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救済(クトゥルフ神話TRPGシナリオ)

ホラー+謎解きのクローズドシナリオ

形式 クローズド
推奨人数 1~3人
プレイ目安時間 3時間
推奨技能 目星、聞き耳、コンピューター技能
難易度★★★☆☆(中級者向け)

本シナリオのテーマ


plと探索者のリンクを大事にし、非日常的な恐怖をリンクして味わってほしい。
そして、謎解きの爽快感と大きな壁を超えていく勇気と感動を味わってほしい。
その思いを込めて書きました。

本シナリオは2パートに分けられます。
一つがシナリオをプレイしていた『現状』から『異常空間』へて移るするプロセス。
もう一つが『異常空間』から脱出するプロセスです。

改変はご自由にどうぞ!

シナリオの把握

○全容

ニャルラトホテプに忠誠を誓う桜井哲平(45)は恐怖を集めること、人間の叡智を超えるための実験としてニャルラトホテプの力を借りながら人体実験を行う。
その過程で娘である桜井七海(12)を巻き込み、化け物にする(人智を超えた神話生物化)。人間の魂を取り込まないといけない体にするが、七海は食べることを拒絶する。
仕方ないので、哲平は実験に失敗した餌を直接七海の胃袋に送り込むも、七海は拒絶。
仕方ないので、クトゥルフに一定の理解を示す人物を贄として探し、転送することで探索者らが勝手に餌になるように仕向ける。(クトゥルフ神話に造形があるため、術にかかりやすいのが理由)
人の味を覚えさせようと策を張り巡らせたタイミングでニャルラトホテプが哲平を正気に戻す。
哲平は自責で耐えられなくなり自殺。
探索者は催眠にかかった状態でシナリオが開始する。

○Aパート

探索者が各々の部屋にいる幻覚をみせられている。
巻き込まれた探索者を起こそうと、七海が幻覚に干渉し起こそうとする。
数々の怪奇が部屋の中で起きるが、それは探索者を起こすための優しさである。
上手く探索者を誘導し、Sanチェックを誘発して欲しい。
発狂or何回かのsanチェックを挟むとbパートに移行する。
タイムリミットは7回の鐘がなったら。
これはbパートへと引き継がれる。

○Bパート

少女の腹の中だが、部屋の造形をしている。実際に探索部分はここから始まる。
bパートに移行した時点で遅効性の毒が体内にあり、それを解毒しないと脱出した時点で死ぬ。
数々のギミックがあり、それが連動することでシナリオのエンディングが分岐する。
タイムリミットは7回の鐘がなったら。
これはaパートから引き継ぐ。

kpとして1番気をつけるべきはギミックの把握である。
また、NPCがかなり重要なため、その役割を忘れないこと。


エンディング条件

バッドエンド1 タイムオーバー 
バッドエンド2 解毒せずに脱出
ノーマルエンド 解毒し、脱出口から脱出
グッドエンド  抵抗剤を飲んだ上で鐘を7回待つ(NPCを1人でも殺害)
トゥルーエンド 抵抗剤を飲んだ上で鐘を7回待つ(全員生き残る)

NPC紹介

桜井哲平(45)

本シナリオの元凶。ニャルラトホテプに魅入られたがために不幸になったサラリーマン

桜井七海(12)

今回のメインキャラであり、ステージでもあり、救済すべき存在。
哲平により神話生物化した。
常に食欲に抗っているが、理性があるため常に抗っている。抵抗中のため深くpl達に干渉できない。

ニャルラトホテプ

超美男子の青年。見た目は20くらい。
常に探索者及び桜井親子の様子を楽しそうに見ている。エンディング時のみに登場。

hal

脳みそをpcに接続された元物理学者。 
最初はバグに犯されていて、カタカナかつ端的な情報しか言えない。
バグを直すと困った時にアドバイスしてくれる存在になる。(kpの補助的な役割)
※脳みそだけなので外は確認不可
※親しみやすく、好感度をあげるように
※バグがあるのは自我が崩壊しないようにとの七海の配慮

熊の人形

体は人形だが、実は人間を超越出来た存在。
卓越した技術、怒りを沈める感情操作、コンピュータープログラミングへの造形などなんでもできる。
基本的にNPC間のトラブルは全てこの人形が解決できる。
殺伐とした鬱シナリオに現れた癒し枠。
会話は人形のため不可、身振り手振りで対応。halのキーボードを使えば会話可能かも。
※全力で可愛いロールプレイング推奨

絵画の男

体を持たず、絵の中に実体を入れられた人。
最初の実験体であり、実験体のnpcの役割を1番よく理解している。
熊の人形の役割、鍵の位置などを知る。
最初は極端にシャドウを恐れていて、最初は精神が崩壊していて話せない状態。
惚れやすく、appの高い異性を見ると口を開く。蝋人形の姿を話術に入れながら話すと口を開く。精神分析でも口を開く。

