オール1の落ちこぼれ、教師になる/宮本延春

「オール1の落ちこぼれ、教師になる。」

最初に本のタイトルを見た時、「本当にこんな人っているの?」と疑問に思っていました。
筆者の宮本延春さんは私立豊川高校で教師をしています。
宮本さんは最初の授業ではこんな話をするそうです。

黒板に国・数・社・理・英・・・と全ての教科を書き、その下に全て「1」の数字を付け加えます。

宮本さん「これ一体何を意味するか分かるか?」

生徒「へ、この先生何を言いたいんだろう。」

宮本さん「これは俺が中1で最初に取った成績だ。」

生徒「え、マジで。嘘だろ。じゃあ先生はその後一生懸命勉強したの?」

宮本さん「中学最後の成績も書くけどそれも驚くぞ。」

音楽と技術は「2」、それ以外は「1」の数字を書いて行きます。

生徒「先生ってマジでバカじゃん。俺の方が頭良いよ。」

宮本さん「このクラスには俺よりバカな生徒は1人もいない。みんなにはそれだけの可能性があるから絶対にあきらめないでほしい。」

宮本さんは36歳で高校教師になりましたが、そこに至るまでに波乱万丈の過去がありました。

幼い頃は体が小さく内気で無口な性格であったため、友達が作れずひとりぼっちでした。
小学校に入ると壮絶ないじめと極度の勉強嫌いに悩まされ、次第に意欲を失っていきました。
中学ではそれらがエスカレートして、オール1を取るほどの落ちこぼれになりました。
漢字は名前しか書けない、英語の単語はBOOKだけしか知らない、九九は2の段までしか言えない状態でした。
当然ながら行ける高校はなく、中学卒業後は職業訓練所を経て大工見習いになりました。
そこでも親方からいじめに遭って2年ほどで退職し、それからはあちこち職を転々としました。
さらに追い打ちを掛けるように両親が亡くなり、18歳にして天涯孤独になりました。
ここまで来たらその後は暗闇の人生まっしぐらかと思われました。

23歳の時に転機が訪れ、付き合っている彼女にアインシュタインの相対性理論のビデオを渡されました。
そこで見たのはこれまでの人生観をひっくり返すほどの美しい世界でした。
大学に行って物理を学びたいという目標が生まれ、小3のドリルから勉強をやり直して、24歳で豊川高校の定時制に入学しました。

豊川高校では教育熱心で生徒想いの先生方との出会いがあり、そこで一生懸命に勉強に励んで難関の名古屋大学に現役合格しました。
過去にオール1から名古屋大学に合格した前例はなく、翌日の朝会で大きな話題となり新聞にも掲載されました。
励ましの便りがたくさん送られ、中には学費に使ってほしいとお金を送った人までいました。
その時、宮本さんはこれまで社会の荒波に揉まれてきたけど、世の中には温かい人もいるんだと甚く感動したそうです。

27歳で名古屋大学に入り、博士課程修了までの9年間物理の研究に没頭しました。
研究の道に進むことも考えましたが、母校・豊川高校の先生方のように教育に携わりたいという想いがあり、教師になることを決意しました。

ここまで色々書いてきましたが、宮本さんはまさに奇跡の人ですね。

教師をやる人間は比較的成績優秀なイメージがありますが、宮本さんは全く真逆な人生を歩んでいます。
その分、自分はいじめ、勉強嫌い、引きこもりなど全ての悩みが分かる教師だと語っています。

もし学生時代にこういう教師に出会っていたら人生変わっていたかもしれません。

生きていて「どうせ俺なんてダメだ。」とか「私なんて何の取柄もない。」とあきらめムードになってしまうことは決して少なくないと思います。
そう思った時にはぜひこの本を手に取って読んでほしいですね。

 

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