.72%とTOPIX(+5.91%)をアンダーパフォーム。REITなんか買わずに株買っていればOKだった。つらい。ちなみに不動産業もマイナスだけどREITよりマシ(▲1.13%)。つらい。
相場環境自体も盤石ではなく、アメリカのシリコンバレーバンク(SVB)の破綻で「すわ、金融危機か」という声も聞かれました。その後クレディ・スイス(CS)にも波及してUBSに合併されたりとドタバタです。
SVBもCSも、こうなったのは彼らだけの特殊事情であり、他の金融機関はリスク管理しっかりしているし、波及しないというのがコンセンサスでしょう。ただ、これらはインフレ退治の名の下で急速に行われた金融引き締めの副作用という一面もあるのではないでしょうか。アメリカではCMBSできな臭い話も出ていましたし、なんとなく嫌な予感がします。何事もなければいいのですが、金融機関が風邪をひくと、不動産は死の淵を彷徨いますから。

四半期パフォーマンスは以下の通りです。

ベスト5

  1. いちごオフィス +13.88%

  2. インヴィンシブル +9.22%

  3. コンフォリア +6.37%

  4. 大江戸温泉 +2.57%

  5. 平和不動産リート +0.53%

ワースト5

  1. 東急リアル ▲12.77%

  2. オリックス不動産 ▲9.92%

  3. タカラレーベン不動産 ▲9.86%

  4. 日本プロロジス ▲9.14%

  5. 阪急阪神リート ▲9.05%

トップパフォーマーは買収提案されたいちごオフィス、その他には割安感のあったコンフォリア、ホテル系でインヴィンシブルと大江戸などテーマはバラバラ。ワーストは決算発表で値を下げた東急リアル、なぜかオリックス、P/NAV1倍割れPOをやったタカラレーベン、年末にそこそこ大きなPOをやったプロロジスとこちらもバラバラ。強いて言うなら住宅ホテルがマシだった、という印象でしょうか。

三鬼商事のオフィス空室率については概ね予想通り、今四半期は低下傾向が見られました。そして、マーケット全体としても、それがオフィス市況回復の兆しとは見ていません。むしろ大量供給の本番はここからですから。海外オフィス市況も厳しいですし、オフィス銘柄はまだ耐える時間が続きそうです。
商業・住宅セクターについては特に言うことはありません。
物流はREITの業績は引き続き底堅いですし、定期的にPOを行なっている銘柄は市場の温度感を理解しているのもいいですね。金利上昇なんかに負けないでほしい。むしろ金利落ち着いたんだからもう少し浮かばれてほしい。
ホテルセクターについては、JHRの決算が悪い意味で意外でした。経費の上昇などによるGOPマージンの悪化もあるのでしょうが、業績回復ペースはマーケットの期待よりも少し遅かったのではないでしょうか。

J-REITマーケット全体では、P/NAV1倍割れでのPOが頻発していることが気がかりです。1月PO組はある程度仕方がない部分もあったのでしょうが(それでも良いとは言ってない)、3月PO組はこの相場環境を見て、引き返すタイミングは何回もあったと思います。わざわざ高い資本コストで資金を調達して、既存のホルダーにはダイリューション発生させて、それで買う物件は割安とまでは言えない。「P/NAV1倍割れのPOは全てクソ」と、そこまで過激なことは言いませんが、せめて資本市場の温度を感じて、もう少し自制した運営を心がけてほしいものです。でないと、無理なPOを懸念してREITのエクイティ需給面で難しい状況が続き、REIT全体への資金流入が期待できず、自分で自分の首を締めることになると思います。スポンサーの方ばかり見て運営してるから、いつまで経ってもREITをよく分かってない連中から「ゴミ箱」と言われるんですよ。ちゃんとガバナンス発揮しようよ。新宿三井ビル取得した時に「俺たちあんなことしないから!」って言ってた君はどこに行ったんだよ!

他に気になったトピックはいちごオフィスに対してスターアジアが仕掛けた投資主提案です。現時点では資産運用報酬の引き下げと、投資法人の執行役員、監督役員の交代のみですが、「いや、これ絶対そのうち合併提案してくるやつやん!」とみんな思っている。前回の記事でオフィスリートはM&Aが起きても不思議じゃない水準と書きましたが、さくら総合、インベスコ同様にしがらみがなく、仕掛けやすいサイズの銘柄が仕掛けられました。今後の状況にも目が離せませんが、他のオフィス銘柄がどのように動くかも注目です。REITの一番の買収防衛策は投資口価格を上げることですから、今の投資口価格の水準をマーケット要因だけと考えず、規律ある行動をしてほしいものです。

REIT全体はP/NAV水準で見ても割安ですし、株式との対比でも割安感が目立ちます。東証REIT指数/TOPIXで比較した倍率は大体長期平均で1倍から1.1倍のレンジですが、今は0.9倍ぐらいです。クレジット市場の不透明感から不動産を裏付けとする資産へのフローが滞ったとか、今まで不動産含めたオルタナティブ資産に機関投資家のウェイトが偏っていたのがアンワインドしているとか色々要因はありますが、ファンダメンタルズがぶっ壊れたとか、ファイナンスが詰まったとかそんな状況でもないのかなと思います。需給の調整が長引いてると見るなら、長期で見ればまあまあ悪くない水準じゃないでしょうか。でもホントにエクイティファイナンスはもうちょっと気を遣って。マジで。

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