シャドウ

精霊化するものの、凶暴さだけが残った存在。対話してなだめるには熊の仲介が必要。
タイムリミットである鐘の音がなる事に部屋の隅から出現(bパートのみ)
こいつを倒すとトゥルーエンドにいけなくなる1番難しい謎解き要素かも。

hp 10
Dex15
噛み付く 1d3

☆導入

探索者たちは皆でクトゥルフ神話trpgを楽しもうということになり、それぞれの家の部屋で各々pcを開きながら楽しむことになる。
シナリオのタイトルは「救済」という。
ネットでの評価は高く、投稿サイトのランキングでは上位に入ってたので、これをみんなで楽しむことになった。
通話で話をしながら、このシナリオをみんなでプレイすることになる。


※聞き耳を探索者にふらせる
失敗→一瞬耳鳴りがなった。
成功→かすかな人の声がした気がした。

※個チャでsan対応をそれぞれ行い、メインチャットではそれぞれのキャラが通話している設定。


※kP用状況説明

この状態ですでに少女の腹の中に転送された状態である。
夢を見させた状態でいることで、徐々に精神が溶けていき、少女の栄養になる仕組みになっている。
ここから先は少女の手によって催眠状態を覚醒させようとする。
そのために、様々な幻影が見え始め、san値が削れていく。
san値チェックが数回(3回が目安)入ると催眠状態から解放へと向かい始める。

※家の中から出ることは絶対にできない。
※インターネットや電話などはつながるが、それはあくまでも幻影が見せている情報である。
※『救済』のシナリオに関するネット情報などは詳しく出てこない。
※発狂or数回のSancで目覚めイベント発生


☆怪奇ポイント

①水回り

蛇口をひねっても水は出てこなかった。
故障したのかと一瞬思うだろう。
そして、暫しの時が流れた直後のことである。
「ポトリ」
水音を立てながら薄赤色の液体が蛇口からしたたり落ちていく。
赤い水滴は徐々に落ちる周期を増していき…
やがて、一つの赤い水流を作り出していく。『これは血である』
探索者は直感的にそう思うだろう。
流れる血流はどんどん色が濃くなっていき、ドロッとしたものになる。
見ているだけで緊張と恐怖で冷や汗をかくだろう。
徐々に腐臭が増していき、鼻の奥を刺激する。
蛇口はいくら止めようとしても滴り落ちる血が止まることはなかった。

sanc 1or1d6


②押し入れ


目の前の押し入れに注目した直後のことだった。
押し入れが「がた、がたと」音を立てながらゆっくりとゆっくりと隙間を開けていく。
勝手に開くわけもないのに、押し入れは徐々に動き続けるのだ。
中は真っ暗で視認できない。
部屋の明かりなど差し込む様子も全くない。
して、握り拳が三つぶんほど入る隙間になった時であった。

すっと奥から人の手が伸びてきた。

細く、小さな、骨が浮き出た手が二本、ゆっくりとこちらに向けて伸びてくる。
しかも、伸びてくるてはそれだけにとどまらなかった。
筋肉質な手、華奢な手、赤ちゃんの手、老いて骨が浮き出る手などが何かを探すように、隙間から手を伸ばす。
「ドン」「ドン」「ドン」
手が乱暴に動き回る。
手は一定の時間、何かを探すようにうごめいた後、次から次へと押し入れ奥へと消えていく。
そして、最後の腕が消えるとにガンと音を立てて押し入れは閉まっていった。

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③トイレ

トイレで用を足そうとしたかもしれないが…
今眺めている光景を見ると、とてもではないが、そんなことを思う事は出来ないだろう。
長い黒い髪の毛がトイレの底から這い出るように伸びていて、便座部分をすべて黒く覆っていたのである。
座れる場所など到底ない。
しかも、黒い髪の毛は縮れており、うねうねとうごめいているのである。
まるで生きているかのように毛は動くではないが。
その光景に身じろぎをし、音を立てた直後だった。
髪の毛は一瞬動きを止め。
そして、伸びていた髪の毛が急速に便座の奥底へと消えていったのだ。
恐る恐る便座と向き合っても、そこには髪の毛は無いだろう。
その光景が夢ではないことは一本だけ床に切れた落ちた異様に長い髪の毛が証明していた。

Sanc 1or1d6


④床


床の隅に注目すると人の口がいくつもうごめいているのに気が付いた。
口は閉じていると床の模様に擬態しいるようで、一瞬何があるのかは気が付かないだとう。
しかし、よく見ると確かに人の口が床から浮かび上がっているのだ。
ふいに、近くにハエが飛んで行った。
すると、床から浮き出た口は開き、舌を伸ばしてハエを捕まえる。
そして、ハエを瞬時に口を閉じ、咀嚼する様子を見てしまうだろう。
生理的な気持ち悪さと、そこで見た異様な光景にめまいがする。

sanc 1or1d6


⑤冷蔵庫


冷蔵庫の中を開ける。
そこには見覚えのない小さな瓶詰が所狭しと沢山並んでいた。
その瓶詰には緑色の液体で満たされており、一つ一つの瓶には目玉が浮かんでいた。
瓶の中からはコポコポの水泡が便底から湧き上がっていく。
そしてあなたの存在に気が付いたのか、目玉は一斉にあなたの方を向く。
瞳孔を開き、目の欠陥を赤く充血させ、ただただあなたを見つめるのであった。

sanc 1or1d6


⑥洗濯機

いつ洗濯したのかわからないが『洗浄完了』との表示がされていた。
中身を見ようにも、なぜか透明のはずの部分の蓋は黒いガムテープで覆われてみる事が出来ないだろう。
あなたが近づくとロック中であった表示が解除される。
「ガチャリ」
それはまるであなたを誘うような音であった。

