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【在校生&卒業生進路インタビュー】大学でもアメリカンフットボールを続けたい! スポーツと学びの両立を目指して上智大学へ

自由学園高等科にアメリカンフットボール部を作り、初代キャプテンを務めた中畝晴登さん。先生の誘いが最初のきっかけでしたが、そのおもしろさに魅了され、卒業後も続けていく道を選びました。

中畝さんは、公募制推薦で上智大学文学部哲学科に進学を決め、2023年春から大学生活を送っています。一時期は進学自体を迷っていましたが、大学受験を決めました。その理由、教科学習への迷い、アメリカンフットボールと学業の両立にかける熱い想いなどをうかがいました。

◆ アメフトに夢中になった高等科時代

高等科ではアメリカンフットボール部(以下、アメフト部と表記)の立ち上げに奔走し、キャプテンとしてみんなを引っ張る存在だった中畝さんですが、中等科時代はサッカー部に所属していました。アメフト部で活動を開始するまで、実際にプレイしたことはなかったといいます。

「サッカー部の顧問の竿代誠二先生に、中等科の頃から『高等科に入学したら一緒にアメフト部を創ろう』と誘われていました。

それまではアメフトについて全然知らなかったんですが、サッカー部の練習の後に先生に教えてもらったり、一緒にプレイ動画を見たりしているうちに、楽しそうだな、やってみたいなと思うようになりました」

小学校の頃からサッカークラブに所属し、スポーツが好きだったという中畝さん。新しい競技への好奇心が高まり、高等科でアメフト部としての活動を開始しました。

自由学園時代のアメフト部メンバー。中畝さんは前列左から3番目。

メンバーは比較的順調に集まりましたが、半分以上がスポーツや運動部未経験者。部活ではどんなことをするのか、なぜほぼ毎日練習しなければいけないのか。通常の運動部なら当たり前のことも、説明や対話を繰り返して合意していく必要がありました。

部活では、とにかくたくさんミーティングしましたね。メンバー同士で『今どういう気持ちで練習しているのか』などを話してもらったり、僕自身も思っていることを伝えたり。みんなが同じ方向を向いて、ともに頑張っていける環境を目指しました」

最初は試合に出ても負け続けていた自由学園アメフト部でしたが、こうした話し合いの効果が出始め、少しずつ勝てるまでに成長していきます。

「他の部活と交代で場所を使用しているため、グラウンド練習は週に2回ほどしかできません。限られた時間を有効活用して、練習する必要がありました。グラウンドが使えない日は筋トレをしていましたが、それも各自に任されている部分が大きかった。でも、みんな自然と集まってきて、結局のところ、トレーニングを合わせればほぼ毎日練習しているかんじでした」

プレイだけでなく、こうしたチームづくりの醍醐味も経験し、すっかりアメフトに魅了されたと話します。そして、アメフトと他のスポーツとの違いをこう語ってくれました。

「例えばサッカーだったら、どんなポジションでもボールを扱う技術は必要になりますよね。でも、アメフトは球技なのにボール捌きがあまり得意じゃなくても、力を発揮できるポジションがあるんです。

キック力が問われるポジション、ボールを正確に投げるスキルが重要になるポジションなど、求められるものが明確です。それぞれが自分のポジションの『プロフェッショナル』としてプレイします。いろいろなタイプの人が自分の得意な部分を磨いて活躍できる、輝けるのがアメフトの魅力だと感じています」

◆ 大学進学への迷いと哲学への目覚め

高等科時代に一番頑張ったことは? と聞かれたら、迷わず「アメフト部の活動」と応える中畝さんですが、教科学習では「これが得意」「すごくおもしろい」と感じる分野はなかったそうです。

「勉強自体は嫌いではないし、学校の学びも全体的に取り組んでいましたが、ずば抜けて好きな科目がなかったんですよね。具体的に進路を考え始めた高2のときは、どの学部を選択すればいいのか……、結構悩んでいました。

