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旅と編集とアウトプット

 ここのところ何かがまた弾けたように旅を続けている。直近の二週間ほどを見返すだけでも、奈良→神奈川→三重→東京→宮城→福島と、なかなかの移動。昨夜ようやく自宅に戻ったのに、明日僕は高知にいる。

 我ながらやれやれ、だ。

 僕はそんな旅の体験をアウトプットするまでのスピードがとても早いと言われるのだけれど(その日のうちどころか、大抵その場でアップする)、その理由は早く出さないと、次のインプットがやってくるからだ。

 各地の旅で得たインプットの一つひとつが日々の糧となっている僕は、心情的な意味を超えて、とてもリアルにこのフィジカルな体験の蓄積を糧としている。つまり仕事に変換してご飯を食べている。だからこそ切実にアーカイブする癖がついているというのもあるかもしれない。

 せっかくの豊かな体験もインプットするだけでは記憶に定着しない。それをアウトプットするという作業が伴ってはじめて、ようやく記憶へのスタートラインに立てる。しかしそれでもまだスタート。どうしたって薄れていく記憶に抗うには、何度も反芻する機会を得るか、もはや、思い出を外部化するしかない。

 そこに僕はSNSを使っている。

 僕は2009年からTwitterを始めているけれど、わりと最初の段階から自分の記憶の保存先だと思って使っている。だからツイログというサービスを活用して、自分で自分のツイートを検索をして、それをガイドに久しぶりの街を回ったりもする。

 ツイート時に心底感動しているはずのお店や料理を、完全に忘れてしまってることもしょっちゅうな僕は、そんな自分を記憶障害か何かかなと疑いつつも、最近は、人間の記憶には当然のごとく、それぞれのキャパシティがあるはずだと開き直っている。スマホのストレージ容量じゃないけれど、2テラくらいある人もいれば、僕のように200メガくらいしかない人もいて、そんな人は、古い記憶をクラウドサービスか何かにどんどん保存していくしかない。だからこそ、SNSにせっせとアウトプットしては僕の脳みそから外に放り出すのだ。僕は自分の記憶をまったくもって信用していない。

 こんな経験はないだろうか? 子供の頃の思い出を手繰り寄せようとした時、それが両親がつくってくれたアルバムの写真からの記憶なのか、本当に頭のなかに残った記憶なのかの判別がつかないということが。これは、記憶はアウトプットによって簡単にすり替えられることをも意味している。いくら「客観的に」と言ったところで、アウトプットする以上、客観視を努力している人の視点がある。歴史の教科書は往々にして権力者の歴史であるように、すべての歴史が誰かの視点なのだから、一人の人間に全方位なアウトプットができるわけはない。だから僕は、とても健全な状態というのはいろんな視点の意見が存在することにあると思っている。そういう意味でも僕は、多くの人に怖れず、臆さず、アウトプットしてもらいたい。

 しかし、アウトプットすることで知らず漏れ出る自分に対して怖れを持つ人が、世の中には多くいる。このことはとても自然なことだ。では僕は表現することに怖れを持たないのか?と聞かれたら、そんなわけはない。ちなみに僕はいまこのnoteもすべて、マネージャーのはっちに意見を貰ってからアップしている。そもそも、僕は熟考して物事を進めるタイプではなく、思い切りダイブな人間だと自覚するけれど、バンジージャンプであっても、思い切って飛び込むためには、しっかりした命綱の準備がなければ無理なわけで、その保証なくダイブする勇気なんて生まれるはずがない。僕にとってその一端を、はっちが担ってくれているというのは紛れも無い事実だ。しかし自分の原稿を見てくれる人がそばにいない人の方が多いに違いない。身体に命綱が取り付けられてないのにジャンプなんてできないのだから、せめて僕なりに自己完結したハーネスの準備について伝えられないかなと思った。それが今回のnoteだ。

 速さと慎重さという、およそ相入れない二つを両立させるには、何かしらのルールや仕組みを持つしかないように思う。そう思って自分の行動を見返した時に見えてきたものが3つあった。

