見出し画像

Recycle Mafia #2-5 second plan

人間の欲望は果てしない」
って誰かが言ってたっけ。
 
つまり生きるってことは、探求し続けることなのだ。
「生きる=DIG」
食べることだって、常に旨いものを探している。
寝るにしても、いかにいい眠りができるか、寝具の技術は進歩し続けている。
セックスだってそう。色んな器具や変態。多種多様なプレイがあるのだって人間だけだ。
どんなに、グーたらな人間でも、「いかに楽して暮らせるか」って事を探求しているし。
 
掘って掘って掘って、常に探しているのだ。
だから、行き着く先がいつも幸せとは限らない。
間違った掘り方、間違った場所を掘っていることだってある。
 
ただ、間違った場合は周りの人(友達や親、兄さん、姉さん)が「そっちじゃないよ!」って言ってくれることが重要。
だから、結局周りに居る人なんだよね。自分の人生を左右するのは。
つまり運ってこと。
運が悪ければ、掘って掘って掘って、行き着く先は地獄なんて場合もある。
 
 
月曜日
 
イチはコンビニのバイトが15時まで、DVDショップのバイトが18時から
こ3時間を利用して、学校帰りの真美と会う約束をしていた。
場所は、DVDショップのある葛西。真美の最寄り駅でもあるから都合がいいとのこと。
しかし、一緒に居るところは、「奴ら」に見られたくなかった。
真美には会った時に話すつもりだけど、イチと真美と明の接点はあくまでバイトだけ。ということにしておきたかった。
「奴ら」にイチ達がやることを少しでも悟られたくなかったし、動きやすくする為も勿論あるが、何より真美たちの家族が安全に、元の平和な生活に戻れる為なのだからだ。
後々イチに依頼したことがばれて、復讐なんてされたら、元も子もないからだ。
 
 
 
会う場所は考えたが一番安全なのはラブホテル
しかし、今の真美の心情を考えると、まずいと思ったので聞いてみたところ
「大丈夫。イチさんを信用してるからね(笑)」
との返信が帰ってきたのでひと安心した。
ただ、オーナー夫婦に見られたら・・・クビだろうな。
色々な心配をよそに、待ち合わせ場所に現れた真美はニコニコしながら、ぴょンぴょンはねるようなステップで駆け寄ってきた。
イチは少し照れ「よ!久しぶり」と片手を上げるのが精一杯だった。
特に話すこともなく、2人は近くのラブホテルに向かった。
道中はどことなく張り詰めた空気が2人の間に流れ、一言も話さないまま、ホテルに歩みを進めた。イチは、改めて緊張していた。
事情が事情とはいえ、制服姿の女子高生と30過ぎのオッサンが昼間から、ラブホテルを目指すのだ・・・
イチは童貞ではないが、このシチュエーションは妙に罪の意識を感じさせていた。
しかしそんなイチを気使ってか、真美はホテルが近づくと、腕を絡ませてきた。
それが、イチはなんとも嬉しかったし、この真美の行動にはある意味、脱帽だった。
ホテルの部屋に入ると、ダブルベットがあって、その脇には小さなテーブルと椅子があった。
イチは、椅子に腰掛け、真美はベッドの端にちょこんと座った。
イチは冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し、真美に渡すと、自分も同じお茶を取り出し、一息に煽った。
そして、「真美今日はありがとうな」
 
「辛かったな・・・でももう大丈夫だよ」
 
と言うと、真美はじっとイチを見つめ、近寄ってきた。
すると、イチは少したじろいだが、真美の目を見つめ返した。
真美は、さっきまでの笑顔を忘れたかのように、表情が硬くなり、大粒の涙が頬を伝った。
その一粒の涙を皮切りに、ワーっと泣き出した。
それはまるで、真夏の夕立のようであった。
その泣き顔に未だ残る幼さを感じ、イチは改めて「この娘を守りたい」と思ったのだ。
真美はイチの胸にぎゅっと顔を押し付け、ワーッと泣いた。
イチは自然に真美を抱きしめていた。そして頭を撫で
「真美・・・もう大丈夫だぞ。大丈夫」
と言った。
 