だから、ある時期は大学に行くかどうかも迷っていたんです。だけど、『やっぱり卒業後もアメフトを続けたい』という気持ちが強くなって、最終的には大学進学を決めました」

大学進学以外に、アメフトを続ける方法はなかったのかを訊ねると「社会人のチームに入るという選択肢も可能性としてはあった」と前置きして、こう続けます。

「だけど多分、僕の中で『大学のアメフト部でプレイする』ことへの憧れが強かったんですね。大学アメフトってカッコいいな、とも思っていました」

そしてもう一つ、高等科2年生の頃、大学進学を後押しする変化が訪れます。哲学との出合いです。

「1学年後輩に、すごく仲のいい子がいたんです。彼が哲学関連の本をたくさん読んでいて、僕にも読んだ感想や自分の考えを話してくれることがありました。正直それまでは、話を聞いても全然興味を持てませんでしたが、ある時彼が教えてくれた本の内容がすごくおもしろくて。自分でも読んでみようかなと思ったんです。

そうしたら熱中してしまって。本格的に哲学を勉強してみたいと考えるようになり、大学は哲学が学べる学部に行こうと決めました」

こうして高等科2年の終盤から、「アメフト部があり哲学を学ぶことができる大学」探しが始まりました。

◆ 公募制推薦でスポーツと学業を両立する上智大学へ

志望校選びの参考にするため、大学のアメフト部の試合を見学に行った際、中畝さんは「上智大学が自分に合っているのではないか」と直感的に思ったそうです。

「できれば高いレベルの環境でプレイできることを望んでいましたが、同時に1年生から試合に出るチャンスがある大学に行きたいとも思っていました。そういう意味では、スポーツ推薦のない大学を希望していました。

上智大学にはスポーツ推薦はありませんし、自由学園のアメフト部の雰囲気と似ているなと感じました。上智大学のアメフト部員は、みんな勉強とアメフトを両立させてきた人たちです。スポーツが最優先でそれだけやってきたわけではなく、学業とスポーツのどちらも大切にしています。

自由学園でも、勉強に加えて自治や寮生活などで忙しく、部活の練習時間も限られる中で、自分たちで工夫しながらトレーニングしてアメフトと向き合ってきました。そんなところが共通していて、魅力的でした」

アメフト部に心惹かれ、文学部に哲学科もあったことから、上智大学を第一志望としました。その他に、家族の勧めもあり、もう一つ別の大学も受験することを決めます。両大学とも、推薦型入試に絞って準備を進めることにしました。

高校生活で多くのエネルギーを注ぎ込んできたアメフトを、最後までやり切りたいと思っていました。高3の秋までアメフト部の試合があるので、それと両立できる方法をと考えて、推薦型入試を選びました」

自由学園時のアメフト部の試合風景

上智大学は学校選抜型・公募制入試、もう一つの大学は総合選抜型(AO)入試を受験。後者は残念ながら不合格でしたが、憧れの上智大学には無事合格することができました。

両方不合格だった場合は、浪人での挑戦を覚悟していたという中畝さん。2023年春から、上智大学にてアメフトと哲学の学びが始まりました。

◆ 憧れの大学生活 実際は?

中畝さんは2024年2月現在、上智大学アメフト部「ゴールデンイーグルス」に所属し、努力の甲斐あって1年生から試合に出場しています。憧れの大学生活は、どのような日々なのでしょうか。

ゴールデンイーグルスで試合に出場する中畝さん(上智大学アメリカンフットボール部提供)。

「毎日ハードですが、自分の想い描いていたキャンパスライフを過ごせていると思います。アメフト部については、試合を見て感じたとおり、日々の練習やトレーニング、ミーティングをメンバー一人ひとりが積極的に取り組んでいます。

『選手主体』のチームだと実感しますね。上級生が中心となってチームの方針やトレーニングの詳細などについて話し合いますが、きちんと下級生の意見も聞いて尊重してくれますし、みんなで話し合って決定します。

ただ、学校生活全体としては、すごく忙しくて日々追われています。学部の勉強も課題などが多くてなかなか大変ですが、『部活をしている』というのは言い訳になりません。時間を見つけて取り組んでいます」

試合で活躍する中畝さん(上智大学アメリカンフットボール部提供)。

大学アメフトのリーグ戦は秋に開催。9月〜12月まで2週間に1回のペースで試合があります。リーグが始まると、相手チームの試合動画などを見て分析する時間も必要となるため、練習とミーティングが終わるのが21時頃になるといいます。もちろん授業やレポートなどもあるため、時間をどう捻出するのかが課題になるのだそうです。さらに、春〜夏にかけてもオープン戦(練習試合)が組まれており、余裕がない毎日が続きます。

