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「傲慢と善良」

本を開いてから48時間以内にすぐ読み終えてしまいました。
作者の辻村深月さんですが、昨年息子が「かがみの孤城」を同級生に勧められて読み、面白いと喜んでいました。息子がスピードに乗って読み進められていたので、アメリカに住む13歳のマンガ大好き(ハイキュー、夜桜、アオアシ)なサッカー少年にも読ませる力があるんだな、と「すごい作家さんだな」と思いました。
ということで、私も「かがみの孤城」、「パッとしない子」を続けて読みました。2本たて続けて読みいずれも面白かったので、今後も継続して読む作者さんに辻村深月さんが頭に残ることになりました。

さて、「傲慢と善良」ですが。以下読後の感想です。

主人公の真実は恐らく結構かわいいんだと思います。派手ではなくても。実際に架が彼女を気に入ってるし付き合ってるわけだし。真実は親の手元から飛び出して、さっさと一人暮らしでもしていれば、もっと自立して色々な自信が持てるような経験も出来ていたと思います。自己愛が強い、と架の女友達に批判されているけど、程度の違いこそあれ現代日本人なんてみんなこんなもんじゃないのと思っちゃいます。そこまで批判されないといけないことではないような。インスタやってポエム呟いてもいいよね、許される。

架のパートでは、「婚活」についていろいろ語られてますね。昭和前半の日本は国民はほぼ貧乏な状態にあり、生きるために女性は結婚しないといけなかったわけです。昭和時代は5~8歳くらい年上の男性と20代の女性の結婚は量産されていたわけですが、現代女子にはそれはなかなか難しい。やっぱり若いほうが相手を魅力的と思う人は男女とも多いでしょうし、本能的に。恋愛と結婚をはっきり分けすぎるといろいろ寂しいと思ってしまいそう。「君の家事能力は最高だから結婚したい」と言われるとちょっと「あれ」と思ってしまいそうです。やっぱり簡単に割り切れないのは当然だと思います。

真実のパート、物語の後半に出てくる「大恋愛」というワードが、それまでのストーリーを見る視点を急に変えてくれたように感じます。私はこの瞬間がとてもいいなと感じました。

ただ孤独になりたくないからというだけで、相手を選ぶのではやっぱり寂しい。そう思うことは、別に甘い考えだとは思いません。元気で美しい若い盛りを過ぎた後の人生のほうが長いのです。相手を大切にしたいという感情が無かったり、本当の意味で相手に関心のないままでは、結婚してもやっぱりその後の人生大変ですよ。

真実は間違いを犯しますが、それくらい必死だったということだと思います。善良でいられないくらいに何かに必死になれる瞬間がやっと来た、それは長い目でみれば幸せなことだと思います。人によって人生で何を獲得するために必死になるかは異なるかもしれません。恋する人なのか、仕事のような達成したい何かなのか、様々でしょう。でも年をとり、いろいろと自分のために必死になる瞬間がほぼなくなった私にとっては、それ自体がとても凄いことだと思います。

素敵な本でした。感謝。


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