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ツバメとマグネット
長野県TheSaunaの支配人、野田クラクションべべーちゃんのプロデュースということで絶対に体験しておきたかった海のサウナ、新潟県柏崎市のサウナ宝来洲。海風が強く、めったなことでは積もらない雪が降り積もるスペシャルな日に、福井県鯖江市から北上すること3時間半。ようやく辿り着いたそこは小竹屋という旅館が運営しているサウナで、受付と着替えを旅館で済ませ早速サウナへ。
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でも今回書きたいのはサウナのことではないので、多くは語らないけれど、想像をはるかに越える快適サウナは、随所に拘りが感じられて、以前訪れたTATEYAMA SAUNA同様、べべちゃんプロデュースサウナの信頼度の高さよ! と感動。サ室内の快適さと熱効率の高さ。海が水風呂代わりゆえの、砂落とし温水シャワーの有難さ、こんな波の高い日でもきちんと見守ってくれてる安心感。それら全てがほんと勉強になった。
さて、そんな宝来洲から車でさらに約1時間。やってきたのは燕三条。前日の福井県鯖江市同様、ものづくりが有名な街で、マイボトル運動をしていた僕にとっては魔法瓶メーカーのサーモスさんのある町。もしあなたがアウトドア好きならSnow Peakの町というとわかりやすいかもしれない。鯖江のメガネじゃないけれど、金属カトラリーにおいては国内生産の90%以上が燕三条でつくられている。
そんな燕三条にやってきたのは武田修美くんという友人に会うためだった。燕三条でも、鯖江で言うところのRENEWのような工場見学型体験イベント #工場の祭典 というのがあって、武田くんはそのフロントマンとしても重要な役割を果たしている株式会社MGNETの代表を務めている。
武田くんのことを初めて知ったのは、ジモコロのこの記事だった。
正直に言うと、記事中盤に出てくる彼のお父さんの会社、武田金型製作所の金属加工技術を示すGIF動画のインパクトが強烈で、それだけがずっと頭に残っていた。
その後武田くんとは一度だけ東京で開催されたイベントでご一緒したことがあって、その時に話してくれたエピソードが僕にとってはとても印象的で、ちょっとそのエピソードを記憶のままに、かいつまんでみると、
・地元三条市の商店街にある古民家の活用アイデアを若手スタッフたちに任せていた武田くん。
・あがってきたスタッフからの提案は、新潟らしく美味しいお米を味わえる、おにぎり屋さんを開くというアイデアだった。
・一見、なるほどと思いそうなそのアイデアを武田くんは、地元の人が訪れる商店街の古民家で、普段から美味しいお米を食べてる新潟の人がわざわざ店でお金を出してまでおにぎりを食べたいか?と指摘。
・再考した若手スタッフたちは、なんだか流行っているらしい的なところから、ある種の軽薄さをもってハンバーガー屋を始めることに着地。
・結果、きちんと売上を上げて町に定着。いまもなおお店は続いている。
というような話だった。記憶あいまいだけど……
僕はこの話をめちゃくちゃ感心して聞いていた。ふつう、ローカルを盛り上げたいといった趣旨のアクションは、風土に根ざした産品を使ったまちづくりといったところに焦点があわせられがちだけれど、そこに暮らす生活者目線になればなるほど、スタバやマックが欲しいと思うピュアな気持ちが見えてくる。それを、よそ者目線で安易に否定したり、それぞれの事情を無視した「昔ながら信仰」を押し付けるのは本当に良くないと考える僕にとって、それはもう痛快なエピソードだったのだ。
いつもよそ者としていろんな地域に訪れる僕は、役割として、よそ者目線を求められがちだけれど、僕が常に考えているのは、そこに住む人たちの幸福度だ。武田くんは経営的視点からみても何よりそこを大切にしなきゃいけないでしょと、そのエピソードをもって訴えていた。そんな武田くんに僕はなんだか勝手に共感してしまって、以来ずっと、ゆっくりお話させてもらいたいなあと思い続けていた。
武田くんと共に登壇させてもらった東京のイベントは、本来その続きを三条市でやる予定だった。ゆえに武田くんともすぐにまた会えるはずだったのだけれど、コロナ禍でそれが立ち消えてしまって、結局武田くんにお会い出来ないまま2年が経っていて、このまま状況の変化を待ってても仕方ないやと、前回書いた福井県鯖江市の新山くんと同じように、またしてもメッセージを送って会いにやってきた。ちなみに、新山くんと武田くんはもちろんお友達だ。
ちなみに、そんな武田くんのことを知るにはぜひ、先ほどあげたジモコロの追取材記事↓と
彼自身のnoteをぜひ読んでもらえるといいなと思う。親父世代の職人さんたちとの価値観の違いを感じるなか、それでも職人さんへのリスペクトを忘れず、自ら非常識をチョイスしてきた彼のリアルな思いが知れてとてもよいnote記事↓
今回、旅の途中といえど、zoom打合せからは逃れられず、燕三条に着くのが夜になってしまったので、夜ご飯をご一緒することに。そこで武田くんが予約してくれた燕三条駅近くのイタリアンがとてもいいお店だったから紹介しておきたい。
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燕三条らしく、カトラリーをはじめ調理器具などもメイドイン燕三条のものを使用。もちろん食材も新潟県産の旬のものがベースになっている。
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これまでその土地の食材を感じながら食べることはあっても、こんなにもカトラリーを意識しながら食べた経験はなかった気がする。風土を感じるのはfoodが一番だと思っていたけれど、産業から感じる風土も味わい深いものだ。
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ちなみに上のカトラリーはBitでも使われている「月桂樹」という燕市産カトラリー。なんと発売から100年が経っているいまもなお販売を続けている超ロングセラー商品。イチゴ用のスプーンとかめちゃ懐かしい。きっと今ほどイチゴも糖度が高くなかったんだろうな。このイチゴスプーンでイチゴを潰して練乳かけまくって食べてた親父の姿を思い出す。