授業は1年生で基礎的な科目も多いそうですが、「哲学演習やディスカッションなどのクラスが楽しい」と話す中畝さん。多忙な中でも充実した時間を過ごしていることが伝わってきます。

◆ 「求めたら惜しみなく与えてくれる」自由学園の進路指導

大学での中畝さんの活躍を、自由学園アメフト部の顧問・竿代先生はとても喜んでいます。高等科時代、中畝さんは進路についても竿代先生に頻繁に相談していたと話します。

「上智大学について相談したときも、『いい環境なんじゃないか』と言ってくれましたし、実際に推薦入試の対策や書類作りもアドバイスしてくれました。

推薦入試に関しては、竿代先生だけでなく、教頭の山本先生にも協力してもらいましたし、山本先生の紹介で、自由学園最高学部(大学部)で哲学を教えている准教授にも助言してもらいました。入試のレポート対策という意味もありましたが、哲学の本の内容を解説してもらうことなどを通して、より興味を深めることができました」

自由学園の先生方の進路への関わり方は、「求めたら惜しみなく与えてくれる」スタンスだったと振り返ります。

「生徒が決めるまでは、何かを一方的に勧めてくるようなことはありませんが、方向性がはっきりしたあとは、すごく熱心にサポートしてくれるんですよね。それがとても心強かったです」

高等科時代のアメフト部での経験が進路につながった中畝さん。大学卒業後については、こう話してくれました。

「今の生活を突き詰めていった先に、もっと続けたいと思えば、社会人でもアメフトをやるかもしれません。それも視野に入れて、今は毎日練習を頑張っています」

◆ 大学進学は「やりたいことをやる」ための手段でしかない

アメフトも学業も手を抜かず、多忙ながらも充実した大学生活を過ごしている中畝さん。これから進路選択をする人は、どんなことを大切にすればよいかと訊ねると、迷うことなくこう話してくれました。

大学受験は、『自分のやりたいことをやるための手段』だと思うんです。合格でも不合格でも、これからの人生が大きく変わってしまうことはない。たとえ希望の大学に行けなかったとしても、別の場所でやりたいことをやる方法はあると思います。

僕の場合は、上智大学に入学できなかったら、2年目に再度挑戦していたかもしれないし、もしかしたら『やっぱり社会人でアメフトに挑戦したい』と考えて、方向転換していたかもしれません。

結果にとらわれずに、やりたいことにチャレンジしてほしいなと思います

中畝さんにとっての「アメフト」や「哲学」のように、高校時代にやりたいことが見つからない場合は、どうしたらよいでしょうか。

日々の生活の中にヒントがあると思います。特に自由学園は、机上の勉強だけでなくいろいろな分野の学びに触れることができるので、そこでの経験はすごく貴重だったと思いますね。

人との関わりも大切だと感じます。僕が哲学に興味を持ったのは、下級生の話がきっかけでしたが、寮生活の中でともに過ごす時間が長いので、自然と距離も近くなるんですよね。他学年の生徒と話すことで、視野が広がったと思いますし、中等科の頃から高等科の先輩の様子を見ていたことで、将来のことを考えるきっかけにもなったと思います」

今後もゴールデンイーグルスでの活躍が楽しみです(上智大学アメリカンフットボール部提供)。

自由学園での生活が、進路選択に大きな影響を及ぼしたと話す中畝さん。アメフトの活動や後輩との関係性が、その先の道へとつながっていきました。

一見順調そうに見える中畝さんの進路ですが、「何が学びたいかわからない」と悩んだ時間があったからこそ、その後の自分の興味や「こうしたい」という具体的な選択にたどりついたのでしょう。

悩み、迷っても、今できることに誠心誠意向き合う。毎日の生活を大切にする。中畝さんが語ってくれた言葉が、彼自身を支えてきたのだと実感しました。

今後もますます輝く姿を見せてくれるでしょう。


取材・執筆 川崎ちづる(ライター)


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