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復活の狼煙か、崩壊の前触れか

年度末お疲れ様でした。今日から新年度ですね。

前四半期は思い返してみるとアメリカの利上げがどうなるの?という話からいきなりウクライナがロシアに侵攻されたり、不安定という言葉では足りないぐらい不安定な相場環境でした。利上げはある程度見込まれていたものの、QTまで言及されてやや雲行きが怪しくなると、拍車をかけるようなウクライナ侵攻、そしてエネルギー高、円安と。みんなが口をそろえて「スタグフレーション」「コストプッシュインフレ」と騒いでおります。

J-REITを取り巻く環境も正直良いとは言えません。教科書的には「不動産はインフレ耐性がある」と言われていますが、今後のJ-REITはどうなっていくのでしょうか。今四半期を振り返りながら僕なりの見通しを書いていきます。

今四半期のパフォーマンス

今四半期の東証REIT指数の騰落率は▲3.06%となりました。年初からダラダラ下げ、一時は1,800ptを割り込む場面も見られましたが、3月半ばからREITは上昇。2,000ptを回復して引けました。
銘柄別のベスト5、ワースト5は以下の通りです。

ベスト5
1. インヴィンシブル +15.93%
2. ジャパンホテルリート +10.85%
3. いちごホテル +9.78%
4. 大和オフィス +8.14%
5. ザイマックス +7.02%

ワースト5
1. 産業ファンド ▲16.75%
2. 伊藤忠アドバンス ▲13.71%
3. ラサールロジ ▲13.52%
4. プロロジス ▲12.41%
5. 日本ロジスティクス ▲10.94%

見事に物流が弱く、ホテルが強かったという結果になりました。昨年は大きく物流がアウトパフォームしたため、割高感があったとか、物流もREITの中ではグロース銘柄と言われているので金利上昇の影響を受けたとかが要因でしょうか。
ホテルについては割安感があったとか、海外のホテルはメチャクチャ好調だから日本のホテルもいずれそうなるという期待感とか、インフレヘッジという視点では、ホテルの賃料は大体業績連動だから、インフレをエンドユーザーである宿泊客に転嫁しやすく、ホテルは最もインフレに強いとか言ってる人もいるとか。ホントかよ。
日経新聞では「インフレヘッジのために住宅REITを買おう!」と言ってる。正気かよ。コストプッシュインフレの環境下では住宅こそインフレヘッジにならないでしょう。


重大ニュース

なんと言ってもKKRによるMCUBS買収でしょう。

三菱商事とUBSの合弁とは言え、ほぼプロパー社員で構成された組織なので、外資PEファンドが買ったところでそれほどオペレーションには影響がないのかなと思います。また、KKRもファンドからの出資ではなく、自前のBSで運用会社を抱えるということなので、MCUBSの持分を売却することにより、スポンサーが変更になるということも考えづらいでしょう。待遇が現状から大きく劣後することも無さそうなので、従業員がいなくなっちゃうこともないでしょう。しかし、KKRはPEの世界では超大手とは言え、日本の不動産マーケットではブラックストーンやローンスターと比べてソーシングが弱いということも事実。PE投資先企業から不動産が切り出され、それが産業ファンドに組み入れられることも期待しているということもあるでしょうが、これは少し時間軸が長い話になるのではないでしょうか。これからKKRが産業ファンド、都市ファンドというJ-REIT市場でも存在感のある2ファンドをどのように運営していくのか楽しみです。
…とか思ってたのに川崎ルフロンに鳴り物入りで入ったカワスイが民事再生だと!幸先悪いスタートになったな!
https://www.value-press.com/pressrelease/293201

今後は?

足もとでのREITの急上昇の要因は、「円安によるグローバルREITとの相対的な割安感に着目して海外投資家が買った」と日経新聞などでは言われますが、半分は正しいかなと思っています。「じゃあ円高になったら売られるの?」という問いも出てきますが、これも半分は正しいかなと。金利サポートが強い、ひいてはCapRateの上昇圧力が弱く、不動産価格の安定性がある中でグローバル対比での割安感があることが買われてる要因かなと。
なんで円安になっているかっていうとざっくり言えば日米金利差の拡大が要因。じゃあ何で金利差が拡大しているかっていうのは米国では利上げをするのに、日本では指値オペを実行するなど、金利抑制に動いている。この金利抑制はREITにとっては追い風で、REITは大体BSの半分弱を借入で賄っています。ざっくり2,000億円の資産を持っているとして、1,000億円の借入があるという計算です。乱暴な計算ですが、今借りている借金の金利が10bp上昇しただけで1億円利益が吹っ飛びます。なので、金利が上がらない日本のREITはコスト上昇の面でも安定的と見られている側面があります。
「インフレ耐性」というテーマではどうでしょうか。今は資源価格含め何でもかんでもモノの値段が上がる傾向にあります。古くから賃料は物価にスライドする性質があるため、不動産はインフレ耐性があると言われています。ですが、「だからREITを買おうぜ!」とは単純に言えないと思っています。
ファンダメンタルズが弱く、テナントの賃料負担力が上がっていないのに本当に物価にスライドさせて賃料を上げることができるのでしょうか。オフィス空室率は6%台で落ち着いてしまい、賃料下落傾向が続いている。住宅は今年のリーシングはやや好調だったものの、それでもリーシング費用を増やしたり、礼金減らしたり、賃料下げたりとある程度身を削りながら稼働を確保している。商業は前から賃料が上がっていない。ホテルはインバウンドが来ないから稼働もコロナ前までは戻りづらい。ヘルスケアはそもそも上げられない。唯一上げられているのは物流ですが、賃貸借期間が長く、入れ替えが頻繁にあるわけでもないので賃料上昇のペースは緩やか。そんな状況下で「インフレヘッジのために不動産や!」なんて言っている人は本邦不動産マーケットの何を見てそんなこと言ってるんでしょうか?

正直、大体のP/NAV 1倍ラインである1,850ptで買えば大火傷はしないよと思っていて、個人でもそのような行動をしていたのですが、この局面で2,000ptを超えていると、REIT全体何買ってもOKとは言い難い。セクターで言えば商業はまだ割安感があるとも思っています。フロンティアもイオンもケネ商も堅実なオペレーションしてますし。個人的にはホテルは気になっていますが、ホテルのバリュエーションはどう捉えていいか本当にわからない。誰か教えて。

でも、一時は減損回避の売りがあるかなとビクビクしてたけど、何事もなくてよかった。新しい年度はコロナも国際情勢も落ち着いて、心穏やかに過ごせるといいですね。

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