恐る恐る中を開けてみると…
洗濯機の中には内臓がぎっちりと洗濯機の中に詰まっていた。
心臓、肺、胃や腸などの臓器の部位が洗濯機の中に詰め込まれていたのだ。
しかも、これらの臓器はそれぞれ血管が動いており、脈打っている。
ゆったりと中を回っていて、血なまぐさい匂いが鼻に伝わる。
不快感が胃に押し寄せ、吐き気を催すだろう。


sanc1or1d8

⑦引き出し

引き出しを開けると思わず声が上ずるだろう。
そこには大量の指が動いているのだ。
しかも底が見えないほど大量にあるのだ。
それらは芋虫のようにくねくねと這いずり、まるで自我があるように動き回る。
指がうねうねと引き出しの底を見えないぐらいに覆いつくし、その場を這いずり回る姿には身震いがするだろう。
部屋の光が差し込んだからか、音にびっくりしたのか…
その動きは一斉に加速し、肌色の指がカサカサと激しく動いていった。

sanc 1or1d6

⑧玄関

玄関の扉を開けようとする。
鍵は開錠出来るものの、扉を開く事はなぜか出来なかった。
何者かに強く押さえつけられているような感覚を覚えるだろう。


除き穴を通じて扉の外を見るとフードを被った男が一人、目を下に伏せるようにじっとそこに立っていた。
表情はフードに隠されていて見てない。
その男の姿にはいくら過去の記憶をたどっても、まったく見覚えが無いだろう。
ただ、その男は扉をがっちりと押さえつけるようにドアノブを固く握っているのは確認できた。


声を必死にかけると男がこちらを見上げた。
案外普通の中年の男の姿であった。
年は40台後半だろうか。
こちらを見るとにっこりと微笑む。
その後また下を向き、ただドアを強く押さえつけるのであった。


⑨窓


窓を開けようとしてもピクリとも窓が動かない。
風が強く窓を打ち付け、がたがたと窓は音を立てるのみである。
窓を見つめると薄暗くなっていき、外は真っ暗に変わっていく。
やがて、ドンドンと窓をたたく音が鳴り始めた。
最初は小さく。
やがて、大きく音を鳴らし始めていくのである。
徐々に窓は黒黒とした液体を滴らせながら、窓を覆っていく。
ドンドンドンと窓をたたく音は激しさを増していき、黒い液体は窓をくまなく覆い、外の風景は見えなくなってしまうだろう。
やがてすべての窓の外の景色が黒い液体で完全に覆われ見えなくなると音は次第に止んでいった。
よく見ると黒い液体の流れる窓の跡に鼻や口の跡がべったりとついていた。

sanc 1or1d6


⑩万能シチュエーション


急にノイズが聞こえてきて、違和感を感じるだろう。
耳を澄ませると、少女の声がした。
その雑音の中から小さな声を聞き取る。
「こっちに来ちゃダメ」
その声を認識すると、視界が急に暗転する。
意識が闇の中に呑まれていく。
目が徐々になれていると、闇の中から近づいて来る触手の存在を認識する。
それはずる、ずる、とこちらに来てくるではないか。
大人一人分の大きさはありそうな黒色の触手があなたに向かって伸びていく。
全く抵抗は出来ない。
金縛りにあったように、あなたはこの場から動けなかった。
やがて、それはあなたの体を粘液を滴らせながら這い、体をゆっくりと這い上がる。
そして、圧迫感を増していき、体を締め付けていく。
骨がきしむ、肉が悲鳴を上げる。
徐々に意識がもうろうとし始めた後、ふっと我に返るだろう。
今までと同じ場所にあなたはいた。

sanc 1or1d6


⑪万能シチュエーション2


急に息が苦しくなっていく。
首筋に大きな違和感を覚えるだろう。
その違和感は次第に傷みと苦しみへと変わっていく、
のど元に圧迫感を感じ、首の血管が押さえつけられるような感覚がする。
呼吸が出来なくなる。
脳の思考が徐々にぼんやりと変わっていく。
やがて目の前の光景がかすみがかった時…
空気を吸い込めるようになり、意識を覚醒させる。
首筋には赤みがかった手のような締め付けられた跡が残っていた。

sanc1or1d6


⑫台所


台所に立った瞬間、その場から動けなくなってしまう。
金縛りにあったように意識だけがクリアーになる。
そして、目の前に包丁がゆらゆらと空中に浮かぶ。
刃先をこちらに向け、漂い、あなたの腹部にまで移動していく。
やがて、包丁の先の刃の部分があなたの腹部を圧迫していった。
刃が勢いよく腹の中へと吸い込まれていく。
不思議なことに傷みは無かった。
やがて腹部に入り込んだ刃はやがて腹を横にスライドさせていく。
綺麗で美しい肉の断面図が腹から見える広がっていくびだ。
断面部からは切られた腸がだらりと切断部分から垂れ下がっていった。
臓器が体の中から徐々にしたたり落ちる。
それはあなたの陰の中に吸い込まれていき…
意識が覚醒する。
ふと自分の腹を確認すると服に横一文字に鋭利な刃物で切られた跡が残っていた。

