編集という祈り
軽井沢から近い、長野県御代田町。CAMPFIREの創業者としても有名な家入一真さんと、「本屋B&B」の経営のほか、ブックコーディネーターとして活躍する内沼晋太郎くんと3人で鼎談をしていたときのこと。
会も終盤に差し掛かり、聴衆から質問を受け付ける時間、一人の女性から「編集者がやるべき一番の仕事ってなんだと思いますか?」という問いを投げられた。質問してくれたその女性は、まさに某出版社で働く編集者で、編集者のしごとの多さと複雑さから、どこまでが本来の編集者の役割なのかという迷いがあり、その末の問いのようだった。
著者として数多くの書籍を出す家入さんの立場から、また、NUMABOOKSとして出版事業もすすめる内沼くんの立場から、それぞれの回答がとても素晴らしく聞き入っていたら、当然自分にもマイクがまわってきた。
広義な編集なんてことを言い出したり、地域編集だとかなんだとか、書籍編集を超えることばかりを考える一風変わった編集者だという自覚はありつつも、本作りがその真ん中にあることに変わりはない。そんな自分の編集者としての喜びの原点みたいなところを見つめ直しながら、答えてみたのだが、それが意外にも自分にフィットした。
自分の言葉に自分でフィットしたなんておかしいと思われるかもしれないが、自分で放った言葉に自ら違和感を抱くなんてことは往々にしてある。特にこういった質疑応答タイムは大喜利みたいなものだから、即レスよろしく返答することにも意味があって、熟考している場合ではないので、思わず口に出た言葉がちょっとズレているなと感じるのは茶飯事だ。しかしそのときの返答はほどよく自分にも馴染んだ。
それは決して上手く答えられたということではなく、すなおに答えることができたという感覚。そのとき僕は、編集者にとって一番の役割は「“書いてください”と伝えること」だと言った。
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