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日本サンゴ礁学会の見どころ まとめ

Re:Coral(リコーラル)です。

本日11月21日(土)から23日(月)まで、
日本サンゴ礁学会*1の年次学会が開催されます。

筆者は初めて(オンライン)参加します。
最近の研究・新しい発見など、とても楽しみです!


学会の発表コンテンツは大きく分けて
「口頭・ポスター発表」「ワークショップ」「オンライン企画」があります。

先日学会参加者向けに要旨集をいただきましたので、
珊瑚研究者ではない筆者が、個人的に気になる発表トピックについて
各コンテンツ分野ごとにまとめてみたいと思います。

【口頭・ポスター発表編】蓄積型栄養塩が珊瑚骨格形成に与える悪影響について

正式タイトル:蓄積型栄養塩のサンゴ骨格阻害メカニズムと影響評価法の構築
発表者:産総研・飯島真理子さん など

過去の記事で、珊瑚の白化には
グローバルレベルでは地球温暖化、ローカルレベルではその地域の土地利用など、様々な要因が関係していることを書きました。

この発表では「蓄積型栄養塩(沿岸域に蓄積している陸由来の栄養塩。栄養塩は生物に必要な塩類であるものの、多すぎたり少なすぎたりすると生態系など環境に影響をもたらす)」に着目し、この栄養塩が珊瑚がカルシウム質の骨格を形成するのを阻害する影響について調べています。

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まだこの分野についての調査・研究が少ないらしく、
さらに、栄養塩の性質や濃度などは地域によって異なるはずです。

今回の研究をはじめ、栄養塩と珊瑚の関係について理解が深まっていくことで、今後珊瑚保全のための対策検討も進むことを願っています。

【口頭・ポスター発表編】連続移動式サンゴ放流手法の開発について

正式タイトル:サンゴ幼生収集装置を用いた連続移動式放流手法の検討
発表者:国際航業(株)・門倉 由季さん など

地球温暖化などが原因で、2008年時点で世界の約2割の珊瑚が死んでしまったといいます*2。

既存の自然の珊瑚を守ることももちろん大切ですが、
珊瑚たちが自律的に回復するには時間がかかります。

そこで、人工的に育成した珊瑚を効率的に海に放流する方法が必要になってきます。

また、海に放った珊瑚がすべて定着するわけではありません。

珊瑚を手で一つ一つ丁寧に植え付けるには、時間がかかりすぎますし、
そして植え付けたとしても、その全てが育つわけではないのです。

この発表で触れる予定の方法では、
4日間で約1,000万個体もの珊瑚幼生を放流できたそうです。

今後、こういった珊瑚放流手法が確立されていくことで、
より効率的に珊瑚を海に放流することができるようになります。
今後の展開に期待ですね!

【口頭・ポスター発表編】ミドリイシサンゴの全ゲノム解読と環境適応戦略の可能性について

正式タイトル:18 種のミドリイシ科サンゴの全ゲノム解読が明らかにする,ミドリイシ属の環境適応戦略
発表者:東大 大海研・新里 宙也さん など

現在存在する珊瑚の中でも、最も多様な種があるミドリイシ属サンゴ。

この種類の珊瑚のゲノム解析の結果、
祖先は恐竜のいた時代、白亜紀に誕生したことがわかったそうです。

白亜紀は現在より温暖な気候で、その後に涼しい時代に入っていくにつれて
珊瑚の種が増えていったそうです。

過去の環境変化にどのように珊瑚が適応してきたのかを調べることで、
今後も予想される気候変動にどのように珊瑚が適応できる可能性があるのか、シミュレーションがしやすくなるはずです。
今後さらなる研究に期待です。

【オンライン企画編】モーリシャス貨物船座礁事故のその後

正式タイトル:モーリシャス貨物船座礁事故
発表者:国立環境研究所・牧 秀明さん など

今年7月にインド洋モーリシャス諸島沖で発生した、貨物油輸送船の座礁事故。
この事故によって、約1,000トンの重油が海に流れ出したと言います。

生態系に与える甚大な悪影響が危惧され、
日本からも調査隊が派遣されていました。

モーリシャス

引用:Googleマップ

この発表では、その調査・活動内容と今後の対策についての報告・発表がなされるとのことです。

実際のところどの程度生態系への影響が見られたのか?、
また今回の事故対応から今後に活かせる知見が何か得られたのか?
気になるところです。

【ワークショップ編】珊瑚保全についての国内外の最新動向

正式タイトル:サンゴ礁保全に関わる最近の国内外の動向について
発表者:沖縄県立芸術大学・藤田 喜久さん など

私たちRe:Coral(リコーラル)としても、
まだ活動を始めたばかりで、情報収集がまだ足りていないと感じており
これはとても気になる発表です。

世界全体の動きや日本政府の動きなど、
珊瑚保全を取り巻く全体像をつかむことのできる良い機会なのではないかと思っています。

おわりに

この記事を公開する頃には学会がスタートします。(記事の準備が遅くなってしまいました)

学会が終わったら、参加報告記事を出したいと思っています。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

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このnoteでは、珊瑚に関する研究の紹介や他団体の取り組み内容など、珊瑚に関連する情報を発信していきます。

また、Re:Coralの活動に少しでも多くの方が関わっていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。興味のある方は是非ご連絡ください!

連絡先:recoral2020@gmail.com

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参考文献
*1:日本サンゴ礁学会公式サイト
*2:Global Coral Reef Monitoring Network (GCRMN) 団体による2008年報告書 “Status of Coral Reefs of the World: 2008”

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