sanc1or1d6

⑬万能シチュ3


通話中に聞こえる人の吐息。
おかしい。
ここで話しているのは○○人のはずだ。
確かにメンバーを見て○○人のアイコンが点滅している。
しかし…
耳を澄ませていると聞こえてくるのだ。
ここにいるはずのない子供の吐息が。
緊張で楽しく会話しているはずの声が上ずる。
そして、どうしても気になってしまい、耳を澄ませてしまう。
これは気のせいなのか?
金縛りにあったかのように体がこわばるが、なぜか惹かれてしまうように意識を集中させた。
楽しい会話中、必死にその声の主をさがした。
しかし…吐息は聞こえなかった。
ああ、なんだ気のせいだったのか。
そう思った瞬間、人の声が耳の後ろから聞こえてきた。
「○○○○」
聞き取れないボソリとした声。
居ないはずの耳元から誰かの声が聞こえてきたのだ。

Sanc 0or1d4


※『救済』のシナリオについてわかること

内容は脱出系のシナリオである。
探索者たちは閉じ込められ、そこから脱出する物語である。
黒幕としてはニャルラトホテプがいて、特にその描写が素晴らしくもあり、残酷的でもあった。

製作者を検索すると、どうやらこれが処女作のようだ。
しかし、その完成度は恐るべきものがあり、非常に凝った作りになっている。
初心者が作るにしてはよくできたシナリオだ。

☆目覚めイベント(数回Sancor発狂)


見えている世界の輪郭が徐々にぼやけて見えてくる。
まるで夢の中をさまよっているかのようだ。
声がした。
それがどんな声かはわからないが、心地よいものだと感じるだろう。
そして、徐々にピントが合うと違和感を覚える。
机の上には動物の皮で装丁された分厚い本が置かれていた。
その本にはあなたは見覚えが無いだろう。
どうやらうす茶色でしわの寄った作りになっているようだ。
タイトルには『目覚めてください』と書かれていた。


※『目覚めてください』の本を手に取り、それを読んでみる。

中の文字は全く何が書かれているのかを理解できなかった。
しかし、体は大きく揺れ、どうしようもない吐き気が体の底から出てくる。
しかし、吐くことが全くできない。
圧迫感と不快感にさいなまれていると、目がくらみ始め意識がもうろうとする。
誰かの声が聞こえてきた。
「鐘の音が7回なる前に出て」
聞き覚えのない声だった。
そして目を覚ますとあなたは自分の部屋にいなかった。


※plは携帯やメール、通話などで会話が可能。
しかし『目を覚ましてください』の本を読むと完全に連絡はとだえる。

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ここから先は謎解きパート(bパート)に入ります。
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Bパート

机にうつぶせになるように、椅子に座りながら寝ていたらしい。
ふと目が覚めてあたりを見渡す。
悪夢から覚めた時のように、反射的に目を見開き、周囲を眺めていく。
とても不思議な光景だった。
全く生活感のない部屋の中にいて、更には奇妙なものがひしめいていた。
天井は宇宙の光景が彩られていた。
床は黒と白の四角いモザイク模様のタイルで構成されている。
壁は白いコンクリートでできている。
とにかくすべてがちぐはぐで関連性がない。
周囲をよく見渡すと非常口のような扉がある。
そして辺りを見渡すと男の絵画、本棚、引きだしのついたタンスなどがあった。
小さな熊のぬいぐるみがボールを転がして追いかけながら遊んでいたり、非常に精巧なつくり女性の蝋人形が椅子に座っている。
一番目を引くのは同じ机の端にある大きな脳みそだろう。
こぽこぽと水泡を底から湧きあがらせながら、大きな缶のなかに脳みそが浮いている。
それは一種の装置になっているようで、沢山のケーブルがpcにつながっていて、モニターに接続されているようだった。

見知らぬ場所にいることに強烈な違この光景に異常な和感をもった探索者は
sanc0or1


※ほかの探索者がいる場合は合流。
ほかの探索者が夢の中にいる場合は机の上にうつぶせになるように寝ている姿をみる。
それは決して起こすことができない。
徐々に床に埋もれていく。


~探索箇所~

・長机
・本棚
・掛け時計
・非常口
・引き出しのついたタンス
・絵画
・熊の人形
・脳みそとpc
・蝋人形

○天井

天井を仰ぐと、そこには無数の星々が描かれていた。
宇宙の光景が描かれていて、とても綺麗に感じるだろう。

※天文学
星の並びや配置から地球からでは観測できない星々を描いていることがわかる。
空想にしてはよく出来すぎていることから、それが本物であると分かる。

○長机


白い長机の上をよく見ると見覚えのない紙が各人数分裏返しで置かれていることに気がつく。
それは自分たちのデータであり、キャラクターシートがそのまま置かれていたのだ。
自分達のデータが緻密に書かれていることに気持ち悪く思うだろう。

