こうきの読書感想文No.9

【タイトル】
科学的な適職(4021の研究データが導き出す最高の職業の選び方)
【著者】
鈴木祐
【発行年】
2019年
【ジャンル】
ビジネス書

【この本を読んだ目的】
前回の「転職の思考法」に引き続き自分のキャリアについて整理するため

【レビュー】
人生においてキャリアに関する悩みは尽きない。科学の力で自分だけの「適職(幸福が最大化される仕事)」の選び方を伝授しようというのが本書の狙いだ。
就職・転職の失敗の7割が「視野狭窄」によるものだと筆者は言い、後悔の少ない意思決定をするために「AWAKE」という5ステップを提唱しています。本書はこの「AWAKE」のステップを詳細かつ具体的に説明しているので、実際に手を動かして本書の内容を実行することでキャリアへの迷いを軽減することができるだろう。

以下では、AWAKEの5ステップを説明していく。

①幻想から覚める(Access the truth)
ここでは、人間の幸福とは関係ない仕事の要素について整理する。一般的には仕事選びの基準になると思われている7つの項目が、実は長期的な人生の満足度にはなんの関係もないと断言している。

⑴好きを仕事に選ぶこと
⑵給料の多さで選ぶこと
⑶業界や職種で選ぶこと
⑷仕事の落さで選ぶこと
⑸性格テストで選ぶこと
⑹直感で選ぶこと
⑺適性にあった仕事を求めること

前回読んだ「転職の思考法」では、伸びる業界に入ることの大切さが説かれていた。真っ向から反対するような説を唱えている⑶を詳しく見ていきたい。
ここのポイントは、
・専門家でも有望な業界などは予測できないこと
・人間は自分の個人的な興味の変化も予測できないこと
の2点である。筆者はペンシルバニア大学などの研究データを参考にし、「未来の変化の予測はほとんど当たらない」ということを力説している。
「転職の思考法」では伸びる業界の見極め方を紹介しているが、これは無意味というのだろうか。おそらく、この2つは論点が違う。
本書は、幸せになれる仕事選びという観点で業界を選ぶことを捉えているが、「転職の思考法」は市場価値の上げ方を目的として業界を選ぶことを捉えているのだ。

②未来を広げる(Widen your future)
仕事人生を幸せに導くために必要な7つの要素を紹介している。
⑴自由:その仕事に裁量権はあるか
⑵達成:前に進んでいる感覚は得られるか
⑶焦点:自分のモチベーションタイプに合っているか
⑷明確:なすべきことやビジョン、評価軸ははっきりしているか
⑸多様:作業の内容にバリエーションはあるか
⑹仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか
⑺貢献:どれだけ世の中に役立つか

⑶の焦点に関して解説する。ここでいうモチベーションタイプとは、
・「攻撃型」:目標を達成して得られる利益に焦点を当てるタイプ
・「防御型」:目標を責任の一種として捉え、競争に負けないために働くタイプ
の2種類だ。焦点タイプに合った働き方をしたほうが能力を発揮しやすく、そのおかげで仕事の満足度も高まるという。

③悪を取り除く(Avoid evil)
①で視野を広げ、②で仕事を選ぶ基準を知った。その上で、今回は排除すべきマイナスの要素を紹介している。
大分類としては2つで、それぞれ4つのサブカテゴリがある。
⑴時間の乱れ
・シフトワーク
・長時間通勤
・長時間労働
・ワークライフバランスの崩壊
⑵職務の乱れ
・雇用の不安定
・ソーシャルサポートがない
・仕事のコントロール権がない
・組織内に不公平が多い

④歪みに気づく(Keep human bias out)
ここまでの3つのポイントを理解しても、人間はバイアスによって間違えた選択をしてしまうことが多々ある。ここではそのバイアスの解除の方法を具体的に紹介している。
長くなってしまうので詳細は紹介しないが、「客観性」を保つための工夫をどうするか、というのが重要なポイントであった。

⑤やりがいを再構築する(Engage in your work)
最後に、「自分の仕事を価値観に基づいて捉え直す手法」を紹介している。ここでは目的意識(やりがい)を持って働くための「ジョブクラフティング」の方法を紹介している。

まとめとして、いったん方向性を決めたらあとは人生の偶然に身を委ねるという「キャリア・ドリフト」の考え方(プランドハップンスタンスと同様の考え)を紹介して本書は幕を下ろす。

多様なフレームワークを紹介する本書は、人生のキャリアについて悩んだ時にまさしく方向性を示してくれるだろう。先日の「転職の思考法」は自分の中の軸を固める本であるならば、本日の「科学的な適職」はアウトプットのための道具を与えてくれる。是非セットで読んでみてほしい。

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