見出し画像

to be continued いつかのあなたの絶望が、

わたしは大人です。もう世界を変えようとは思わなくなった。昔、あんなに心を動かされた物語に、今はもう、見向きもしませんよ。世界平和とか、まじでどうでもいい。わたしの半径5kmくらいが平和ならそれでいい。
海の近くには住みたくない。山の中もちょっとヤダ。津波と土砂崩れが怖いから。日本中が台風に怯えていても、窓の外で、雨の轟音と風で何かが吹き飛ばされてどっかにぶつかっているような音を聞きながら、お布団の中でぬくぬくしている。それで良い。わたしはもう大人だから、地震とか戦争とか疫病とか、そういうものは、自分の力ではどうしようも出来ないんだって思ってしまった。
気味の悪い笑顔だって、なんの苦労もなく自然に提供できるようになりました。だって、その方が楽だもの。困ったときには、ちょこっと眉毛を下げます。そうして、「すみません」と言います。たいていの心配事は、これでなんとかなると学びました。図書館で借りた本をなくして人生の終わりだと絶望していた女の子は、仕事の書類をなくしても「すみません」で簡単に人生を続けられると知っている成人女性になりました。
ねえ、これでいいかな。もう満足?このまま死にたくないの気持ちだけで生きてゆく?

to be continuedだ。
全てを諦めたわたしは、すべての殺意をあの子に託すよ。すべての殺された殺意をあの子に託す。
あの日、わたしを裏切ったあいつを、わたしの尊厳を踏み躙ったあいつを、ブスと言ったあいつを、ヤリ捨てたあいつを、想像力のないあいつを、魔法少女が殺してくれる。わたしの幸福を邪魔する全てを、あの子が。
惨めに生きている惨めなわたしは、魔法少女ごしに世界を見ていたい。そうしたら、少しだけ惨めじゃなくなる。

わたしは生活が好きです。小さくて古い真っ白なアパートの中で、ご飯を作ったり、掃除をしたり、桜の木のお世話をしたり、ひとりごとを言ったりする今の生活が好き。昔よりちょっとだけ穏やかになったわたしがやっと見つけた、たくさんの試行錯誤の末に手に入れたほんとうのさいわいなの。絶対に守りたい。守らなくてはならない。でも、それだけじゃ足りない。わたしは全てに勝ちたい。見返したい見返したい見返したい。
この5.5畳の部屋から全てを手に入れたい。この世の美しいもの、全部味わい尽くしたい。

魔法少女がいる。あの日、世界に絶望し、確かに死を願った、今のわたしとは少し違う道を選んだわたしがいる。殺意を魔法に変えて戦っている。
to be continued そんな絵をかいている。

いつかのあなたの絶望が、今のわたしの希望になっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?