Sanc 0or1

○非常口


壁沿いには白い扉があった。
頭上には緑と白で描かれた非常口のようなマークがある。
しかし、それは普通のものではなく、ゴスロリの服を着た少女がスカートの両端を掴み、挨拶するように描かれていた。
扉の入り口には張り紙がはってある。

「出口です。
出たら戻れません。
注意してください。
毒は抜きましたか?」

※張り紙の裏を見る

「暴力は良くないよ、壊すのは良くないよ」
と書かれていた。

○本棚

木で作られたアンティーク調の本棚だ
中には日記が沢山しまわれていた。
桜井⚫⚫と黒く塗りつぶされた名前の絵日記が書いてある。
5歳ぐらいから始まっており、その場で見たことや感じたことを年相応の文字や絵で毎日書かれている。
内容はごくごく平凡な家庭の風景であり、幸せなんだなということがよく伝わってくる。

※図書館
しかし、日記の最後の方になるとどうも様子がおかしくなっていく。

※目星
レコーダーが本の影に隠されていることに気がつく

【音声データ】

「パパ?ここはどこ?」
ーデータは削除されましたー
「なんだか顔が怖いよ?」
ーデータは削除されましたー
「嫌、近づかないで!嫌!誰か助けて!!!」

暴れる物音と男の荒々しい声が聞こえた後、データが途絶える。


【9月2日】

最近、パパの様子が変で心配です。
いつもは帰ってくると笑顔でだっこしてくれるのに、してくれません。
いつもお部屋に1人で行ってしまいます。
ママも悲しそうです。
パパ、大丈夫かな。

【10月3日】

パパは家に帰らなくなりました。
ママは私のことを抱きしめてくれます。
でも、とても寂しいです。
パパ…

【12月5日】

離婚するって決まりました。
ママは会っていいよと言うけど、やっぱり寂しいです。

【12月7日】
パパが見せたいものがあるって嬉しそうに電話してくれました。
パパに会いに行きます。
ちゃんとお話すれば、もう一度一緒に暮らせるのかな。

【12月11日】
私は私じゃなくなりました。
私という意識を持った何かです。
もう嫌だよ。
誰か助けて。

【2月13日】
死にたい
死にたい
死にたい
死にたい
死にたい


死ねない

【2月〇〇日】
おなかすいた
食べない
食べたい
食べない
食べない
人は食べれない

〇時計

大きな振り子時計が壁にぶら下がっている。
艶のかかった薄茶色の木枠がとても綺麗で、金色の振り子が右、左、右、左と時間を刻んでいる。
文字盤は円盤でローマ数字で書かれている。
針もとても細かい装飾が施されており、匠の技を感じた。

※文字盤のガラスを割り、針を無理やり12、12に合わせる

カチっと音が鳴る。
すると、文字盤が開き扉のように開き始める。
歯車の機構のなかに、小さな木箱があった。
中を開けてみると裁縫道具のようだ。

〇hal(脳)


コポコポと沸き立つ液体の中に脳みそが浮かんでいた。
それはpcのハードディスクと接続している。
ハードディスクの電源は切れていているようだ。
キーボードは少しだけ誇りがかぶっていた。
モニターは真っ黒で何も映し出していなかった。

※電源を入れる

電源が付くと全く見た事のないosが起動されていく。
そしてモニターに電源が付くと、脳幹の液体が薄緑へと変色し、気泡が多くなっていった。
そして、モニターに緑色の文字が浮かんでいく。


hal:ヤア

話が合わない。たまにエラー表示がでる。どうやらこのコンピューターはバグに犯されているようだ。

※最初halはコンピューターバグにより、上手く会話が出来ない。全てカタコト。

熊の人形orコンピューター技能でバグを修理可能。

※halはストーリーの補助的な説明係のnpc的な位置づけである。
基本的に困ったらここに聞きにくる流れであって大丈夫だ。
halは基本的に様々なことを知っている。
しかし、あまりにもヒントになることは「エラーコード検出」と表示され、その後「参ったな、僕は伝えることが許されていないようだ」と話す。
halが知っていることは大まかな事の背景とここがどこなのかである。

※バグを直すと
「ありがとう。助かったよ。
可能な限り君たちをサポートしよう。
ここにあるものは絵画の男から聞いて欲しい。色々と知っているはずさ。」
「後、なるべく殺さないことをおすすめするよ。平和が1番だ。」


〇熊の人形

とことこと床を歩き回るぬいぐるみの熊の人形がいた。
ボールを転がしながら遊んでいる。
探索者に気が付くと、こちらをビーズの目で見つめた後、フリフリと手を振った。

※説明※

マスコットキャラ。
癒し枠。
しぐさ可愛く。
「シャドウの存在と対話して欲しい」というと交渉してくれる。
「壊すことなく蝋人形を分解して欲しい」と願うと精巧な手つきで操作し、切り開いてくれる。
人間の精神という枠組みを超えて昇華した存在。
実は失敗作などではなく、成功例だった。
その知性は深く、しっかりと感情を持っている。
しかし、妖精的な一面が強く自由気ままでいるため理解しにくい。
人語を発する事が出来無いが、文字は書ける(この場に文字をかける場所がないからかけない)