【1】現場で写真を撮る。
 写真が好きだとか嫌いだとかそういったこと以前に、写真はたった一枚だけでも膨大な情報量を持っている。そこに記憶の体重を乗せてしまうのだ。いわば一番最初の記憶の外部化。たった一枚の写真がどれほどアウトプットの頼りになることか。写真が好きな人がいれば、写真は任せるという人もいるけれど、自分で撮るときにだけ残るものが確実にある。

【2】140字で収める(言いたいことを一つにする)。
 言わずもがなX(旧Twitter)の制約。この文字数に収めるということは、つまり言いたいことを一つにすること。これがとても大事。あれもこれもをまとめるというよりは、もっとも心に残ったものを絞る、見極める、という癖をつけていくのがいい。言葉足らずで伝わらないのは大抵、一つのツイートで言いたいことを二個以上入れるから。また、たくさん文字を書かなきゃというプレッシャーから解放されるというのもあるかもしれない。

【3】いいねを欲しいと思わない。
 あくまでも記憶の外部化。承認欲求があるのは当然だから、もちろん否定しないけど、いいね、なんてものをコントロールできると思ったり、コントロールしようという意識を持たないこと。アウトプットするということは、表現することだから、「見られる」「見てもらえる」というのは事実。その事実を事実として受け止めながらも、とにかく第一義は記憶の外部化!

 ということで、あらためて直近の奈良→神奈川→三重→東京→宮城→福島の旅を、上記をもとに写真一枚に対して140字でアウトプットしてみる。

 ◉奈良/猿沢池

 奈良では久しぶりに野点をしたいと思ったのだけれど、小雨が降ってきたので、猿沢池のほとりに座って、蓋碗にお茶っぱとお湯を注いで、お土産に貰った吉野名物 #小橋のやきもち をいただく。ポツポツと点描される水面の風情にうっとりしながら飲む温かいお茶、とてもよい時間。


 って、これだけでいいよね。その後、みんなで行ったイタリアンもとても楽しかったんだけど猿沢池の一枚で、なんか思い出せる。


 ◉神奈川/鎌倉

 日本中、旅してるのに初鎌倉。それだけになんだかいろんな憧れが膨らんで、江ノ電に乗って行った、由比ヶ浜。実はこの日、茅ヶ崎でサザンオールスターズのライブがあった。なので混雑してるだろう茅ヶ崎には行けなくて、そういうエピソードもこの一枚の向こう側に隠れてたりする。


 鳩サブレの豊島屋本店とクルミッ子の紅屋(なんと、お昼12時で商品全て完売!)に行くも、そこで甘味は買わず、昭和な老舗 #納言 でお志るこ。猛暑で疲れた体に餡子が沁みた〜。わかりやすいようにお餅の頭をお箸で出して撮影したら友人に「そうやって演出するんだ〜」って指摘された(笑)。


 ◉神奈川/横浜(黄金町)

 鎌倉を案内してもらった後、Re:Schoolの神奈川メンバーとご飯。吉田類さんも好きという黄金町の居酒屋、和泉屋で、帰る前に慌てて撮った一枚。実は僕、鎌倉旅の後半で尿路結石の激痛が出て冷や汗。駅の薬局でブスコパン買ってなんとか凌いだこの笑顔。マジギリギリだった思い出w


 ◉三重/名張

 イレギュラーなgif画像。赤目四十八滝でタイムキーピングをミスった今回の旅の隊長、Re:Schoolメンバーの美優ちゃんが勇気ある撤退を決断、行くはずだった滝を自ら表現した結果、本物より感動だと爆笑した思い出。Re:Schoolメンバーは何でもポジティブ転換するチカラがあるから大好き。


 名張市役所職員から赤目の瀧自慢酒造に転職したRe:Schoolメンバーの高倉さん。29歳、5代目当主の龍哉くんとともに蔵案内。三重県と言えば而今が有名だけど、いやいや瀧自慢の酒の美味さも伝えたいと思った帰り際、まるで給食係な帽子のなまえペンに、蔵の和やかさを感じた。


 ◉東京

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