見出し画像

35歳で自転車で日本一周しようとした。#1


35歳になった。なってしまった。
何事も成せなかった。ただ年齢だけが増えた。


急に変化があったわけじゃない。
もともと私は逃げたかった。
現実から逃げて逃げて、逃げまくっていた。

会社からは逃げた。労働からも逃げたかった。

どうせ逃げるなら、人生からも逃げてやろう。
つまり、死にたくなったのだ。

どうかしていた、というわけじゃない。
私はふとした時に死にたくなるのだ。

人生から逃げ出す、格好よさげな言い方をしている。
私は格好つけたいんだ。

ただ逃げ出すのは格好悪いから、理由を付け加えたくなった。
盛大に逃げてやろう。

旅をしよう、
自分の体を使っていけるところまで。


そう決めたのは2022年の4月ごろだったか。

色々準備して、目的を決めた。
それは死に場所を探すことだった。
生きることをあきらめたかった。

私は生きたい、楽に生きたい。
楽に生きていけないなら、死ぬほうがいいのではないか。

何もわからなかったから簡単に制限を設けた。

自分でとったものだけ食べようというルールだった。
サバイバルだ。きっと面白いだろう。
本当にやっている人もいる、だが見通しが甘すぎた。

それもそのはず、自転車旅なんてやったこともない。
食材探しなんてできるはずがない。
そのうち野垂れ死んでもいいと思って始めた。
だからそれでよかった。

できなくてもよかった。

無駄に道具をそろえた。
死にたくないから考えられうる道具を集めた。
でも死にたいんだろ?
また葛藤していた。
自分でもどうかしているような気がする。
でも死にたいんだろう?

35歳になった、出発、雨。

誕生日、0時、出発した。
外は雨だった。荷物は自転車に括り付けただけ、
バランスなんて考えていない。

荷物が重い、脚力が足りない、自転車が重すぎる。
気合でどうにかしようとした、死にたいのに。

目指したのは海岸線、海に近い場所、わかりやすい場所。
片瀬江ノ島駅だった。
暗く、道もわからず、自転車は重く。
坂道を上ることすらできず。
とにかく、わけもわからず進んだ。

すぐに疲れた。慣れてないからだ。
1時間も持たずに休憩した。

スタート地点につくまで、8時間はかかっただろうか。
想定では日が昇る前につく予定だった。

片瀬江ノ島駅につくまでに、私は疲労困憊し、
なんども休息をとった。

500m進むごとに休憩をした。
自転車が進まなかった。それもそのはず。
私は最初の1時間でエネルギーを使い果たしていた。

後で知ったが片瀬江ノ島駅に着くころには
ハンガーノックと呼ばれる症状で死にかけていた。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?