※赤いカギは熊のぬいぐるみの中にある。
裁縫道具を用いて腹を開かないと、確実に死んでしまう。

〇蝋人形

精巧な作りの女性の蝋人形が椅子に座っている。
年齢は20歳ぐらいだろうか。非常に美しく見とれてしまう。
純白のウェディングドレスを身にまとっており、ブロンズ色の長髪を床に垂らしている。
座った手元にはブーケが添えられていた。

※目星

つなぎ目のような跡が体中にあった。
どうやらパーツを繋いで作られているようだ。

※ブーケを調べる

造花でできた花束のブーケだ。
よく見ると何か文字が書かれた紙の造花があった。
『始まりと終わりが合わさる場所、そこに裁縫道具あり』
と書かれている。


※パーツを外すにはdex対抗ロール16が必要である。

失敗

蝋が傷ついてしまう。
すると、傷ついた表面から赤い液体がどろどろと流れ出していく。
徐々に蝋人形の肌色が青白くなっていく。
黒目の瞳が白く変わっていった。

※熊に頼むと一瞬で青い鍵を抜きとってくれる。

中をとり外すと青色の鍵が出てくる。


〇絵画の男

男の人が絵の中に描かれている。
しかし、その男は部屋の隅の方に向かってうずくまるように座っていた。
体はがくがくと震え、頭を抱えている。
水彩画で書かれているのに、その絵の中はなぜか動いているのだ。


※精神状態が安定していないため、簡単には話せない。
※恋をしやすい性格であり、蝋人形の姿を見ると見とれて外の世界に興味を抱き始める。
精神が安定し、探索者と話せるようになる。
※絵画の男はタンス中の鍵の位置を知っている。また、それぞれのnpcの特徴を良く理解していてアドバイスをしてくれる。
※異様に怖がっているのはシャドウの暴力性を良く理解して、実際に過去にいじめられていたから。


〇シャドウ


壁の隅から影が急に広がる。
それは空間を暗く彩り、黒く霧がかった実体となる。
四つ足の犬のような獣の姿になる。
それは探索者たちの方を向いてうなり声を上げるのだ。
そして急に化け物は襲い掛かってきた。

※鐘の音と共にBパートの際に現れる。


※目星

どす黒い霧の中からわずかに黄色い光が放たれているのを感じた。


※定期的に出す

黄色いカギの所有者。
魂が高次元へと昇華するものの、人間の醜さや精神的な弱さを引き継いでしまった存在。
定期的に部屋の隅から発生し、探索者に襲い掛かる。
しかし2r過ごすと、すっと消えてしまう。
和解するには熊の人形に助けを求め、話してもらう必要がある。
倒してしまうと二度と蘇らない。


※倒すと

黒い霧が晴れていく。
ことん
と、鍵が落ちてきた。
それは黄色くて小さい、鍵であった。


hp10
dex15
50% 噛みつく 1d3ダメ

〇タンス



2mほどの大きな収納チェストだ。
それは三段の引き出しによって構築されている。
(上)(中)(下)と別れている
しかし、見た目はタンスなものの、その構造は不可解であった。
一つ一つの引き出しに鍵がかかっており、そのままでは引き出しの中身を空けることは出来ないのだ。

上部には2桁のダイアル式のロック錠がかけられている。

中部では赤、青、黄の三色の鍵穴がそれぞれついていた。

下部は3桁のダイアル式のロック錠が上部と同じくかけられていた。


※タンスの上

タンスの上を良く調べると、手紙が三通封筒の中に入っている。
それぞれ上、中、下と書かれて封がされていた。
更に、横には工具箱がある。
ハンマー、ねじ回しの各種、ハサミなどが入っていた。



手紙1(上)

もし救済があるとするのなら、それはこの場にいる全員が存命でなければならない。
簡単な道のりではないが、それが出来たのであれば神の名のもとに恩赦を与えよう。

手紙2(中)

上段には少女の願いがつづられている。
中段には愚か者の懺悔がつづられている。
下段には救済の鍵が隠されている。

手紙3(下)


上:日々の記録の中に潜む法則性を見つけよ
中:鍵は管理者が持つ。
下:
ldxkyod
ale+ewr


※手紙に目星をすると、(下)の手紙だけ蛇がグネグネと曲がった刺しゅう跡があるのに気が付く。


○引き出し

タンス上層部の引き出し
※ダイヤルは17(素数の並び)


中には人数分の注射器と手紙が添えられていた。
手紙を開けると、文字が書かれていた。


『こんな場所に連れ込んでしまってごめんなさい。
あなたの体には毒が回っています。
これで治してください。
そしたら、出口から出ても大丈夫です。
巻き込んでしまってごめんなさい。
幸せに暮らしてください。
私の分まで生きて下さい。
ごめんなさい』