「私・・・汚れちゃった・・・桜井さんには知られたくなかった・・・・」
 
「毎日死にたいと思った・・・・でも・・・でも・・・」
 
真美はここまで言うと顔を上げ、一通り涙を拭うと、まだ少ししゃくりあげながらも、もう泣かないとばかりに、目には何か決意したかのような光が戻った。
「でもね。私はもうどうでもいいと思ったの。みんなが心配」
 
「私がなんとかしようと思ったけど、結局ダメだった。手に負えない・・・それに今でも監禁されている娘がいるの。だから、私だけの問題じゃないと思ったの。だから、もうなりふりかまってる場合じゃない、イチさんに頼るしかないと思った。本当に迷惑かけてすみません・・・助けてください。お願いします。」
 
どうやら、昨日明と真美は2人で話し合った結果、イチに2人で包み隠さずすべてを打ち明け、助けを求めるしかない。という結論に達したのだった。
イチは勿論そのつもりだったし、仲間のバックアプもあるから、迷いなど一切なかった。
ただ、1つの心配事を真美にぶつけてみた。
 
「真美。俺は勿論この件は初めから、何とかするつもりだったから、全力で解決するよ。約束する」
 
「・・・ただ、1つ聞きたい」
 
「どんなことでも、レイプされたことでも、なんでも、事細かく思い出して、俺に話してくれる勇気はあるか?」
 
すると真美は、目に強い光を宿しながら頷き
 
「ハイ。大丈夫。現に今監禁されてる娘をなんとしてでも助けてあげたいの。自分にはもうおきてしまったことだし、時間は戻らない。くよくよしてる時間なんてないの。何でも話します。」
 
この強さはどこからくるのだろうか。いざとなった時は女性の方が強いとは良く言ったものだ。
 
「解った。俺は今週中に何とかその娘を助け出す。そして、奴らにはもう二度と真美たち兄弟、親には近づかせない。約束するよ」
 
「あと、奴らには何かしらの大きなペナルティーを与えるつもりだ。オトナとしてね」
 
真美は不安そうな表情で言った
「ペナルティーって?」
 
イチは、感情を無くした声で真美に言い聞かせるように言った
「いいか真美。俺に任せてくれ。詳しい内容は教えられないし、知らない方がいい。これが俺なりのルールだ。解ったか?」
 
真美は素直に頷いた。
 
「じゃあ、これから細かく聞くね。嫌なことも沢山聞くけど教えてくれ。」
 
真美はまた素直に頷いた。
ココからは、お互い感情なんてどこかに置き忘れたかのように、極めて事務的な言葉使いで、会話した。
そうでもしないと、真美もイチも事実を見逃してしまう気がしたからだ。
こうして、洗いざらい真美からイチへと「情報」が渡された。
時間はあと30分。
イチは腕組みして少し考えると、真美に
 
「ありがとう。ココからは俺に任せてくれ。約束は必ず守るよ」
イチは万が一でも、作戦を失敗させることが出来ないと改めて感じた。
そしてこう告いだ
 
「真美。あと一週間後には、元の生活に戻るんだ。いいね。心の傷は消えないけど、それでも強くいきるんだよ。真美なら出来るから。いいね」
 
真美は少し泣きながら頷いた。
もう、イチとも会えなくなるかもしれない。でも引き返すことは出来ない。そういう決意が篭もった表情だった。
近づいてイチはそっと涙を拭ってあげた。
すると突然、真美の唇が近づいてきて、自分の唇と重なった・・・そっと。
突然の展開にイチは驚いたが、真美はそっと目を開けて
「好きです」
と、だけ言って、さっさと帰り支度を始めた。
2人は、同時にホテルを出たが、それぞれ逆方向に歩いていった。
この日は夕日が綺麗だった。いろんな意味でこの日の景色は忘れないだろう。
 
 
でも、感傷に浸っている時間はない
イチは情報の詰まった頭をどこかで整理する必要があった。
情報を整理する為には、何が一番早いか。
人に話すことだ。
今は、共有出る仲間がいる。
 
DVDショップの仕事が22時まで、仕事終わりにすぐみんなと会えるように、召集のメールを一斉送信した。
今日話したこと、聞いたことを全部仲間に話すつもりだった。
キスのことは勿論内緒だけど。

#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?