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温暖化だけじゃない。珊瑚白化の原因について

Re:Coral(リコーラル)です。3回目のnote投稿になります。

過去2回の記事で珊瑚の白化について触れましたが、
今回は珊瑚の白化の原因について、ご紹介したいと思います。

珊瑚白化の原因には何がある?

珊瑚白化の原因として、地球温暖化による海水温の上昇がよく取り上げられます。

特に1980年代以降、珊瑚の白化が頻繁に確認されるようになり、
地球温暖化による海水温の上昇と珊瑚との関係について
多くの研究がなされるようになりました。


事実、全世界の海水温はここ100年で0.55度上昇傾向にあります。

気象庁の最新報告(2019年)によると、
昨年2019年は、2016年と並んで、観測史上最高値(平年差+0.33度)を記録したとのことです。

年平均海綿水温(全球平均)の平温差の推移

引用:気象庁・海面水温の長期変化傾向(全球平均)*1

温暖化による長期的な海水温の上昇も無視できない一方で、
気候変動などによる短期的な海水温の上昇も、珊瑚白化に大きな影響をもたらします。


過去、1997〜98年に世界的に観測された大規模な珊瑚の白化は、エルニーニョ現象によって短期的に高水温がもたらされた*2からだと考えられています。


さらに、2017年にネイチャー誌に掲載された驚くべき報告もあります。
その報告では、2016年に発生したエルニーニョ現象によって、オーストラリアのグレートバリアリーフの約9割以上が白化した*3と結論づけています。


さて、海水温の上昇の他に、珊瑚白化の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?

こちらの図をご覧ください。

珊瑚が受ける環境ストレス

引用:日本サンゴ礁学会誌 第19巻 41-49(2017)*4

これらの要因を理解するポイントは、以下の2つだと思っています。

①連鎖する要因
②「グローバル」と「ローカル」という視点


連鎖する要因

先ほどの図からもわかるように、珊瑚白化の要因には様々なものがあり
そして、それらの要因は連鎖しているのがわかります。

では、これら個々の要因が珊瑚の白化に与える影響はどれくらいなのでしょう?


オーストラリアのグレートバリアリーフを例にとると、
2012年に発表された論文*5では、
グレートバリアリーフの珊瑚被度(珊瑚で覆われた地域の広さ)の減少の要因内訳は、サイクロン(熱帯低気圧) 48%・オニヒトデによる食害 42%・珊瑚自体の白化 10%と評価しています。

オニヒトデ

引用:オニヒトデはサンゴの天敵! 刺されたら、どうすればいい?

個々の要因がどの程度珊瑚の白化に影響を与えているのか、
その影響レベルはその土地の気候状況や社会経済・土地利用などによっても変わってくるため、さらなる研究・調査が期待されます。

「グローバル」と「ローカル」という視点

珊瑚白化の全体像をつかむためには、
「グローバル」すなわち地球規模で共通する要因と、「ローカル」すなわちその土地で固有の要因、これら2つの視点も重要です。


2011年に発表された報告*6によれば、
ローカル要因によって全世界の約30%の珊瑚が、そして高水温などのグローバル要因によって全世界の約40%の珊瑚が危機にさらされていると試算されました。

この調査からもわかるように、
珊瑚の白化を防ぐには、グローバルとローカル両方の視点からのアプローチが必要だと言えます。


グローバルな視点では、二酸化炭素などの温室効果ガス排出による温暖化や海洋酸性化などがある一方で、
それぞれの地域(ローカル)の状況は異なり、注目されるべき要因は異なってきます。

日本では(国として)現在どのような取り組みがなされているかというと、
2015年に「サンゴ礁生態系保全行動計画 2016-2020」*7が策定され、
その中で以下の3つが重点的な取り組みとして選定されました。

●陸域に由来する赤土等の土砂及び栄養塩等への対策の推進
●サンゴ礁生態系における持続可能なツーリズムの推進
●地域の暮らしとサンゴ礁生態系のつながりの構築

また、2016年に日本で観測された大規模な珊瑚白化現象を受けて、
翌年2017年にサンゴ大規模白化緊急対策会議*8が開催されました。
その会議では以下11つの施策が決定・宣言されています。

サンゴの大規模白化現象に関する緊急宣言

引用:環境省・「サンゴ大規模白化現象に関する緊急宣言」(概要)

珊瑚の保全に向けた取り組みは、まだ始まったばかりなのです。

おわりに

私たち人間の活動は、取り巻く環境へ多大な影響をもたらしてきました。
様々な要因が複雑に絡み合い、現在も珊瑚の白化が進行しています。

珊瑚の白化を防ぐには、珊瑚白化のメカニズムをまず理解することが重要です。

グローバル規模でやらなければならないこと、
ローカル起点でやらなければならないこと、
たくさんあります。

私たちにできることから、少しずつ取り組んでいきたいですね。

今後、このnoteでも企業や他団体の取り組み内容など紹介していきたいと思います。


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このnoteでは、珊瑚に関する研究の紹介や他団体の取り組み内容など、
珊瑚に関連する情報を発信していきます。

また、Re:Coralの活動に少しでも多くの方が関わっていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。興味のある方は是非ご連絡ください!

連絡先:recoral2020@gmail.com


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参考文献
*1:気象庁・海面水温の長期変化傾向(全球平均)
*2:国立環境研究所 地球環境研究センター「サンゴの白化は温暖化のせい?」
*3:ネイチャー誌掲載論文「グレートバリアリーフでの白化現象と海面水温の関係」(2017/3/16)
*4:日本サンゴ礁学会誌 第19巻 41-49(2017)
*5:米国科学アカデミー紀要掲載論文 "The 27-year decline of coral cover on the Great Barrier Reef and its causes"(2012年10月)
*6:World Resources Institute(世界資源研究所)・"Reefs at Risk Revisited"(2011)
*7:環境省・サンゴ礁生態系保全行動計画
*8:環境省・サンゴ大規模白化緊急対策会議


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