※目星

よく見ると涙でにじんだインクの跡がある。
何かで強くこすって消した跡がわかる。

※追跡

文字を復元すると『助けて下さい。いきたいです』の文字が浮かんでくる。

※タンス中央の引き出し


中央の引き出しを開けると黒いなめし皮の手帳が入っていた。

仕事道具としてよく使う感じのものだが、少し反りが入っていて、使い込んだものであるのがよくわかる。

手記1

人の身ではどうしても限界がある。
ニャルラトホテプ様の崇高なお考えや、教えて下さる言葉の1%しか理解が出来ない。
何とこの身はあさましいことなのか。
折角これだけニャルラトホテプ様と触れ合える機会があるのに、申し訳が立たない。
私では限界があるのだろう。
肉体は老いるのみであり、脳機能の劣化も激しい。
このままではいずれニャルラトホテプ様に見限られてしまうだろう。
それだけは避けなければいけない。
常に新鮮な恐怖を提供しなければ。
様々な実験を行う事に決めた。

手記2

失敗の連続である。
物質的な人間を作った、幼稚すぎて役に立たない。
優れた人間の脳の処理能力を上げる実験も人間の範疇を超えられずに失敗した。
器を作り、そこに魂を入れる実験も失敗した。生命活動はするがそこに魂の輝きは無い。
魂だけを三次元に落とし込むのも失敗した。負の感情が刺激され暴走するだけだった。
人の魂を作り出し、成長させるのも失敗した。それは愛を感じず自我が崩壊した。
何もかもが失敗する。
上手くいかない。
いや、上手く行かないように出来ているのは薄々感じていた。
ニャルラトホテプ様は一番私にとって大切なものを捧げることを所望している。
失敗するたびに退屈そうな目で私のことを見つめる。
私はニャルラトホテプ様の期待に応えなければいけない。
他の人間では駄目なのだ。娘でなければいけないのだ。

手記3

簡単だった。
驚くほど上手く行った。
全てが順調に進んだ。
娘は人を超えた。素晴らしい。最高傑作だ。
変わりに人を食べなければいけなくなった。まあ、さして問題ではないだろう。
娘もさぞかし、嬉しいことに違いない。

手記4

娘は全てを拒絶した。
徐々に衰弱した。
食欲に打ち勝つ優しさがあった。
人が好きな優しい子だった。
優しさなど、全て無駄なのに…
余りにも愚かだ。


人の形では駄目なのだろうと、失敗作を胃袋に送ったが全てを拒絶する。
魂も食われまいと拒絶し、抵抗だけを続ける。
ならば、いっそのこと食らいつくせるように養分だけを転送しよう。
生きている状態で食わせ心を壊せばいい。
毒を含ませれば、仮に逃げても問題ない。
食事となる影響である人間が望んで食われる状態であれば、娘も食欲には勝てまい。

手記5

計画を実行した。
その瞬間、ニャルラトホテプ様は笑顔で私を正気に戻してくれた。
全てを自覚した。
激しい後悔だけがこの身にある。
全てが救われないように上手く出来たシステムだけがこの場に残っていた。
仮に娘が満たされたら、人の味を覚えてしまう。
暴走すれば世界が崩壊する。
全てが救われないことを知ってしまった。
まだ巻き込んでしまった者は助けられるかもしれない。
だが、真実を知る必要もないだろう。
救う方法は分かりやすくもう知っているはずだ、真実は知りたければ知ればいい。
私はもう疲れた。
娘よ、すまない。
私はもう生きる資格などない。
全てが疲れてしまった。

手記6

最後の重要な鍵の言葉は私の愛おしい存在の名前だ。
桜井七海(さくらいななみ)という。
記憶にとどめて置いて欲しい。


引き出し下

ldxkyod
ale+ewr
これを左下を起点に上下上と交互に並べる。
すると、alldex+keywordになる。
all dex(探索者のDex値の合計)+キーワード(ななみ)になる。
探索者の全てのDex値の合計+773
これが鍵の番号になる。


もし娘に会うのなら、この場で意識を保ち続けただ待つがいい。 
気付け薬がある。
狂気に負けないため、この錠剤を服用するといい
出口に出てはいけない。
出た瞬間、帰ることを余儀なくされるからだ。
飲み込まれた先に娘の魂がある。
そこで何を語るもいいが、一つ述べられることがある。
救済は死しかありえない。

絶対に全ての者は助からない。
ならば何を救済とするのか?
私は死しかないと考えた。
ここに「魂を崩壊させるナイフ」がある。
それを振るえば、全ての命ある者を殺すことが出来る。
選択肢はあなたにゆだねよう。
これがあれば最後も乗り切れるだろう。

鋭利な黒曜石のナイフを手に入れる
気付け薬を手に入れる

☆ending

ノーマルエンド

非常口の扉を開ける。
目の前は闇が広がっていて、光の足場が通路として奥に続いていた。
ただ、その闇を歩き続ける。
ふと、道中で女の子の声が聞こえた気がした。
何かを忘れているような気がした。
その思いを振り切り、探索者は前へ歩き続ける。
やがて目の前は光に包まれていき…
探索者たちは変わらない日常へと戻る。
あの日あった記憶など全て忘れて。