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あらためて武田くんの実直な人柄に惚れてしまう夜。燕三条と一括りにされるこの町の、燕と三条の仲良すぎる(良過ぎて逆に的な…)問題についても、武田くんのような外の視点を持つ中の人の存在は本当にありがたい。そのわかりやすい事例として、彼がくれた一冊の漫画がある。なんと燕三条の鎚起銅器職人とその婚約者が主人公の『クプルムの花嫁』という漫画。
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この漫画の監修に株式会社MGNETとして関わっているそうだ。ホテルに戻ってすぐに読み終えたけれど、とにかくずっとイチャイチャしてる漫画で、こういうのを「いちゃらぶ系」と呼んだりすることを、とんでもない数のAmazonの高評価レビューで知った。武田くん自身、漫画やアニメが好きだったのでとても嬉しいと話していて、なんだかとてもいいなと思う。職人さんたちの仕事のこと。燕と三条で微妙に違う方言や言い回しのこと。そういったセンシティブな部分をしっかり監修してくれていることの安心感って、編集目線からするとほんと計り知れない。よいパートナーシップだ。
そのまま漫画というか本の話になり、その流れで、武田くんと出会った東京のイベントのことを思い出した。というのも、そのイベントのテーマが「三条市に本屋さんをつくる」というものだったのだ。実際にその後、書店は完成したの? と聞いてみたところ、すでに完成していて、翌朝、連れて行ってくれることになった。
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翌日も相変わらずの大雪のなか、武田くんの車を追いかけて進む。
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SANJO PUBLISHING。正直、本のセレクトや充実感など、まだまだ本屋さんとしては、のびしろいっぱいだけど、上のチラシにあるようなコンセプトはとても共感できる。最近、ミシマガジンの連載でも、町の編集者としての本屋さんの役割について書いたとことなので、どうかよい本屋に成長していってくれるといいなあと思う。イベントをきっかけに、地域おこし協力隊の枠組みを活用して本屋にチャレンジしている水澤くん、ぜひ頑張ってほしい。
その後、思いついたように武田くんが電話してくれたのは、僕の古い友人でもあるツバメコーヒーの田中くんだった。しかし燕三条は月曜定休が多いのかツバメコーヒーも今日はお休みの日。なのに出勤日だからと開けてくれることに。
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以前、田中くんと一緒に新潟市の北書店さんでトークしたのが2017年だから、もう5年近く彼ともあっていないかった。けれど田中くんは相変わらずで、久しぶり〜と挨拶を交わしただけで、ああやっぱこの人好きだなあ〜と思ってしまった。そうやって出会い頭に人を好きだなあと思う瞬間が僕には何度かあって、そういったエピソードのなかでも、強烈に印象に残っているのが、2014年にはじめて彼に会った時のことだ。
今回の旅もそうなのだけれど、その時も、神戸→秋田まで車で向かっている途中だった。兵庫県を出発し、滋賀、福井、と北陸道に入り、さらに細長い新潟を北上していく長い旅路のなかで、どうにも運転に疲れてきた僕は、なんだか急激に甘いものが食べたくなって、アシスタントのはっちに、「餅くいてぇー!」と叫びはじめていた。
甘いもののなかでも特に餅系が大好きだった僕は、滋賀なら糸切り餅、福井なら羽二重餅、石川ならあんころ餅、とそれぞれに自分好みな甘い餅をセレクトしている。そういう意味では新潟は笹団子なのだけれど、その日に限っては笹団子な口じゃなかった。というのも車内で流していたDVDの映像に桜餅を食べるシーンがあって、そのせいで僕の口は完全に桜餅の口になっていた。
はっちが近くの和菓子屋を検索してくれたものの、こういう時に限ってお休みだったり、桜餅は置いてなかったりと、途方にくれた僕は甘味のストライクゾーンをゆるゆるに広げ、始球式のアイドル並みに外角高めでも全力でストラーーーーーーイク!と右手を掲げる気持ちで、「洋菓子でもなんでもいい!」とはっちに再検索を懇願。そこで #カフェ を検索範囲に広げた時に出てきたのが、ツバメコーヒーだった。
ツバメコーヒーの田中くんは、徳島のアアルトコーヒーの庄野さんにお世話になっていたことから、庄野さんとも親交がある僕はツバメコーヒーの名前を何度も目にしていて、はっちに「ツバメコーヒーいきたい!」「とりあえずコーヒー飲もう!」とナビの目的地をツバメコーヒーにあわせたのだった。
その頃のツバメコーヒーはいまのようなカフェスペースや雑貨店的なスペースはなく、スタンドのみの営業で、はっちと二人でコーヒー2杯を注文。すると「藤本さんですよね?」と声をかけてくれた。編集者としては顔が出てる方かもしれないけれど、それでも顔を指されることなんて滅多にないし、不思議に思っていると、なんと田中くんは2006〜09年頃僕が編集していた雑誌『Re:S』を出版元のリトルモアから仕入れて自分で売っていたくらい、僕たちの活動に共感してくれていたという。こんなご縁もあるんだなあと、なんだか偶然ここに辿り着いた自分達を褒めてやりたい!と思っていたら、奇跡はそんなもんじゃなかった。
なんと、田中くんがコーヒーとともに、
「戴きものなんですけど…」と出してくれたのが、
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さ、さ、桜餅じゃーーーーーーーーーーーーん!!!!!!
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