仙台七夕まつりで思う。観光まつりで大切なこと。
行ってみないとわからない。
体験してみないとわからない。
それを信条に生きてきた僕なのに、これまで一度も体験してこなかったのは、なんとなくわかった気になってしまっていたからだ。48年生きてきて一度も体験していなかったそれとは、仙台七夕まつり。
話逸れるけど、いま僕は『発酵ツーリズム にっぽん/ほくりく』という展示のクリエイティブディレクターとして展覧会づくりに関わっている。この展示一番の面白みは、そこに実際に発酵食品たちがあることだ。それらは期間中どんどん発酵していく(笑)。すると匂いも日々変化していくし、そこにはそのとき、その瞬間に立ち会ったものだけがわかる世界と嗅げる匂いがある。「くさや」って臭いんでしょ。と頭で理解している人はたくさんいても、実際に嗅いだ人は少ない。それを実際に嗅ぐことも出来る。嗅いでみたら意外と自分にフィットする匂いでいつまでも嗅いでおきたくなるかもしれないよ。そんなことないと思うけど。
仙台七夕に話を戻す。東北三大祭りの一つとして有名な、仙台七夕まつりは8/6~8に宮城県仙台市のまちなかで開催されるお祭りで、とにかくこの時期は、夏祭りラッシュ!東北だけでも、8/2〜7 青森ねぶた、8/3〜6 秋田竿燈まつり、8/1~4 盛岡さんさ踊り、8/5~7 山形花笠まつり、8/5~7 福島わらじまつりと、目白押し。僕のような旅人編集者にとっては、毎年頭を抱える季節だ。結果、勇壮なねぶたや、技が光る竿燈につい心惹かれ、さらには青森八戸の三社大祭や、秋田能代の天空の不夜城など、周辺地域にまだまだある魅力的なまつりにまで踏み込むうちに、東北三大祭りの一つであるにも関わらず、仙台七夕を見ないままにここまで生きてきてしまった。
しかし昨年『みやぎから、』という書籍の取材で七夕飾りの製作をされている会社に伺い、現場を拝見させてもらってから、俄然、仙台七夕を体感してみたくなり、今年こそはと早めにホテルを押さえた。
雪深く寒い冬の季節に、溜まりに溜まったエネルギーを一気に爆発させるかのような夏祭りが多い東北。そう思えば確かに仙台七夕は「静」の祭りかもしれない。「ねぶたや竿燈が“動”ならば、仙台七夕は“静”だから」と地元の人に若干ネガティブなトーンで言われることが多いのも頷ける。確かに、大きな山車や神輿がぶつかり合うような男臭い祭りではないけれど、だからといって静かな祭りかというと、そうでもないように思う。その豪華絢爛な姿ゆえか、「静」という表現にはどうも違和感がある。
仙台駅前すぐのアーケードを入り口に、幾重にもわたって飾られる大きな七夕飾り。くす玉の下に長く垂れ下がる吹き流しを、かき分けかき分け歩くのが特徴だ。しかしコロナ禍での開催ということで、地上2m以上の設置が義務付けられた非接触型の七夕ゆえ、かつてのように吹き流しをかきわけながら歩くことは出来ない。だけど仙台の人たちにとっては、それがかえって新鮮だったという。吹流しの中を下から見上げられるなんてことはこれまでなかったからだ。
これら沢山の七夕飾りの姿を、何度も写真でみていた僕だけど、それらが金属のポールのようなものではなく、竹に吊られていることを現場で初めて知った。また先端には我々がよく知る、笹と短冊も飾られていて、そこにはやはり人々の願いがこめられているのだと知る。さらには商売繁盛を願う巾着や、豊作豊漁を願う投網の飾り付けもあり、冒頭で書いたように、現場に来なきゃわからないものばかり。あらためて、カラフルなぼんぼりが沢山並んでる祭りでしょ的な理解のまま生きてきた自分を恥じた。
七夕まつり期間は初体験なものの、仙台には20回以上訪れている僕にとって、地味に大発見だったのが、商店街の地面にある、この小さなマンホールのようなもの。
いまとなっては、ここに描かれた七夕の絵で想像できただろ! と思うのだけれど、この蓋をあけたところに七夕飾りの竹を刺すようになっていると知って、なんだかめちゃくちゃテンションが上がった。
これ、丸い蓋にしたらより可愛いのに、とも思うけど、なにか理由があるのかもしれない。
ちなみに今年一番注目を集めていたのが、復興折り鶴飾り。地元の小中学生が折ったその数なんと85,000羽!これが本当に美しかった。
アパホテルのベッドに置かれている折り鶴(あれ、なんかこわくない? いやじゃない? ぼくだけ?)とか、無配慮にウクライナに送りかけたおばちゃんたちの折り鶴とか、もはや折り鶴というものに良いイメージを持てないでいる僕だけど、それでもこの折鶴をとてもとても美しく思った。
青と白の折り鶴たちが陽の光に照らされてキラキラ輝いてた。
ねぶたや竿燈との比較から仙台七夕を「静」の祭りだと表現することに違和感があると書いたけれど、敢えて僕が東北三大祭りを表現するなら、心・技・体なんじゃないかと思った。
言わずもがな、
「体」がねぶた。
「技」が竿燈。
「心」が七夕だ。
つまりは3つすべて大切だってことだ。どこが1番とかじゃなく、今回仙台七夕まつりに来て、東北三大まつりのすべてを体験出来たことで初めて見えてきたものがある。
こういうストレートな祈りはもちろんのこと、そもそも願いを飾る七夕まつりは、願う心の表現こそが大切なのだと思う。だから、例えば楽天モバイルの七夕飾りのような、写真を撮る気にすらなれなかった利己的なPR飾りは見ていて気持ちよくなかった。この「AOKI」とかでもギリギリアウトな気持ち。
この「タイトー」とかは、控えめなインベーダーが力作で素敵。
「こけしのしまぬき」の飾りなんて最高にフォトジェニック!
「イタリアン・トマト CafeJr.」そうなるよね。わかる。
大好きな「そばの神田」、来年は吹き流しを蕎麦にしてほしいな。
仙台七夕まつり。ほんとよいお祭りだった。ぜひいつか体験してみて欲しい。そして僕もいつか吹流しを掻きわけて歩く本来の七夕まつりを体験してみたいなと思う。
なんてしみじみと祭りを振り返りながら、仙台七夕最終日の夜の商店街を歩いていたら、僕にとってはドンピシャなもう一つのまつりがそこで行われていた。まつりのあと祭りとでも言おうか。とにかく写真をみて欲しい。
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