〇タイムリミット


7回鐘の音がなるとタイムリミットに移行する。

※時折アイディアや目星をふらせる。
 
成功→

①壁や床がやけに柔らかいという印象をうける。
②物体であるはずのものが液体のように柔らく重力に導かれるように落ちていく
③何か液体が頭の上に当たったような感覚がした。
④やけに部屋の上を進みにくいと思い、靴裏を見るとべたべたしたガムのような粘着質のものがくっついていた。


床、壁、天井が徐々に液体となって崩れていく。
足は床の中へと沈み、それをもがいて取ることは出来ない。
がんじがらめになりつつ、探索者は床の中へ中へと沈んでいく。
光は消えていき、ただただ深い闇の中へと落ちていくのであった。



ルート1(NPCが1人でも死亡)

闇の中でも意識を飲まれずに目を開けていることができた。
不思議と気分は落ち着いていた。
おそらく薬のお陰だろうと推察する。
徐々に下へ下へと降りていき、この場がどこであるかもわからず、またどれほど降りて行ったのかも分からなくなった時であった。
ふと目の前に光を感じた。
それを辿り、探索者は歩き始める。
光りを追い求め、歩いていくとやがて一つの精神体(幽霊のようなもの)と出会う。
それは12歳ぐらいの少女の姿をしていた。
ぐったりとした様子である。
その子はこちらを見ると、疲れた様子で話し始める。

「私が私でいるうちにもうころして」
「こうしている間も、本当に辛いの」
「お願い」

少女にナイフが突きささる。
「ありがとう。私は嬉しいよ。」
そういいながらも、痛みを感じるのか顔を歪める。
「大丈夫だよ」
「本当に大丈夫」
「でも…もう少しだけ…い…」
探索者たちは徐々に意識が薄れていく。

各々の部屋でうつ伏せになって寝ているのに気がつくだろう。
刺した手には赤い赤い血糊が着いていた。
そして、血文字が机の上に描かれている。
「救ってくれてありがとう」


ルート2

闇の中でも意識を飲まれずに目を開けていることができた。
不思議と気分は落ち着いていた。
おそらく薬のお陰だろうと推察する。
徐々に下へ下へと降りていき、この場がどこであるかもわからず、またどれほど降りて行ったのかも分からなくなった時であった。
ふと目の前に光を感じた。
それを辿り、探索者は歩き始める。
光りを追い求め、歩いていくとやがて一つの精神体(幽霊のようなもの)と出会う。
それは12歳ぐらいの少女の姿をしていた。
ぐったりとした様子である。
その子はこちらを見ると、疲れた様子で話し始める。

「私が私でいるうちにもうころして」


そう少女が語った直後の事だった。
後ろの方から拍手の音が聞こえてくる。
振り返ると美青年が本当に嬉しそうな顔をしながらこちらを眺めていた。
「いやはや、愉快愉快。僕の期待によく応えてくれたよ」
そう言うと、右腕を天へと伸ばし指をぱちんと鳴らす。
すると、大きな振動があたりに生じ始める。
そして、下の方からどこからともなく40代くらいの中年の男がせりあがってくるではないか。
体はぐったりと力が抜けていて、腹には短剣が刺さっていた。
目は白目であり、死んでいるのが容易にわかるだろう。

「パパ!」

少女は悲痛な顔を浮かべながら目を見開き叫ぶ。
そこには憎しみの感情など一切なく、ただ中年の男を心配するような叫びに聞こえた。
その様子を見て、美少年は満足そうにうなずく。
そして、人差し指で中年の男の頬をつぅっと上から下になぞっていった。
すると、体に活力が宿り始め動き始める。
「ごふぅ」という息を吸う音とともに中年の男に眼の光が宿り始めるのだ。
周囲をきょろきょろと見渡し、そして驚いた表情を浮かべる。


「七海…ニャルラトホテプ様」

中年の男は叫ぶ。
美青年はその様子をみてケラケラと笑う。
マリのように高くて綺麗な笑い声だ。
それはあまりにも完成されすぎた声で、不気味に思うだろう。
よく見ればいでたちも、顔のつくりも、全てが完璧すぎる。まるで作られているかのようだ。

「僕の忠実な部下であり、あさましき人間よ。
ああ、なんて壊れやすくて美しいんだ」

そう語ると中年の男の頭を愛おしそうにゆっくりとなでる。

中年の男は喜びで体を震わせながらもはっと少女の方を向くと美青年に向けて懇願するような口調で語る。

「忠誠をこれからも誓い続けます。
もう、自ら死を選ぶことはしません。
だから、なにとぞ、なにとぞ、七海だけには恩赦を与えて下さいませんか?」

すると美青年はにこやかに微笑みかける。

「いいよ。許してあげる。その浅ましさこそがなんとも素敵だ」

そう言って美青年は指を鳴らす。
あたりは光に包まれていき…やがて意識をうしなうだろう。


あとがき

ここまで長々と読んでくださり、ありがとうございました🙇‍♀️
改変などはご自由にどうぞ。
丹精込めて書いたシナリオなので、楽しんでいただけたら嬉しいです。

Twitterはレアクロエ@reakuroe 

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