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濁った色にこそ『佐倉桃詠』

桃詠に、誰かを救いたいなんていう気持ちはこれっぽっちもなく、ただ、華やかに戦う自分の姿を見てもらいたい一心、桃詠は、誰からも認められる才能が欲しかった。
桃詠の承認欲求は、とてつもなく気味の悪い色をしていて、魔法少女が纏うべき眩しいピンク色とはかけ離れたものだけれども、人々の目を惹くのが、純粋な色だけとは限らないように、その、禍々しい色を内包した戦いは、インターネットを漂う暇な消費者達の胃袋に、心地よく溶けていく。
純粋な作品。承認欲求によって生み出されたものではなく、ただ、魂の具現の快感のみを追い求め続けた末に産まれたものこそが真の価値を有しているというのなら、本当に素晴らしい作品は、この世の誰にもその存在を知られることなく、時間の流れとともに朽ちていってしまっているのではないの?桃詠の気味の悪い心臓から生み出されたものが清いものではないのだとしても、桃詠という魔法少女の存在そのものが、人々の認識によって証明されている事実のように、濁った色にこそ、それ特有の価値があると思いたいの。

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