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久々のREITのIPO

REIT指数が絶好調です。こんにちは。

正直ここまで上がるとは思ってなかったです。ヨソウガイデス。FTSEのインデックスイベントが6/18に控えているので、プレポジションの買いが出ていると見られますが、そうであるならイベント当日に大きく下がる可能性だけは頭の片隅に入れておきたいものです。

さて、昨年は1件もなかったREITのIPOですが、2021年1発目が出てきました。
その名も「東海道リート投資法人」。名前的にはなんか良さそう。わかりやすい。
スポンサーは静岡地場の建設・不動産会社の「ヨシコン」。エスコンみたいな名前してるな。
コンセプトは「静岡を核とする産業地域への重点投資」とあります。なるほど、福岡リートの静岡版みたいな感じですね。運用会社の社長も静銀から来てる人だし、オール静岡でやっていこうということなのかな。でも、銀行出身者にREITの運用会社の社長がキッチリ務まるかは少し疑問。経歴を見ても99年11月に銀座支店の次長になって以降、08年に「東部カンパニー営業推進担当部長」という謎の役職になっていることを除けば、支店畑をずっと歩んでる。不動産アセットファイナンスの知見がめちゃくちゃある経歴とは言い難い。資産運用会社の社長はIRなどで投資家を回ることも多いし、説明会では虐めてくるアナリストもいるから耐えられるかな。少し疑問です。あ、ヒューリックリートは銀行出身者か。でもヒューリックの風に当たるのと当たらないのでは違う気がする。ヒューリックの風に一年あたれば立派な戦士になれそう。

では、取得するポートフォリオを見ていきましょう。
取得物件の中で最も大きい物件は「浜松プラザ」。ん?浜松プラザ?

生きとったんかワレ!元々積水ハウスリート(合併前の積水ハウス・レジデンシャル)が保有していた物件ですね。もっと言うとジョイントリートが持っていた物件ですが。長いこと含み損を抱えていたし、当初のテナントであるイトーヨーカドーが閉店したりと色々大変な物件でした。スポンサーの積水ハウスに一部売却し、コストコ入れたりなんとかバリューアップをして無事EXITに至りました、めでたし、めでたし。
そんな物件がゾンビのようによみがえってきた!ほぼ底地のアセットとは言え、キャップレート4.7%ねぇ…。ちなみに最終売却時の積水ハウスのキャップレートは土地・建物の部分は5.8%、底地部分は割引率4.7%となってます。

2番目に大きい物件は「いなべロジスティクスセンター」。なんとテナントは世界のTOYOTA!これは世界有数の賃料負担力だ!賃料上げまくってバリューアップだ!じゃあ既存の賃料は…非公開と。なら推測しましょう。鑑定NOIは394,835千円、物流REITの公表されている物件の経費率の平均は約15%。
つまりNOIから推定される賃料は394,835千円÷(1-15%)≒464,512千円となります。これを月額賃料に直して賃貸可能面積で割ると月あたりの賃料は約1,200円/坪と推察されます。

…やっす!!!世界のTOYOTAおなじみのカイゼン来てますやん!CBREの名古屋圏の実質賃料指数は3,590円/坪だよ!公表されてるベースではREITの名古屋圏の物件では月坪2,000円はおろか、3,000円すら切る物件ないんだよ!?築年数経ってるとか、物件のクオリティが違うとか、現時点では高速のインターチェンジから結構遠いとか他の物件と差はありますが、それにしても安い。
大丈夫かな。定借期限でちゃんとトヨタ相手に賃料上げてって言えるかな。絶対借りてるトヨタの方がパワーあるよね。むしろ「KAIZEN」喰らって月坪1,000円切っちゃったりしないよね?アップサイドありますと言うには少し不安。

じゃあこのREITのいいところを考えてみましょう。
なんといっても賃料収入の下方硬直性ということが一番のメリットでしょう。物流は定借、底地もある、オフィスや住宅では賃料固定型MLを行っている物件もあり、60%以上の物件で賃料がFIXされています。コロナショックみたいな有事には強いポートフォリオとは言えそうです。また、IPO価格ベースでは予想分配金利回り(2期+3期のベース)は6.4%と今のREITの平均配当利回り3.4%から考えるとかなり高利回りと言えます。

デメリットはその裏返しで、内部成長によるアップサイドがないということです。底地での内部成長は絶望的、物流は定借期限次第ですがまさか残存期間が1、2年ということはないでしょう。この2物件で投資比率約60%を占めているので、内部成長でどんどん分配金が伸びていくという絵は描きづらい。

じゃあ外部成長できればいいんですよ。でも目論見書には具体的なパイプラインなどの記載はない。ヨシコンの開発力についても少し疑問。この辺りエクイティストーリーをどう描いているのか不透明な部分は目立ちますね。

今上場している銘柄との比較では、やはりエスコンジャパンが比較対象となる印象です。エスコンジャパンも底地が多く、CFの構造が似ています。スポンサーの名前も似てますし。エスコンジャパンのバリュエーションはP/NAV1.18倍、利回4.9%、時価総額401億円。なんとなく外部成長して分配金の成長が出来そうなバリュエーション。一方、東海道リートのIPO実施後の時価総額は大体170億円ぐらい。利回りは良いですが、サイズが小さいことがネックですね。あと、エスコンジャパンは私募の時から関西の信金勢と堅固なリレーション築いていましたが、東海道リートにはそういった安定投資主が存在するのでしょうか。同じぐらいのバリュエーション狙えますとは中々言えないかなと思います。

総括すると、なかなかにエッジの効いたIPOという感想です。でも、REITは今後エッジの効いたIPOが増えそうですね。だって普通に物件取得しようとしたら価格は高いのに、REIT投資家の利回りの目線はなかなかに厳しい。となると、エッジの効いた物件を入れて利回りを作らざるを得ない。まあ今まで証券化されなかったアセットタイプにも注目が集まればREITの裾野が広がるんでしょうけど、今まで投資されてない物件はそれなりの理由がありますからね。新しい世界が広がると思えばポジティブなんだけど、クソ物件が組みこまれるのだけは勘弁してほしいものです。ネタ的にはいいんでしょうけど。突き抜けてクソならクソ物件オブイヤーのネタにもなるし。

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