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会社組織の次のかたちと、お金の払い方の次のかたち。

 先日、二年ぶりに岐阜県美濃市にある「エムエム・ブックス みの」に寄って、服部みれいさんと旦那さんの福ちゃんこと服部福太郎くんとおしゃべりしてきた。

 翌日に美濃から30分ほどの距離にある岐阜県各務原市でイベントを控えていた僕は、前乗りしてみれいさんに会いに行ったのだけど、少し早く着いたからと「各務原美人の湯」というところでサウナ2セット決めて(水温14.8度/露天スペースに整イスいっぱいで最高にいいサ活になった)ゆったりしてたら約束の時間に15分ほど遅刻。やばいやばいと焦りつつエムエムブックスに着いたら、みれいさんも図ったように同時に到着。あとで聞いてみたら、みれいさんも出かけ間際になって、鍵がない!と慌てたりして到着が遅れてしまったとのこと。しかし見事なまでの同着に、互いに運転席から会釈する最高な宇宙タイミングで思わず笑ってしまった。

 みれいさんに会いに来るといつもこういう小さな奇跡が起こる。

 いつものように二階の部屋に通してもらって、まずは&bottleをたくさん売ってくださっているお礼を。実はみれいさんと福ちゃんが運営する「マーマーなブックス アンド ソックス」は、個店としては一番、&bottleを売ってくださっている。

 みれいさんのファンの人たちや、全国の冷えとりガール&ボーイたちが、お白湯をいれたりして&bottleを活用してくれていて、みれいさんのイベントでは多くの人が&bottleを持参してくれるそうだ。ほんと嬉しい。

 実は今回、具体的に何かしらの相談があって訪れたわけじゃなかったけれど、そのお礼だけはきちんと伝えたいと思っていた。ちなみに&bottleはお陰様でタイガーさんの目標本数15,000本を超える売り上げで、昨年からは海外での販売もスタートした。12年かけてつくった、ある意味僕の水筒愛の結晶を多くの方が使ってくださっていると思うと、ほんと泣けてくる。マーマーのみなさんに限らず、いろんなところで販売協力してくれたみなさんには本当に感謝だ。一つの商品をスタンダードなものにしていくのはとてもとても難しいこと。だからこそ、ここからが大切なんだよなあとあらためて思う。

 さて、そんなことで、みれいさんと福ちゃんと互いの近況報告をしつつ、いろいろお喋りしていたなかで印象的だった話を書いてみたい。まず一つは「会社」のこと。「雇用」と「被雇用」という関係性から脱したいというみれいさん。その気持ちとてもよくわかる。

 実は僕の会社、Re:S(有限会社りす)もいまは4人だけの会社だけど、もともとはデザイナーや編集者をもうちょっと多く抱えていた。だけど2011年の東日本大震災があった頃に、いろいろ考えることがあって、当時働いていた社員のみんなに「どうしてうちにいるの? みんなスキルあるんだし、やめた方が稼げるんじゃない?」と、一人一人に相談したことがある。

 そもそも僕は経営者に向いてないという自覚が強くあるんだけれど、そのせいか、当時僕は社長でありながらも給料は全社員下から3番目に低かった。というのも、ある社員は小さな子供が2人いて、もう一人の社員は子供が3人。一方うちは娘が一人。なので当たりまえのように僕の給料が一番少なかったのだ。そういう給料の決め方に対して、疑問も不満も何もなかったけれど、結果的にそれぞれの家族全員の経済を背負い込んでしまっていることに、震災直後に気づいてしまったのだと思う。

 そこでいろいろ考えていると、どうしてみんなうちの会社にいるんだろう? というシンプルな疑問が湧きあがってきて、決してみんな辞めてほしいということではなく、それぞれに能力の高い人たちだからこそ、とてもナチュラルに、やめてフリーになる方がそれぞれ稼げるんじゃないか? と思い至り、上述のような質問を一人一人に投げかけた。

 実際、当時Re:Sのデザイナーながら、やけにフォロワーの多い写真好きだった濱田英明は、いまや僕の何十倍稼いでるんだろう? ってくらい写真家として活躍している。それぞれに稼ぎをつくって頑張っているから、やっぱり間違ってなかったなあと思ったりするのだけど、とにかくそういう問いを経て、それでもRe:Sにいると自分で判断した人しか会社には残っていないので、そこからは、とても気持ちが楽になった。組織的に雇用被雇用の関係性であることに変わりはないんだけれど、気持ち的には、個人事業主の集まりに限りなく近い。

 だからもっと大胆に組織をチェンジさせようとしているみれいさんの会社組織編集の話を聞いて、僕はとてもワクワクした。自分ではやりきれなかったこと、見ることができていない世界を、みれいさんと福ちゃんが見せてくれるような気がしている。その過程でたくさん起こるであろう失敗や、だからこそ得る気づきは、これからの社会の大きな一歩になると思う。

 そしてもう一つ最高に面白かったのが物やサービスの価格のはなし。「いちじくいち」というマルシェイベントで試みている「入場無料/退場有料」という仕組みについて、みれいさんに話したことから、ドネーション制を超えた、お金の払い方の話になったのだけど、その話が強烈に面白くて、僕は久々にお金という存在に対して胸が踊るような心地になった。

 具体的にどういう話をしていたかというと、最近エムエム・ブックスさんから新著を出した「プリミ恥部」さんという方が提唱する「宇宙価格」という話で、誤解を恐れずサラリと書いてしまうと、決まった価格を定めず、そのモノやサービスを受けた人が、それぞれに思考して、その「愛」で(こことても重要)価格を決めて支払うというもの。

 この宇宙価格というもののポイントは匿名ではないということ。名前と価格がきちんと紐づけられるので、何が正解とかはないけれど、それが1円でも1億でも、その人なりの理由が明確になっていなきゃいけない。さらに、そのお金をいただく側も、それが1円でも1億でも同じ心持ちで受け取るということ。これ、相当やばくないですか? 僕これ、めちゃめちゃ興奮しました。

 そもそもみれいさんと出会うきっかけは、旦那さんの福ちゃんが、僕が昔つくっていた雑誌Re:Sの大ファンでいてくれたことがきっかけなんだけど、そのRe:Sでも当時、「お金」そのものについて考え直したいと「vol,03 物々交換してみる(2007年)」という特集や、会社や組織について考え直したいと思った「vol,09 一緒にやる(2008年)」という特集をつくったことを思い出した。というかあの頃の気持ちが再び湧き上がってきた。

 年の初めに、こんな風にみれいさんたちとお話できたことでもらったこの気づき。雇用被雇用の関係の次のかたちと定価やお金の払い方の次のかたち。この二つは、僕のなかでも今年の大きなテーマになりそうだ。

 ということで以下は定期購読いただいているみなさんにお送りする、上記から受けた僕のあたらしいチャレンジの構想のはなし。

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