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音MADという人形遊び ─音に対する映像編集のアプローチ

「原曲不使用で音程合わせしかしてない音MADってDTMと変わんなくね?」
「耳コピするにしろちゃんとした音源買えば良くね?」
「なんでわざわざ権利侵害して妙な加工しまくってんの?」
という意見を以前耳にしました。

…そうか?本当に音MADとDTMって同じなのか?

というのも、「音MADで音程合わせをすること」と「DTMで音を打ち込むこと」は作業こそ似通っていますが、音MADと音楽、それぞれから伝わる情報って違う気がするんです。

まどろっこしい事言ってても伝わらないと思うので、要は「音MADでの音合わせって、素材の持つ文脈とか動画という視覚情報に落とし込む作業を通じて『単なる音』から『キャラクター性を持った音』に変わってんじゃね?」って話です。

本記事を通じて、音MADが音を扱う表現としてDTMとは別であることの主張、それに加えて音MAD作者の方にとって表現の手助けが出来れば幸いです。



ところで「キャラクター性を持った音」って何ですか?教えてくださいよ!

了解です!

以下はそういう表現が分かりやすい音MADの一例になります。

Kawaii make MY day!!

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かわいいね

メインメロディは画面中央のアイドル3人の音声を使った人力ボカロなんですが、アイドル達の足元にステージのようなオブジェクトを設けることで、実際に彼女たちがステージで歌って踊っているような表現へ落とし込んでいます。
極端な話、このキャラが歌っていますよ、という事を示すのであれば画像一枚置いておくだけでも十分です。ボカロPVとかでもそういうのあるでしょ。
そこにひと手間加えることで豊かさが増しててエエですわね…

それに加えて注目すべきはココ!!

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タンバリンを振っている(ようなモーション)!!!!!!!

実際にタンバリン鳴らす時ってそう動かすよね、と思ったんですが音MADでそういうモーションを導入してるの初めて見たので新鮮でした。
「キャラクター性を持った音」ってこういう事です。単純な情報としての音ではなく、まるでそこで本当に動いているかのような情報を持つ音(+映像)の事を指してます。

これ音MAD特有の表現じゃねえかな?気のせい?

どんどん行きましょう。

それさっき私が落としたべちゃべちゃのパンリーピーポーじゃないですかぁ ぶっ飛ばしますよー?

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こういうの「ペープサート」っていうらしいですね

こちらは音程合わせではなくセリフ合わせを映像に落とし込む中で、実際の紙人形をクロマキー合成で取り入れています。
アニメの映像をそのまま使わず、あえて紙人形を動かすことで音MADとして組み込まれたセリフの感情をより柔軟に表現しています。機械的でない、アナログ特有の動きがアクセントになっていてイイ!

こういうアイデアが頭の引き出しからパッと出せるの羨ましいです。


ドトウをあげます!!!

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ウマ娘エアプ勢なので細かい事は知らん!

この動画では上記2つの動画の両方をやっていると感じています。舞台下、舞台奥に居るキャラクターはそれぞれの音に対応して動き、舞台中央に居るメイショウドトウ(左)とテイエムオペラオー(右)がミュージカルさながらの動きを見せる!

これこそまさに「キャラクター性を持った音」というべき表現でしょう。『Kawaii make MY day!!』にもあったステージを模した画面構成…というか完全にオペラ劇場を意識した画面作りになっています。
音程合わせメインの場面でありながら視聴者に冗長さを感じさせない表現になっており、音が単なる音としてではなくキャラの発する声としてストレートに伝わってくるのが非常に特徴的です。


nanamitrain

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自分の作った動画ですいません

右上の白塗りされているキャラクターはピアノ音に合わせて動いています。
もちろんその理由は、元素材のピアノ音が鳴っているシーンでこのキャラがピアノを演奏しているからなんですが、もっと詳しい場面説明をするとキャラが首を吊られて、その吊られた身体を使って大きなピアノを弾かされている…というシーンなんです。
ただのピアノの音と、それに合わせて動く画像というだけなのに、そういった文脈があることで途端にグロテスクな表現に見えてきませんか?

案の定コメントでは「右上はほんとにやめてくれ…」と言われました。
多分ダンガンロンパを既にプレイしてる人だよね、ごめんね。



…さて、ここまでいくつか音MADを紹介させて頂きましたが、視覚情報と聴覚情報が密接に絡み合う現象が起こるという所からも音MADとDTMは全く別だと思いませんか?
最初に挙げたような意見が散見されるのは、音MADの音声編集作業がDTMの作業と似ていることが理由だと推測しています(加えて、音MADのグレーな要素を考慮した時、DTMで同等の作品を発表した方がクリーンで評価も受けやすいのではないか?という考えも理由にあるかもしれません)。しかしながら、楽器から発せられた音と、既存のコンテンツから拝借したキャラクターや場面の声やSEとでは、文脈、キャラクター性の有無という点において異なるものだと考えることも可能ではないでしょうか。


note書いてる最中に思いついたことあるので書いときます。
音声の持つ文脈を映像で補完して伝える表現って要は実際に発声、演奏しているイメージへ近づけようとしていることなので、音MADにおけるリアリズムの追及って呼んだらキレイにまとまるかな…って勝手に思いました。

実際、僕はこういう表現を音MADで見るのが好きなので、みんなどんどんやってくれたら嬉しいです。映像が豊かになってハッピーハッピーなので。


適当な事書いてすまん!
いまちょうど音MAD Advent Calendar 2021ってのやってるらしいから有益な情報が見たい人はそっち見てくれ!!


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