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コロナ以前には戻らないのだから。

 テレワークな日々。あらためて、うちの会社(Re:S/有限会社りす)はコロナ以降の世の中にゆるやかにシフトしてたように思えてしかたない。というのも、そもそもうちの社員は基本誰も会社(事務所)にいかない。だからといって電話を転送するとか、そういう類の対応もしていない。だから「あの会社いつ電話しても不在だな」といろんな人に言われてると思う。けれどそんなこと最早、社員誰一人気にしてない。そもそも経営者である僕が、鈍感なのか麻痺してるのか、そういうのを恥ずかしがったりする気持ちを微塵も持ち合わせていないので、たまに行った事務所でちょうど電話がかかってきたりすると、用件より何よりこのタイミングで電話してくるなんてラッキーな人だなあ、なんて思ったりしてる。

 いまどき、急な重要案件は、携帯メッセージやフェイスブックメッセンジャー、もしくはLINEなんかで連絡が来るから、まったく不都合を感じることはないし、わざわざ事務所にかかってくる電話なんて、ほとんどがセールスだ。いまや意味不明なハンコ文化と同じく、そろそろ会社の代表電話なんかもなくなっていいんじゃないかと本気で思う。

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 うちは、二年前から「りすなお店」というECサイトも運営しはじめたので、その商品の管理、発送業務で事務所に行ったりするのだけれど、それもサッと準備して発送を終えてしまったらすぐ出て行く。とにかく無駄に事務所に居続けないのが僕らの流儀だ。だから新型コロナウイルスで大変な世の中になってなお、日々の動きはほとんど変わっていない。自宅近くのカフェでいろいろを済ませていたのが、自室になったくらいの差だ。

 しかし世の中の多くの会社はそうもいかない様子。それこそ誰か一人くらい会社にいなきゃ電話かかってきたときにまずいだろう的な空気でも流れてるんだろうか。東京の満員電車のニュースを不思議な気持ちで眺めながら、その理由について考えていたら、ぼくのなかで一つの結論めいたものが見えてきた。医療従事者のみなさんなどは、本当にありがたく感謝しかないけれど、この期に及んで、なんでこんなにも多くの人が会社に通っているのか、その理由は、会社(経営者)が社員を信用していないからじゃないか。繰り返すようだけど、Re:Sの社員は事務所に行かないから、そもそも出社という概念がない。しかしそれは、誰に管理されることもなく、自らの責任で仕事を遂行していかなければいけないということでもある。

 たとえば、うちのもう一人の編集者、竹内厚がいまどこでなにをしてるか? 僕はほんと何も知らない。もちろん彼も僕の動きを把握なんてしていない。それでもお互い、一定以上の売上げを会社に入れ続けているから、それぞれ頑張ってんだなあという感じ。その根底にあるのは、それぞれがそれぞれの能力を信じ、信頼しているということだと思う。手前味噌だけれど、竹内は僕とはまったく違うタイプのめちゃめちゃ優秀な編集者だ。

 ちなみに僕は日々の経理事務をほとんど妻と会計士さんに任せている。さすがに決算時期にいろいろ確認したりするくらいで、あとは気まぐれに状況を確認をするだけだから、世間で言うところの優秀な経営者ではまったくない。そんなダメ経営者の僕が自信を持って言えるのは、社員を心底信用しているってことくらいしかない。これは果たして度胸なのか楽観なのか、それともバカなのか。その理由がなんであれ、僕はこの信頼とか信用をもって会社を運営している。だからこそ、それぞれ自由に仕事がすすめられるんだと思う。

 こういうやり方は、従来の会社経営としては間違いなんだと思う。現実、まわりの人間の誰一人、僕を経営者とはみていない。もちろんそれが嫌なわけでもない。けれど、僕は僕なりに「会社ってなんだ?」という問いに、誰かの答えの引用するのではなく、また自身の答えを誰に伝えるでもなく、ただひたすらに実験&実践してきた。常にチェンジし続けながら、なんとか自分たちにとっての“ふつう”という平衡を保ち続けてきた15年の会社経営だったなと思う。

 その結果が、いわば限りなくフリーランスに近い自由さと、それでいて何かあったときは助け合えるという組織の安心感を併せ持った状態にあることは、いまとても幸福だ。しかしそういう状態に「完成」や「ゴール」はない。いまそのような状態にあるというだけで、僕たちはこれからも誰に知られることなく、自分たちの心地よさを求め続けながら、微妙に変わり続けていくんだろう。

 もちろんこれはうちのように社員数が二桁に満たない小さな会社だからこそやれることかもしれない。でもそうだとしたら、もっとみんな小さくなればいいんじゃないかと思う。このことはどこかでまた書きたいと思うけれど、僕は会社を大きくしない成長という一見矛盾したようなテーマを2011年に掲げた。実際、何人かの社員に前向きなフリーランスへの移行を提案して、結果的に社員数を減らした。念の為に言うと金銭的理由ではない。けれどやっぱりあの判断は間違ってなかったなあと思う。Re:Sではデザイナーだったけど、その時にフリーになる決断をした、現在は写真家の濱田英明など、それぞれの活躍を見ていたら余計にそう思う。

 テレワークは出社という概念が根底から覆される。経営者はいま目に見えてわかりやすく人を管理できなくなっている。そのとき目の前につきつけられるものは、信頼だ。多くの組織上層部の人たちにとって、「信じる」や「待つ」といった、とても胆力のいる局面がいま訪れているはずだ。そしてまた現場で働く人たちも、管理される一方で守られていたさまざまから旅立ち、自ら率先して間違い、つまづくことを強いられている。だけどそれこそが僕は真の成長だと思う。


 いまぼくたちはいよいよ泥臭い道を歩くことを求められている。コロナ以降はコロナ以前の世界ではない。早くあの頃に戻りたいとか、そんなの、バブルの頃に戻るぞとコブシ突き上げ続けてる爺さんたちと一緒だ。元に戻れないことはけっして残酷なことではなく、希望だと僕は思う。だから変わろう。勇気を持って。

 もう満員電車に揺られる必要なんてないよ。


 ここからは定期購読いただいている方にのみお届けする一人語り動画です。今回は自分の会社のことをつらつらと。2011年に、当時の社員みんなにRe:Sをやめてフリーになることを提案したときの話をしています。時間のあるときにぜひ。

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コロナ以前には戻らないのだから。

藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年兵庫県在住。『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『風と土の秋田』『ほんとうのニッポンに出会う旅』共にリトルモア、『魔法をかける編集』インプレス。『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』など手掛けた書籍多数。

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2006年に創刊した雑誌「Re:S(りす)」編集長の藤本智士が、いまあらためてお届けする、あたらしい“ふつう”のnote「Re:S」。 日々のこと。旅のこと。地方のこと。編集のこと。 記事アップは月4回以上かなぁ。

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